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【洋楽】 Passion and Warfare - Steve Vai

今回のアルバムはメタル的なプログレッシブ・ロックということで、実は普段ほとんど聴かない、本来的にはわたしの守備範囲外の類の音楽なんですが、演奏してるギタリスト、スティーヴ・ヴァイはギタリストの有り様としては気に入ってる部分があり、守備範囲外のジャンルではあるものの好きな曲が入ってるアルバムでもあるので取り上げてみることにしました。

スティーヴ・ヴァイは以前に記事にしたエリック・ジョンソン同様に、超絶技巧で名を馳せるギタリストの一人です。
ただしギターを持ってギターを弾いて音を出してるからギタリストに違いはないのだけれど、そこから音を導き出したり、音を組み立てていく発想の中には自分が抱えて演奏してるギターそのものにそれほど依ってないようなところがあって、そういう部分がユニークであり、そのユニークさの点で他の超絶技巧派のギタリストとは異質で独自の立ち位置を確保してるミュージシャンだろうと思います。
エリック・ジョンソンつながりで云うなら、エリック・ジョンソンと同様、ジョー・サトリアーニの主催する超絶技巧ギタリストの集い「G3」に参加してることでも知られています。

1960年6月6日、6が並んだ日のニューヨーク生まれ。スティーヴ・ヴァイが楽器に触れた最初はギターではなくてオルガンだったそうです。そしてそこからアコーデオンを経て、ギターに辿り着きます。
アコーデオンからギターへってどうにも脈絡のない転進に見えるんですが、おそらくその時のロックの隆盛、年齢から言うとハードロック周辺の音楽に感化された結果だったんでしょう。Led Zeppelin?構築的なギター・サウンドっていうことから、ジミー・ペイジ辺りに相当影響されてるような気もします。

学校はバークリー音楽大学に行ってるんですよね。きちんと音楽の基礎教育を受けてる。
そのせいなのか、ヴァイの出発地点はバークリーに在学中に異能のギタリスト、フランク・ザッパに雇われたことなんですが、その時の雇われた仕事というのが、ギタリストじゃなくて、ザッパのギターを楽譜に起こすこと、採譜係だったそうです。採譜が出来るというのは、かなり耳と音感が良かったっていうことでもあります。

1980年の卒業後、この採譜の縁で今度はギタリストとしてザッパのバンドに参加、そこで4年ほど在籍した後、1984年にソロデビューのアルバム「Flex-Able」を出すことになります。
その後、同じく超絶技巧派のギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンがバンド、アルカトラスから脱退した穴埋めに抜擢され、軽々とその代役をこなして、驚異的なテクニックのギタリストとしての知名度を上げていきまず。
さらに1989年には元ディープ・パープルのデイヴィッド・カヴァーデイルのバンド、ホワイトスネイクにギタリストとして参入します。

ホワイトスネイクのワールドツアーに参加するのと同時進行でこのアルバム「Passion and Warfare」のプロモーションも開始して、ホワイトスネイクに関してはワールドツアーが終わると同時に脱退してしまうんですが、翌年発売になったこのアルバムはワールドツアーでのプロモーションが成功したのか大ヒットを記録することになりました。

☆ ☆ ☆

スティーヴ・ヴァイの演奏スタイルは一言で云うなら、自由奔放、これに尽きるんじゃないでしょうか。
やること、やろうとしてることにほとんどリミッターがかかってないような感じ。ギターって云う楽器のテクニックを極めていって、その果てにギターという楽器の完璧な演奏形態を模索するというような求道的な方法だけじゃなくて、スティーヴ・ヴァイはギターという楽器がそのなかにどういう音を潜在的に秘めてるのか、それを導き出し明るい場所に引き出すためには、従来的なギターからギター的な音を弾き出してくるテクニックなんか無視しても構わないとでも云ってるようなアプローチの方法も取ってきます。
その結果としてアルバムの中には非常に多彩な音が詰め込まれることになります。このアルバム「Passion and Warfare」も例に漏れず、音色的に極めて多彩なギターサウンドが聴ける仕上がりになっています。当時のギターフリークはこれを聴いて吃驚したんじゃないかと思います。どうしたらこんな音が出せるんだろうって。

