2016/03/28
砕け散る世界を拾い集めてみれば + Luiz Henrique - if you want to be a lover

2014 / 05 / Minolta X-700 / Fuji PRESTO400

2014 / 05 / Minolta X-700 / Fuji PRESTO400

2014 / 05 / Minolta X-700 / Fuji PRESTO400

2014 / 06 / Fuji Natura Classica / Fuji Venus 800
結局のところ、この前欲しくなってると書いた、森山大道の現在愛用してるカメラ、ニコンのクールピクスS9500を、アマゾンで購入してしまった。中古で13000円くらいのを、まぁどんなものかと好奇心を満たされるだけでもいいかなと思って注文。
当たり前のことなんだけど届いたカメラはごく普通のコンパクトデジカメだった。フィルターっぽいものをかけて画質を変える以外は絞りもシャッタースピードも意図的に変えられない、基本シャッターを切るだけのカメラ。いささか拍子抜けするこういうカメラで森山大道は写真を撮ってる。森山大道がこういうコンデジを使ってるのは小さくて目立たない、起動が早い、ズームが使えるといったことが理由らしいので、そういう条件は満たしてるんだろうけど、ある意味カメラの特性に頼らない写真で勝負してるところはかなり度胸があるともいえそう。
ちなみにアマゾンではどんなに検索しても黒は出てこなかった。森山大道は極力カメラを目立たなくするために、黒のクールピクスに刻印されてる銀色のニコンのロゴも、黒のテープを貼って隠してるらしいけど、黒が見当たらなかったということはひょっとしてブルータスの特集が出てから、こういう理由で売れてしまったということなんだろうか。
何だかあまり使いもしない、それもそれほど高価でもないデジカメがじわじわと増えてきてる。そんなこといってないで使えばいいんだけど、よほど疎外する理由でもない限り持って出るのはフィルムカメラだし、フィルムカメラのほうが面白いものだから、デジはなかなか手にする方向へは動かないようだ。このクールピクスのようなコンデジはサブとしては持って出やすいようなので、今サブで持ち歩いてるのはオリンパスのXA2なんだけど、これの合間にそういう形で暫く使ってみるかな。
この前の記事でブルータスの特集が入門編のような体裁だと書いたけど、入門編としての情報は予想外に密度が高くて、こちらも森山大道入門レベルの知識をすべて持ち合わせてるわけでもないから、丁寧に読んでみると意外と読み応えがある特集だった。コヨーテのは10年近く前の特集だし、なによりも今月に出た特集のほうが活きがいいというか、生々しい感じがする。
☆ ☆ ☆
今回の写真は以前に撮ってブログに載せてなかった写真から。
色彩にしろ事物間にしろコントラストが効いてるイメージが好きだというのが、黒と白のコントラストだけで出来てるモノクロを撮った時には如実に表れてくるようだ。
細部を切り分けていくような写真は向かうところは二方向あって、一つはその切り出した細部に周囲のものとはここだけは違うという意味づけをしようとするもので、もう一つは意味の連鎖の中にあった細部を切り出すことで、その連鎖の中で細部が持っていた意味を剥奪しようとするもの、同じようにディテールに迫るような方法論だけどまるで正反対の結果へと着地していく。
わたしが撮ってるのはどちらかというと後者のほうだと思う。適当に云ってしまうとマクロレンズなんかを使って部分を拡大してみるような撮り方は前者のほうの撮り方なんじゃないかな。その証拠にわたしはマクロレンズを一本だけ持ってるけど、数えるほどしか使ったことが無い。まるで意図しない雰囲気のイメージしかファインダーの中に現れないものだから、そのうち使わなくなってしまった。
コンテクストの中で意味の連鎖のひとつとなっていた事物を、そのコンテクストから切り離した時に、その事物の背後から一体どんなものが顔を出してくるか。仮に異界だとか彼方だとかの単語で代用してるけど、そうい得体の知れない鵺のようなものが顔を覗かせるのか、今のところわたしにはよく分からない。
何かそういう鵺のような巨大なジグソーパズル的なものがあって、細分化し意味から遊離した写真はそのパズルの微細なパズルピースのような気もするけど、どれだけそのピースを集めてみても、おそらくその巨大な鵺的な何かのパズルは完成しないようにも思える。
☆ ☆ ☆
写真は全部祇園で撮ったものだけど、まるで祇園なんていう感じがしない。
2枚目のがもう何だかホラー映画のような感じで、このツブツブ感は嫌がる人がいるかもしれないなぁと思ってなかなか出せなかったもの。
3枚目のすっぽんの写真が祇園の料亭の感じで一応それっぽいかな。「あ!すっぽんだ!」と水槽の前で眺めていたら、すっぽんのほうは目をつけられたのを感じたのか水の中に潜り込んだものの、そのままずっと眺めていると、明らかにもう息が続かないといった様子になって、思わず水面に鼻を出そうとしたところを撮った写真。2014年に撮ったものだからこの写真に写ってるすっぽんはとっくに鍋の中に消えてしまってるだろうなぁ。
最後のはタイトルをつけるとしたら「束ねられた建築」なんていう感じか。フレームの中にもう一つフレームを作る形の変形といったところかな。上のほうを斜め横に走る電線もあまり邪魔という感じにも見えず絶好のアクセントになってるように思う。
グラフィカルな強さみたいなのはやっぱり歴然とあって、どんな写真を撮るにしても、そういう強さは何とか盛り込んでみたい。
祇園の辺りは意外と風変わりな装飾のビルが立ち並んでいて、巽橋だとか舞妓さんだとかだけじゃなく、こういう建築物もある意味祇園の顔のような側面を持ってる。
☆ ☆ ☆
if you want to be a lover - Luiz Henrique ('68)
これ、以前にビザールなマシュ・ケ・ナダなんていう言い方でここに載せた歌を歌ってた人。マシュ・ケ・ナダのほうはモード・モザイクというちょっとモンド系っぽいお洒落なラウンジのコンピレーション・アルバムに入ってたんだけど、その名前の表記がこれとは違っていて、追跡できなかった歌手だった。どうもこっちの名前のほうが通りがいいみたい。
いかにもボッサノヴァという感じのルーズな囁き声とゆるいグルーブ感が心地良い。素朴なブラスやストリングスも交えて意外とメロディアスな盛り上がりがあるのもポイントかも。
ちなみに以前に紹介したビザールなマシュ・ケ・ナダというのはこれ。
Luis Enriquez - Mas Que Nada
奇怪なスキャットと、土俗的というか、ドラムとかパーカッションというよりも太鼓といったほうが相応しい、地の底から響いてくるようなリズムが、目一杯怪しげな雰囲気を撒き散らしてる。
そういえばビザールな音楽特集なんてやるつもりだったけど、中断したままだ。
☆ ☆ ☆
空を行く鯨の写真がかっこいい。こんなのその場に居合わせないと撮れないわけで、よく云われるように、そこに居合わせるというのも写真を撮る才能のうちなんだろうと思う。