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のけものたちの砦に砂時計の季節がやってくる。砂の音は砦の長い回廊に降り積もり、その音に抗うようにどこかから大声が聞こえてくる。19MMUS!

死んだ雀の羽


先日歯科に行った時、7,8年ぶりくらいに、温度で色が変わるリングをつけて行った。エスニックの雑貨屋で籠に盛って売られていた安物の指輪で、その直前にアクセサリー入れをひっくり返してしまって持っているのを思い出したものだ。
ところがつけて出かけたのはいいが、治療が終わって診察室を出てみるとどこかで落としてしまっているのに気づいた。家を出てから電車と送迎バスを乗り継いでやってきてるからどの辺りで落としたかなんてわかるわけない。これは諦めるしかない。まぁ安いものだからまた欲しくなったら雑貨屋に買いに行けばいいかと、でもカートなんて持ってはいれるような広い店でもなかったなと色々考えて帰路に就いた。ところが別に探すつもりでもなかったけど、帰りの送迎バスを降りて、駅に向かう路上で道に落ちてるリングを見つけた。歩きにくくてうつむき加減に歩いていて自然と目についた。リングは落とした時に路上を転がるでもなく、目の前にこれ見よがしに落ちていて、拾ってみるとまさしく色の変わるリングだ。こんなヒッピーリングをつけてる人が自分以外に都合よく落としてるとも考えられず、自分のものに間違いなさそうだった。熱い路上に長時間接していたせいか、あるいは踏まれたせいか色の出方がちょっと汚くなっていたけど、ともあれ絶対見つからないと思っていたものが再び自分の指に戻ってきてラッキーと舞い上がった。
舞い上がった気分で駅に着くと目の前に乗るべき電車がやってきていて、改札を通った足でそのまま電車に乗ろうと思ったら、乗り口で派手に転倒してしまった。ホームと電車の段差に脚を取られたようで、完全に車両の床に伸びてしまい、持っていた荷物は周りに飛び散らかしてる。近くにいたおじさんと女の人が起きるのに手を貸してくれて、周りに散らばった荷物をかき集めたあと座席に座ったんだけど、やってしまったとドキドキしたのがなかなか収まらなかった。
ドキドキしたまま怪我でもしてないか確認してみた。転倒した勢いでなんとリュックが肩越しに背中から胸元に移動して、これがどうやらクッションにでもなったのかどこも痛くなったところはない。顔を打って今治療してきた歯を台無しにすると云った最悪の事態にも見舞われてない。派手に転倒したわりに、電車内の視線を集めた以外は何の影響もなかったのはラッキーだった。
この日はこのように二度の幸運を体験した。でもその前にリングを落とすというのと転倒するという二つの不運を体験している。

まさしく禍福は糾える縄の如しの日だった。結局何も起こらないことが最も幸運だったわけだけど、この考えは若干違和感を覚えて居心地が悪い。本当に何も起こらないことが至上の幸運なのか。
たとえば普段の道を普段通りに歩いていて、目の前を歩いていた人に横合いから車が突っ込んできたとする。一寸のタイミングの
違いで自分が遭遇したかもしれないと思うと、これはラッキーなんだけど、自分の行動にはまるで変化はなくても、外的要因でその吉凶がどこかで決まってしまってる。せめて自らの行為が幸運に結びつくようにならないものか。

映画「Fall」を見る。これは高所恐怖症だとまず画面をまともに見てられないだろうな。地上600メートルの鉄塔の上に上ったはいいが梯子が崩落して、頂上の小さな足場から降りられなくなる話だ。一つのシチュエーションに限定して、、絞り込んだテーマに先鋭化するその割り切り方が潔い。舞台は地上600メートル上の、人が三人も立てばめいっぱいの狭い足場で、登場人物はクライマーの女性二人と、絵にかいたような低予算映画だけど、そのそぎ落とした状況がむしろシェイプアップした勢いを生み出しているようだ。それにしても高所の恐怖一点に絞り込んで、このえげつないほど制約を課された状況のもとに100分近くある映画を成立させたシナリオの力技も結構すごい。結局こんなとんでもない場所に立たされて自力で降りられない以上結局やれることはシンプルにただ一つ、地上の誰かにここにいることを知らせること、このただ一つの可能性を巡って考えられる限りの試行錯誤が、立ってることだけで眼がくらみそうな場所で繰り広げられる。高所を舞台にする発想と足がすくむような効果的な演出、そしてこのパワーのある脚本を加えで、際立って勢いのある映画になってる。
物語の最後近くにツイストが一つ用意されてる。中盤過ぎたあたりで、一瞬あれ今のどうして?と違和感を感じる箇所があって、これがこのツイストの伏線になってる。他にもなぜあの時水を飲まなかったのかというのも伏線だなぁ。小さな齟齬が頭の隅に引っかかって、これがツイストの正体で解消されるのはやっぱりちょっとした快感だった。