変化自在のギターサウンドを奔流のように繰り出してくるスタイルなんですが、その一方で音の形としては全体としてワウワウ系統のエフェクターを好んでるような感じがします。
これとトレモロ・アームを駆使して音から音へ糸を引いていくように繋がってる粘り気のある旋律空間を作り上げていくというか。この粘り感は極めて多彩なヴァイのギターの音に通低してる基本的な特徴かもしれません。

もう一つ、この人見かけは細面で神経質そうな印象なんですが、だからといって演奏は気難しい雰囲気のものかといえば、実は正反対でかなり遊び心のあるパフォーマンスに走ってる部分があります。
わたしはエリック・ジョンソンの時に、ギターの早弾きとか超絶技巧って音楽の演奏を見てるって云うよりも、曲芸に近いものを見てる感覚の方が強いって書きました。
そういう意味でいくと、スティーヴ・ヴァイは超絶技巧の演奏が見世物的であるのを充分に理解してます。演奏を見ればそれは直ぐに分かります。見世物的な要素を逆によく目立つようにパフォーマンスとして演奏に組み込んだりしてる。
だからこの人のライブはコケ脅かし的で、ユーモラスで面白いです。ライブを見てしまうとCDの視聴体験が結構大きな欠落感を伴って、物足りなさとして耳に入ってくるくらい、パフォーマンス性に長けた演奏で楽しませてくれます。

☆ ☆ ☆

曲目はこういうの。

1. Liberty
2. Erotic Nightmares
3. The Animal
4. Answers
5. The Riddle
6. Ballerina 12/24
7. For the Love of God
8. Audience Is Listening
9. I Would Love To
10. Blue Powder
11. Greasy Kid's Stuff
12. Alien Water Kiss
13. Sisters
14. Love Secrets

邦題はそのままカタカナ表記にしたものがあてられています。

1990年リリースの、スティーブ・ヴァイにとっては2枚目のソロ・アルバムです。
ギター中心のインストゥルメンタル・アルバムで、人の声としては台詞のような断片的な言葉が曲間などに混じり合っている部分がある以外では、歌もののような形としてはアルバムの中には入ってきてません。
ギター・インストゥルメンタル・アルバムって単調になってしまってほとんど成功しないんですが、これは先にも書いたようにヒットして大成功、いまではギター・インストゥルメンタル・アルバムの代表のような形になってます。
アルバム全体の音の印象はメタル系のプログレッシブ・ロック。さらに一曲一曲が何らかの形で結びついて全体で意味を成してるようないわゆるコンセプト・アルバムの形をとってます。この人のギターは必ずしもメタル系のギターそのものと云えるようなものでもないんですが、時代的な影響があるのか、これはメタル的な音楽性を下敷きにした部分が多い仕上げ方になってるような気がします。
コンセプト・アルバム的な部分から見るとプログレッシブ・ロックによく有りそうな意味を持たせすぎた大仰さというか、そういうものが全体を覆っていて、当時はどうだったのかは知りませんが、今聴くとこういうコンセプト・アルバム仕様といったものにちょっと古臭い感じを憶えます。

わたしのお気に入りは7曲目の「For the Love of God」、5曲目の「The Riddle」、3曲目の「Animal」辺り。

スティーヴ・ヴァイはアルバムの7曲目に必ずバラード、ラブソングを収録していて、各アルバムの7曲目だけ抜き出して一枚のアルバムに纏めた「The 7th Song Enchanting Guitar Melodies - Archive」というコンピレーション・アルバムもリリースされてます。
どうも「7」という数字に特別の思い入れがあるらしく、ラッキーセブンなんていう単純なものでもないんでしょうけど、テクニカルな側面よりも情緒的なものを特化させた曲を並べる指定席に相応しい数字としてるようです。

