2017/05/13
浸潤 Shadows Within and Without




2017 / 04 (1)(2) (4)
2017 / 05 (3)
新祝園 / 近所 / 高の原
Canon Autoboy FXL / Olympus μ2
Fuji Presto400 / Kodak TriX を自家現像。
ー 口の中にも握った拳の中にも影ができるだろうが。
昨日「スウィートホーム」を見ていたら、伊丹十三演じる謎の老人山村の台詞にこんなのがあった。悪霊と化した屋敷の住人間宮夫人の潜む闇へ入りこもうとして山城新吾演じるTVディレクターが撮影用の照明を持ち込もうとする場面で、その行為を咎めた時の台詞。なんかね、どんなものでもその内に闇を内包しているという風に読み取ってみると、ちょっとかっこよくて印象に残った。
真っ二つに切断されて上半身だけで床を這い回る古舘伊知郎とか、ローファイのSFXがちゃちなんだけど趣向を凝らしてなかなか楽しい。CGI全盛になってからこういう楽しさは本当に映画から霧散してしまった。
映画は監督をした黒沢清と製作総指揮だった伊丹十三との間で生じた訴訟騒ぎのせいで未だに封印されたままで、そのトラブルがこの映画にかえってカルト的な価値をつけてるところがある。そういう封印された映画なんていう余計な要因に釣られて期待を膨らまして見ると肩透かしを食らうかもしれないけど、でもふつうにホラー映画としては結構しっかりと、つぼを押えた作りの映画になってると思う。
山村老人の辺鄙なガソリンスタンドの雰囲気といったところまでも、おそらく製作陣がこれまでに影響を受けたアメリカのB級ホラー映画の雰囲気を持ち込んで、そういう洋画ホラーの洋館物のタッチのなかに和風のじめじめした気味悪さを混ぜ込もうとしてる意図はきちんと伝わってくるような仕上がりになってる。訴訟の影響を未だに引きずって、封印されたままにしておくなんてちょっともったいない映画だと思う。
ちなみにゲーム版の「スウィートホーム」というものもあって、このゲームを世に送り出した製作チームはこれの発展系としてのちに「バイオハザード」を作ることになる。そういえば、ジル・バレンタインのコスチュームはどことなく「スウィートホーム」での古舘伊知郎の珍奇なコスチュームを連想させる。ゲームの「バイオハザード」はやがてハリウッド映画としてシリーズになるほどヒットして里帰りすることになるわけだけど、あらゆるものが因果の巡る網の目の中にあるって云う感じがするなぁ。
もうひとつ、この映画の製作総指揮をした伊丹十三とわたしは誕生日が一緒。伊丹十三の映画はわたしには一回見たらそれでいいと、見ている間は楽しめるものの正直そんなに後を引かない映画になってるんだけど、こういうところではちょっと親近感がある。
こんな風に書いてみて、写真も何回も見たくなるようなのがいいんだろうなぁなんて思った。
☆ ☆ ☆
汚いガラス越しに見えた駐輪場、天女の色っぽい腰つき、陰鬱な鯉のぼり、異界の茂み。
自らのどこか深いところからから滲み出す闇と、その自らの滲み出す闇に浸されそのなかに沈み込んでいく事物。最初の小汚い窓ガラス越に眺めた駐輪場と最後の写真はそんな感じだろうか。
最初のはガラスの汚れがどう出るか偶然任せで試してみたかった。最後の茂みの写真は最初から対象は異様な感じで目の前にあったし、それが切っ掛けでシャッターを切ったものの、こういう異様さをブーストされたようなイメージに結実したのは半ば偶然の産物だった。
そういう偶然を呼び込むのも才能のうちと思ってるので、そういう才能を振るえるほどにのばしてみたいものだ。偶然とかチャンスを呼び込むって、他の表現分野でも意外と重要な要素になってるんじゃないかと思う。それを足がかりに自分では乗り越えられなかった方向を見出せるかもしれないし、そうやって表現を拡張していった先人たちは一杯いると思う。特にシュルレアリスムの信奉者なら、こういう考え方には馴染みがあるんじゃないかな。
だから失敗や思いもかけなかったものは本当は喜ばなくちゃいけない。成功したものよりもそこから引き出せるものは多いかもしれない。意図通りに出来たものなんかよりもよほど面白い。

使ったカメラはキヤノンの昔のコンパクトカメラだ。これ、上面のスイッチでストロボをオフに固定しておけるのが意外なほど便利。この手の昔のファミリーコンパクトカメラは上手い下手は別にして、とにかく何かが写ることだけは絶対に保障しておかなければならない、予想外に暗かったからといって撮影に失敗してしまうのはどうしても避けるべきだというような設計になってるから、ストロボを使わない設定にしていても電源OFFにするとリセットされて、やたらとピカピカ光るカメラとなるのがほとんどだ。わたしは最近はストロボも躊躇無しに使ってるからこういうのはあまり関係なさそうに見えるけど、どうしてもストロボを使いたくないという時もあって、そういう時にいちいちストロボの設定がリセットされないのは単純なわりに使い勝手はかなり向上する。
このFXLを防水仕様にしたカメラとしてAutoboy D5というのがある。中身は同じなのに見た目はまるで違って、マリンスポーツにいかにも合いそうな、水の中に落としてもすぐに分かるような派手な外観になってる。たまにオークションに出てくるのを見て入札しようとするんだけど、最終的に妙に高い落札額まで上がってしまうので、未だに手に入れていない。コンパクトな防水カメラは電池蓋の爪が折れてビニールテープで止めてるオリンパスのμ2を持ってるだけなので、安くて使い易いコンパクトな防水カメラを画角違いで何台か欲しい。