ジョージ・A・ロメロの有名な映画の、トム・サビーニによるリメイク版。
ダウンロードして、字幕サイトで拾ってきた日本語字幕と一緒に動画ソフトへ放り込めば字幕付きで見られる。
https://subscene.com/subtitles/night-of-the-living-dead-1990
YOUTUBEに上がってた映画なんて適当だろうと思ってたら、この字幕とタイミングがあってた。






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【洋画】 ファーゴ

映画自体は淡々と進んで、観ている意識のある部分は退屈だと信号を送り込んでくるのに、結局最後まで緊張感を持って観てしまうという不思議な映画でした。

☆ ☆ ☆

自動車ディーラーのジェリー・ランガード(ウィリアム・H・メイシー)は多額の借金を何とかしようと、妻ジーン(クリスティン・ルドリュード)の偽装誘拐を思いつく。そこで自動車業界の大物であり金持ちでもある妻の父親ウェイド(ハーヴ・プレスネル)から身代金を取って、借金を返す計画を立てた。
自社の整備工場の工員から、カール(スティーヴ・ブシェミ)とグリムスラッド(ピーター・ストーメア)の2人を紹介されて、偽装誘拐を依頼する。
カールとグリムスラッドは白昼、誘拐を実行し成功するが、移動途中の雪道でパトロールの警官に止められ、上手くやり過ごすつもりが言い逃れ出来なくなって、その場で警官を射殺、運悪くその現場を通りかかった車に乗っていて、警官を始末しようとしてるところを目撃した人間も合わせて3人殺してしまった。
簡単な偽装誘拐が殺人事件に変貌してしまい、警察が動き始める。捜査に当るのは妊娠中の女性警官マージ・ガンダーソン(フランシス・マクドーマンド)。マージは手がかりを丹念に追って、次第にジェリーへと迫っていく。
カールとグリムスラッドは痕跡を残しながらも逃亡を続けるが、隠れ家で誘拐したジーンを殴り殺し、偽装だと分かってるジェリーの制止を振り切って勝手に金の受け渡しに来た義父ウェイドをその場で射殺。グリムスラッドは金を受け取ってきたカールに分配のことで罵られ、仲間のカールさえも殺してしまう。

☆ ☆ ☆

特徴は雪で覆われたひたすら白いトーンの画面と、やはり脚本の上手さというところでしょうか。

ただの偽装誘拐のままだったら誰も傷つかないはずだったのに、警官と目撃者を殺してしまったことで事態は大きく変動するわけですが、この映画の中で大きな出来事が起こるのって、終盤の破局以外ではほとんどこの部分だけなんですよね。
しかもこの出来事が起こってしまう直接的な原因はカールが逃走用の車にナンバー・プレートを付け忘れていたという実に些細なこと。そのせいでパトロール中の警官に呼び止められる。
この些細なことが始まりで最終的には壊滅的な破局へと導いていくわけです。

この映画は大掛かりなイベントが物語を動かしていくというような形をとってません。偽装誘拐が殺人事件に変化してからでも、それは同じ。
警官の会話さえもどこかのんびりしてるくらい、日常的な会話や日常的な行動の範囲内で物語は進んでいきます。そういう劇的でも無いシーンが展開されていくうちに、細かい齟齬のようなものが積み重なって、首謀者ジェリーが確実に追い詰められていく様子が、誰の目から見てもはっきりと分かるように仕上げられてる。
事態が激変するほどの大きな出来事を用意して、追い詰められていく過程を描写するのはある意味簡単で、逆に日常的にことが進む中でのちょっとした行き違いや行動の不自然さで、事件が動いていく様を明確に描き出すのは遥かに困難なやり方だと思います。
「ファーゴ」はその困難なやり方をかなり上手い手捌きで披露してくれます。

映画の冒頭でこれは実話だという一文が入ります。
取るべき理想の破滅に向かって、きれいな形を描いて進んでいく映画を観ていて、実際にもこんなに均整が取れたように進行した犯罪があったんだと感心してたら、後になってコーエン兄弟はこれが実話だと云ったのはでたらめと白状してたみたいです。
あまりに手捌き良く、きれいな形で進行し、この物語が取る結末としては、これ以外に無いような滅亡の形で終わる話になってしまったので、少し現実感を加えたかったんでしょうか。