「For the Love of God」の曲調は、西洋人が感じる中央アジア辺りをイメージした異郷風の旋律という感じなんでしょうか。
結構映像的な音楽で雄大な光景が目の前に広がっていくような感じの曲です。そういう雄大な世界を渡っていくヴァイのうねり感のあるギターの音が、極めて官能的。
今書いてみて改めて思ったんですけど、この曲のキーワードは「官能的」、これ以外に無いでしょうね。

「The Riddle」はミディアム・テンポの、曰く云いがたい曲調の音楽なんですが、一体何処に着地しようとしてるのかさっぱり分からない、ぐねぐねとのたうちまわるようなギターの旋律が面白いです。

「The Animal」これもミディアム・テンポくらいのあまり早くないリズム。ハードロック的な展開で進みます。スロー気味のテンポなのに途中から始まるギターのソロが結構奔放に弾きまくっていて、対比が楽しい曲。

反対にもうひとつだったのが、8曲目の「Audience Is Listening」のような曲。これ前半は曲じゃなくてスティーヴ少年がギターを持って学校に通ってた頃の日常風景です。先生との会話があってそれに答えるスティーヴ少年の返事が全部ギターの音で表現されてます。いわばトーキング・ギターといったものです。ちなみにこれのPVはそのまま映画の一コマみたいに学校の先生と会話してるシーンだったりするので、逆に云うとアルバムに収められてるのはPVのサントラ風に考えることも可能です。
曲の演奏中にヴァイが弾いてるギターは饒舌でうねうねとしたフレーズが多いので、実はそのままトーキング・ギター的といっても良いんですが、だからといって人の会話の片方をギターの音で代用するって言うアイディアは、ダサいんじゃないかと思います。

☆ ☆ ☆

これだけ奔放に弾くギターではあっても、その場の感情に身を任せて弾いてるんじゃなくて、実はヴァイはほとんどアドリブはやらないんだそうです。アドリブでこなそうとするとスケールの羅列になったり手癖で弾いたりといったことが多くなるので、演奏の多彩さ、曲の構築度を保障しようとすれば、綿密にスコアで組み上げていく方法がもっとも相応しいと判断してるのかもしれません。
アドリブをやらない、決まった演奏に終始するという点でスティーヴ・ヴァイの音楽を「心がない」と評する人もいるらしいんですが、わたしにはこういう方法で実現する「精緻に組み上げられた奔放さ」のようなものが、スティーヴ・ヴァイの音楽の面白さなんじゃないかと思います。

☆ ☆ ☆

パッション・アンド・ウォーフェアパッション・アンド・ウォーフェア
(2005/02/23)
スティーヴ・ヴァイ

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☆ ☆ ☆

For The Love Of God - Steve Vai


2005年にThe Holland Metropole Orchestraと共演したライブ演奏の「For The Love Of God」です。
このアルバムに入ってる元の「For The Love Of God」にはエレクトリック・シタールというこれまた奇妙なものが混さりはするけど、オーケストラは使わないで完成した曲でした。
このビデオを見て最初は未だにロック畑のクラシック・コンプレックスでもあるのかなと思ったりしました。昔はオーケストラと共演となると、ロックっていかがわしい音楽じゃなくてオーケストラとも共演できるんだと云いたげな、オーケストラを権威付けに使ってる感じがあったので、これもそうかなと思って聴き始めたんですが、ヴァイのギターが入ってきた瞬間から、ギターが完全にオーケストラを従えたような感じになって、オーケストラを使うことの付け足し感はほとんどなくなってしまいました。このアルバムのバージョンに較べても色彩感が豊かな演奏になってるようです。
それで特筆すべきはやっぱりスティーヴ・ヴァイのパフォーマンスで、ケレン味のある動作や見世物的いかがわしさが面白いです。もうギターが入る前に舞台で立ったまま手で小さく拍子を取ってる段階からパフォーマンス臭が濃厚に漂ってきて、演奏中は見得を切るような動作をはさみながらのギタープレイに、極めつけのトレモロ・アーム大回転!
こんなことこの人しかやりません。

The Riddle - Steve Vai


ぐねぐねとのたうつ変態的なフレーズのてんこ盛り。変な曲としか云い様が無いです。

The Animal - Steve Vai


この曲はライヴではアドリブで演奏する数少ない曲のひとつだそうです。ハードに始まるものの、ベースソロの後くらいからはバックのリズムがかなり押さえ気味になってギターのソロを際立たせていく感じになります。知らない間にギターのプレイに注視してるのに気づいたりしますよ。


☆ ☆ ☆


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【洋楽】 Cliffs of Dover - Eric Johnson

ブルース好きの人ならエリック・クラプトンとロバート・ジョンソンを足して2で割ったような名前と思うかもしれないけど、だからと云ってブルースに傾倒したミュージシャンというわけでもありません。
王子様風の風貌だからと、そのアイドルのような外見から軟弱な演奏を連想すると大間違いで、実は超絶技巧派とでもいうのか、そういうカテゴリーに属するようなギタリストの一人です。
これだけの凄腕なのに、わたしの感触では、日本ではあまり知名度が高くないような感じがします。同じく技巧派のギタリスト、ジョー・サトリアーニが主催する、自らと他のギタリスト2人が競演する「G3」ツアーにも参加したことがあって、こういうロック・ギターが好きなリスナーには知られてるようなんですけどね。
「G3」的なものに関心が無い層にはあまり名前が広まっていかない。

☆ ☆ ☆

1954年、テキサス生まれ。74年にプロとしてのキャリアをスタートさせてます。
元はスタジオ・ミュージシャンで、フュージョン系のマイナーバンドにも在籍していたようですが、一般的に良く知られてるような有名バンドには在籍したことはなく、ほとんどスタジオ・ミュージシャンから直接ソロデビューしたような人物です。日本であまり知られてないようにみえるのはそういう有名バンドの看板を一度も背負わなかったからかもしれません。

セッション・ギタリストとしてはミュージシャンの間では名前を知られていたようで、ミュージシャンが評価するミュージシャンという立ち位置にいたようなギタリストだったんですが、それが結果としてデビューに結びついたということらしいです。
アルバム「TONES」で86年にソロデビュー。その後90年に2枚目のアルバム「AH VIA MUSICOM」をリリースし、この中に収録されてた。「Cliffs of Dover」が大ヒットします。
この曲がヒットしたことでエリック・ジョンソンはグラミー賞を獲得することになります。

☆ ☆ ☆

さてそのグラミー賞獲得の曲「Cliffs Of Dover」なんですが、歌は入ってなくて完全なインスト曲。最初から最後までギターから迸り出る音が乱舞し続けるような曲です。
でもこういうギタリストを取り上げておいて云うのもなんですが、わたしは早弾きとか超絶技巧とか、実はあまり興味がないんですよね。そういう演奏を前にすると、音楽を聴いてるというよりも曲芸でも見てるような気分になってくるから。
音楽が楽器という道具を使いこなす技術の披露でもある以上、超絶技巧だって音楽の一部だとは思うんですが、今のところわたしの感覚ではそういうのを聴く要求が自分の中から出てきません。
だから「Cliffs Of Dover」がお気に入りなのも物凄いテクニックよりも、もちろんそのテクニックには目を見張るんですが、そういうものよりも、この曲が旋律感に満ち溢れていることに気を引かれるからという、これが理由になってます。

この手の音楽としてはメロディ、和声の動きはとても綺麗に仕上がっていて、ロックギターが予想させるような様々な要素、たとえば「暴力性」だとか、エリックという名前だから云うんじゃないですが「泣きのギター」だとか、そういう慣用句めいたものとは全く異なった位置に立っているような気がします。
これだけの音を奔流のように弾き出す演奏にも関わらすその音は荒々しいものとは正反対に繊細な印象の方が強く、ウォームで伸びのあるトーンが、縦横無尽に駆け巡るような旋律を艶やかに歌い上げていきます。この音がまたなかなか気持ち良い。
エリック・ジョンソンは音質に関しては信じがたいほど神経質らしく、この頃はエフェクターの電池1個から指定のものでないと駄目だったんだそうです。