全編何かといえば雪景色という画面は、かなり印象に残りました。撮影したのはロジャー・ディーキンズ。
白一色みたいな光景ばかりなのに、それぞれのシーンのニュアンスを込めたような形で、上手く活写してます。雪に映える他の色もきれいに捉えてるし、雪の白さの様々な様子もきちんと押さえてるようでした。遠近感さえなくなってしまうような光景ばかりで、撮るのに苦労したでしょうね。

☆ ☆ ☆

俳優はなんと云ってもスティーヴ・ブシェミ。最初の会合で、遅れてきたジェリーに対して品定めするみたいに眺めながら、声高でも無い口調で問い詰める態度からして、もう存在感満点です。なにをやるにしても目一杯の破格具合で、あの最後だってブシェミにしか似合わないと思います。
カールを目撃した人全員から、特徴として「変な顔」と云われてたのは、ちょっと笑いました。

ピーター・ストーメアのほとんど喋らない、隠れ家でテレビばかり見てるキャラクターも上手くはまってました。映画全体にそれぞれの言葉が上手く伝わらない感じがあったので、そういうコミュニケーション不在を示す映画としては、その意図を体現してるキャラクターじゃなかったかと思います。

そもそもの発案者役のウィリアム・H・メイシーは、この人観るたびに猿顔だなと思ってしまって、わたしとしてはちょっと苦手な俳優です。
それに大人の顔なのにやたらとでかい目が子供に近いようなバランスで付いてたりするのが、何かの人形みたいに見える時も。
偽装誘拐を企てるほど知能的かといえば、事件が拡大するにつれその場しのぎの対応ばかり繰り返し、次第に狭まってくる包囲網に有効に対処するほどの知恵もなく、そのまま逃走してしまうような人物を演じるには、割と相応しいという感じはしてました。上手いキャスティングだったかも。

フランシス・マクドーマンドは、これでアカデミー主演女優賞を取ったらしいんだけど、わたしには正直そこまでのものには見えなかったです。
妊娠中の警官で、割と暢気に会話したりするので、物語全体に緊張感がつき過ぎないようにする役割もあったような感じ。でも、あまり気づかないかもしれませんが、結構タフな描写もしてました。

マージの旦那役で出てたジョン・キャロル・リンチも異様な俳優ですね。最近だと「ゾディアック」に出てたのを見たかな。

ファーゴ (ベストヒット・セレクション)ファーゴ (ベストヒット・セレクション)
(2007/11/21)
フランシス・マクドーマンド

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Fargo Trailer


原題 Fargo
監督 ジョエル・コーエン
公開 1996年


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【洋画】 フォーガットン

フォーガットンフォーガットン
(2008/09/24)
ゲイリー・シニーズドミニク・ウェスト

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必見ポイントは2つです。
自動車の衝突シーンと人が○○○○されるシーン。
衝突シーンは、これは本気でかなり吃驚します。まず確実に心臓が飛び出すような思いが味わえる。物凄くシンプルなんだけど、衝突をこういう状態で見せたのって意外と他には無いんじゃないかな。
人が○○○○されるシーンは…思わず笑ってしまうかも。本当はシリアスなシーンのはずが、この逆バンジーは何だか妙に楽しそうにも見えるんだもんなぁ。
ストーリーなんか直ぐに忘れても、この2つのシーンは結構頭の中にこびりつきそうな気がします。

そう云えば、記憶に残るのはもう一つあった。ジュリアン・ムーアの腕一面に散ってる雀斑。強烈。

事故で死んだ自分の息子の存在そのものが、事故があったという事実と共に自分の周囲から消えていくというストーリーは謎めいていて、どういう風に展開していくのか凄く期待が膨らむんだけど、前半が謎めいていただけで後半は腰砕けもいいところ。大体こんな超常現象みたいな出来事を扱って、着地できる形って物凄く限られてしまう。
妄想か、国家的な陰謀か、地▲外▲▲か。解決のパターンって、この3つくらい?
結局は安易な▲▲▲生▲ネタにしてるわけなんですが、それが分かってくる頃には馬鹿げた映画になりきってしまっていて、謎も何もあったものじゃなくなってる。むしろ妄想ネタで組み上げたほうが前半の謎めいた雰囲気は持続できたんじゃないかと思う。
発端の謎は魅力的だったので、ある意味もったいない映画になっていたと云えなくもないです。

ゲイリー・シニーズとか、役者の無駄使いがなかなか豪快でした。

☆ ☆ ☆

原題 THE FORGOTTEN
監督 ジョセフ・ルーベン
公開 2004年

The forgotten movie trailer