☆ ☆ ☆

「Cliffs Of Dover」収録のアルバム「AH VIA MUSICOM」には他にこういう曲が収録されてます。ちなみに邦題は「未来への扉」、ちょっとダサいです。

1. Ah Via Musicom
2. Cliffs of Dover
3. Desert Rose
4. High Landrons
5. Steve's Boogie
6. Trademark
7. Nothing Can Keep Me from You
8. Song for George
9. Righteous
10. Forty Mile Town
11. East Wes

各曲の邦題はこんな風になってます。

1. 未来への扉
2. 遥かなるドーヴァー
3. デザート・ローズ
4. 失われた大地
5. スティーヴに捧ぐブギ
6. トレードマーク
7. 消えぬ想い
8. ソング・フォー・ジョージ
9. ライシアス
10. 40マイルの彼方
11. イースト・ウェス

基本的にギターの音はディストーションで歪ませたような音じゃなく、クリーンな音が基調になっていて、アルバム全体をざっと聴き流してみたら、スムーズなAORといった感じに聴こえてきます。3,4、7、10と、エリック・ジョンソン自身のヴォーカルが入ってる曲は特にそんな傾向が強く出ているようです。

でも一つ一つよく聴いてみれば、ロック、ポップ、ジャズ、カントリーと、いろんな側面を見せる演奏にもなっていて、結構雑食性が高い感じがするアルバムでもあります。
5曲目の「Steve's Boogie」は軽快なカントリー調の曲。
アルバム全体の、空中を乱舞するようなギターの音が満ち溢れてる中に現れる、アコースティックで土臭い響きを持った8曲目の「Song for George」。
この中では一番ロックっぽいかもしれない9曲目の「Righteous」
11曲目の「East Wes」はちょっと毛色が変わって若干ジャージーな感じの響きがする曲。これはタイトルやオクターブ奏法から判断すれば、ジャズ・ギタリスト、ウェス・モンゴメリーへのトリビュートかも。

やっぱり2曲目の「Cliffs of Dover」が突出して出来が良く、これが目当てのアルバムという位置づけは変わらないにしても、「Song for George」なんかはアコースティック・ギターのさばき方も含めてわたしにはちょっと面白く聴けたりしました。

ただギターの音そのものは人を驚かせるような奇矯な癖もなく、壮絶なテクニックを使ってるのに、まるで当たり前みたいにさりげなく弾いてしまうから、パフォーマンス性の欠如というか、これだけ音が乱れ飛んでるのに、アルバム全体では聴く方を強引に引き釣り回すようなところも無くて、地味に聴こえてしまう傾向があるようです。

もう一つ。リズム隊が弱いんですよね、このアルバム。
手堅く、そつなくこなしてる感じがするだけで、体が勝手に動き出してしまいそうになるような躍動感のあるフレーズがほとんど出てこない。音数の多いギターのバッキングに徹してるのかもしれないけど、こういう手堅いだけのリズムだとドライブ感にかけてるような印象があって、そのせいでアルバムの印象はアルバムのなかでやってることと較べると、不釣合いなほど大人しい感じになってしまってるようにわたしには感じられました。

☆ ☆ ☆



☆ ☆ ☆

Cliffs of Dover - Eric Johnson

とにかく音の洪水というか、決まった長さの1小節のなかに、無理やりねじ込んだような圧倒的な音数というか。よくもまぁこれだけ指が動くものだと感心します。わたしには左手の指の動きが若干蜘蛛の足の動きのように見えて、ちょっと気味悪い時があるんですけどね。
見た目はやっぱり王子様風ですね。この演奏は特にそう見える感じです。

Song for George - Eric Johnson

8曲目、アーシーなアコースティックギターの演奏です。



【洋楽】 Song Of The Wind - Santana

サンタナです。わざわざ説明する必要も無いんじゃないかというくらい有名なギタリスト、1999年には「スーパーナチュラル」でグラミー賞を取って勢いが衰えていないことを示したりもしてます。その後も有名ミュージシャンとコラボしたりで、宗教に走ったにしてはいささか生臭い第一線維持活動をしてるといった感じでしょうか。

これはそのサンタナの1972年のアルバム「キャラバンサライ」に収録されていた曲。「風は歌う」という邦題がついてます。
わたしは以前からこの曲が好きで、最近久しぶりに聴いてみたら、ちょっと再燃してしまって、そこで記事を一つ仕上げてみることに。

サンタナと云えば、ラテン・ロックのギタリスト。同じロックのギタリストでも、クラプトンら三大ロック・ギタリストとは一線を画すような存在でした。
一言で云うとサンタナの弾くギターは黒人音楽をルーツにするような泥臭い、地上に足を囚われてる感じがほとんどなく、伸びやかで官能的、こういうギターを弾いたのは当時他にあまりいなかったんじゃないかと思います。

「Song Of The Wind」はまさしくそういう官能的なギターの音で織り上げられたバラードです。
ここでも何回か書いてるかもしれないけどわたしはバラード好き、狂騒的な曲も好きなんだけど旋律感のある曲も結構好きなので、サンタナの他のバラード系の曲、たとえば「哀愁のヨーロッパ」とかも聴きます。でも「ヨーロッパ」はちょっとベタ過ぎる感じがして今一。バラードの中でもこの曲がやはり良い感じです。
ラテン・パーカッションに煽られながらの進行なので、バラードといってもスロー・タイプの曲じゃないんですが、音の有り様はやはりバラードとしか云いようの無いものだと思います。
ラテン・パーカッションとベースが作るうねるような音空間の中をギターの音が艶やかに直線的に伸びていくような演奏、この空高く一直線に突抜けていくような音の艶っぽい質感がとても心地良いです。
これ、ギター弾いてる人なら感覚的にわかると思うんだけど、おそらくギターを弾いてる当人が一番気持ち良くなってるはず。そういう音です。

☆ ☆ ☆

わたしにはサンタナっていうのは他のロック・ギタリストのように黒人音楽をベースにしなかった、かなり珍しいミュージシャンという印象がありました。だから唯一無比だと。
でも調べてみると、ウッドストックで一躍名を広める前に、ブルースのバンドをやってたんですよね。これは結構意外でした。サンタナもブルースの下地の上で音楽をやってると。
もともとメキシコ人として、ラテンの血が入っていたとしても、ロックという土壌でラテンを開花させるのにどういう試行錯誤があったのか何だかちょっと興味が出てきました。

☆ ☆ ☆

収録アルバム「キャラバンサライ Caravanserai」についても少し。

虫の鳴き声の効果音を背景に、ハドリー・カリマンの拘束感の緩そうなサックスが歌いだし、ウッドベースが絡んで始まる1曲目「Eternal Caravan Of Reincarnation 」から全曲途切れること無しに続くコンセプト・アルバム。
デビューから数えて4枚目のアルバムに当り、サンタナのそれまでの3枚のアルバムはラテン・ロックというイメージのものだったんですが、このアルバムはそういうのから若干離れて「ジャズ・ロック」というイメージに近いものとして受け取られました。
サンタナがコルトレーンに凝っていて、結果ジャズ的な要素が混ざり合ったものになったとか。でも、わたしの印象ではジャズ・ロックというよりも、むしろプログレっぽく聴こえるアルバムでした。
このアルバムの後、サンタナは妙な精神世界に引き込まれてしまうんですが、そういうものへ進んでいきそうな感じも少し聴き取れるようなところもあるアルバムです。ひょっとしたらそういう部分がプログレっぽい感覚で聴こえてくるのかもしれません。
実際、このアルバムの制作時にもそういう精神世界への転換が原因だったのか、ニール・ショーンらオリジナルメンバー4人が脱退するという、新旧メンバーが入り乱れての制作となったそうです。

☆ ☆ ☆

アルバム「キャラバンサライ」の曲目はこういうの。

1. Eternal Caravan Of Reincarnation
2. Waves Within
3. Look Up (To See What's Coming Down)
4. Just In Time To See The Sun
5. Song Of The Wind
6. All The Love Of The Universe
7. Future Primitive
8. Stone Flower
9. La Fuente Del Ritmo
10. Every Step Of The Way

それぞれに邦題がついていて、こういう具合になっています。

1.復活した永遠なるキャラバン
2.躍動
3.宇宙への仰視
4.栄光の夜明け
5.風は歌う
6.宇宙への歓喜
7.フューチュア・プリミティヴ(融合)
8.ストーン・フラワー
9.リズムの架け橋
10.果てしなき道

やはり宗教かぶれになる直前の雰囲気、そういう気配が濃厚に漂ってくる曲名が並んでいるってところでしょうか。
全体がインストゥルメンタルな仕上がりになっていて、ボーカルが入ってるのは4、6、8くらい。あとはサンタナと二ール・ショーンのギターが嫌というほど堪能できるようなアルバムです。

☆ ☆ ☆

キャラバンサライキャラバンサライ
(2009/01/21)
サンタナ

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☆ ☆ ☆

Song of the Wind - Santana


Stone Flower - Santana


Soul Sacrifice (Woodstock 1969) - Santana


ウッドストックに登場した時の演奏です。この音を浴びせかけられたら、もうひれ伏すしかないというような大熱演になってます。一般的に知名度が拡がるきっかけになったというのも十分に納得。
この曲「ソウル・サクリファイス」は少し前のフィンチャー監督の映画「ゾディアック」のタイトルシーンで使われてました。








【洋楽】 Felt Mountain - Goldfrapp

ヴォーカル、兼キーボード、コンポーザーのアリソン・ゴールドフラップと、同じくコンポーザーのウィル・ グレゴリーの2人組み。イギリスのエレクトロニカ・ユニットです。
ユニット名はアリソンの名前から取ってるみたいですね。
「Felt Mountain」はこの2人組のファースト・アルバムになります。リリースされたのは2000年。全英でゴールド・ディスクを獲得したそうです。

このアルバムは耽美的というか退廃的というか、朽ち果てていくような感覚に満ちていて、イギリスというよりヨーロッパ産と云った方が似合うような音作りになってます。古いヨーロッパ映画のサントラでも耳にしてるような感じ。

退廃的なサントラと云えば、わたしはデヴィッド・リンチの音楽をよくやってるアンジェロ・バダラメンティなんかを思い浮かべてしまうんだけど、バダラメンティが作るような音楽に比べると、ゴールド・フラップの退廃は随分と輪郭がはっきりしたもののように思えます。
絵に描いたような退廃具合というか、割と分かりやすい。その分ちょっと飽きが早そうなところもあるように感じます。

☆ ☆ ☆

このユニットはアルバムごとに違うタイプの音楽をやる主義のようで、「Felt Mountain」のゴシック調から、セカンドでは早くもエレクトロ・ポップみたいな音楽に変化してます。
「Felt Mountain」からはダウナー系のビートとか80年代風のアナログ・シンセ・サウンドとかは継承されてる部分もあるけど、重要な要素だったオーケストラを使ってるような部分の比重が結構少なくなって、印象がかなり変わってしまうことになります。

☆ ☆ ☆

ジャケットは第一印象は目を引くところがあるものの、何回も見てるとそれほどよく出来てるっていう感じはしなくなってきますね。だって鏡面対称にしてるだけだし。
美人で魅せてるけどデザインとしてはそれほど特徴があるわけでもないです。

Felt MountainFelt Mountain
(2000/09/19)
Goldfrapp

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Lovely Head - Goldfrapp


Utopia - Goldfrapp



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【洋楽】 Revolver - The Beatles

「FSOL」の記事でこのアルバムのことをちょっと出したので、これについても少し書いておきます。ちなみに、わたしはビートルズ好きです。

わたしのビートルズ・マップみたいなものを記してみると、初期の2枚のアルバムは両方とも傑作、そのあとの「ア・ハード・デイズ・ナイト」と「ヘルプ」の2枚は傑作の駄目押しみたいな扱いです。初期の2枚でとにかく曲の独創性、質の高さなど、その存在を強烈に印象付けた上に、その後で捨て曲無しのアルバムをさらにリリースできるパワーは文句なしに凄い。
「ア・ハード・デイズ・ナイト」と「ヘルプ」の間でクリスマス商戦にあわせるためにリリースされた「ビートルズ・フォー・セール」はこの2枚からはちょっと落ちる感じがするけど、コンサート活動などで疲れ果ててる時に仕上げたにしては、シンプルでもそれなりのレベルはきちんと維持してる印象があります。
落ちる感じなんて書いたけど収録曲の「No Reply」とか大好き。

「ラバー・ソウル」が個人的には駄目なほうのアルバムに入るかもしれません。今ではほとんど聴かなくなってます。このアルバムは迷いに迷ってる感じがする。
初期のビートルズ・タイプで続けていくにはいろいろ限界を感じてきて、でもだからと云って次のステップをどうするかも見えてこないという状態が音を聴いてるだけでも伝わってきそうな感じのアルバムです。「ミシェル」なんか「ヘルプ」収録の「イエスタデイ」の二番煎じ狙いだし、「ガール」で入ってくる、吸い込む息の装飾音もはっきり云って意味不明。あんな音入れなかったほうがずっと良かった。

初期のビートルズには明らかに音楽の神様が降りてきてたと思うんだけど、この辺りで初期タイプを導いてきた神様はどこかにお出掛けしてしまったような感じがします。
そしてこのアルバム、「リボルバー」。
「リボルバー」は音楽の神様が留守にしてしまった「音楽の荒野」を前にして、4人がそういう荒野を見据えながら、神様の手助け無しに自らの力を信じて作り上げたアルバムのような印象があります。
何よりも凄いのは、迷いに迷った「ラバー・ソウル」なんてもうどこにも引きずってない形で、なにかふっ切れたみたいに初期絶頂期とも全く違う音楽を組み上げてきたこと。
さらに「リボルバー」はサイケデリックという形で、時代をねじ伏せるような力まで備えてました。

☆ ☆ ☆

おそらくジャケットのイメージだとか封入されてる写真からのことだとは思うけど、わたしが「リボルバー」から受ける印象は色で云うなら「黒」なんですよね。続く「サージェント・ペパー」が極彩色ならこちらは反対にモノクロームのうちの「黒」。
でも何かを含み持つようなどろどろした黒じゃなくて、均一の綺麗な黒でその上に少し色味が入った白っぽいカラーで勢いのある絵を描いていってる様な印象があります。音のイメージはジャケットを白黒反転したような感じ。
ストイックな「タックスマン」も、がちゃがちゃ賑やかな「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」とか「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」も両方とも気に入ってるかな。バラードの「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」は「ミシェル」にあった二番煎じ感なんか全然無くなって「イエスタデイ」と並ぶくらいの独自の曲になっていて、これも好き。

☆ ☆ ☆

クラウス・フォアマンの手によるジャケットはビートルズのアルバムの中でも突出して出来が良いと思ってます。

リボルバーリボルバー
(1998/03/11)
ザ・ビートルズ

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Taxman - The Beatles

ポールのベースがかっこいい。ベースでほとんどメロディといっても云いくらいの旋律を弾いたのはポールが初めてだったのかどうかは知らないけど、ポールのベースはそういう弾き方が特徴でした。ポールのベースはうねるようなドライブ感があるんですよね。

Tomorrow Never Knows - The Beatles

催眠的なドラムがかっこいい。サイケデリックの幕開けの曲。

No Reply - The Beatles

「リボルバー」に入ってるわけじゃないんだけど、わたしの好きな曲。


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