2009/04/27
【美術】 高橋留美子展 - 美術館 「えき」 KYOTO
土曜日の25日に京都伊勢丹の中にある美術館、美術館 「えき」 KYOTOで開催されてる高橋留美子展に行ってきました。京都の伊勢丹は京都駅の西側にあるんですが、駅と融合するような奇妙な構造になっていて、だから美術館もこういう名前になってます。この展覧会は去年東京では既に開催済みだったようです。その後仙台、新潟と廻って京都へ。京都での展覧会が終了すれば、松坂屋名古屋本店(7月22日~8月3日)、北九州市立美術館(8月22日~9月20日)、高松市美術館(9月25日~11月1日)と巡っていく予定だそうです。


伊勢丹に入って美術館のある階まで上がってみれば、伊勢丹の通路の要所要所にこういう表示がありました。

それで美術館まで辿り着くとこういう感じになります。
ここは出口なんですが、伊勢丹の中の案内に従って進んでいくと、美術館の入り口じゃなくて出口の方が正面に現れるようになっています。つまり鑑賞し終えた人をそのまま伊勢丹に導いていくっていう考えなんでしょう。

美術館の入り口はこの写真でいうと左側に通路があるんですが、その通路をずっと進んだ最奥の場所にあります。
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初日だったせいか、思った以上の人出になってました。
高橋留美子といえば80年代を席巻した漫画家で、おそらく当時マンガを書こうとしていた人の大半はこの人の絵柄の影響を受けたというか、高橋留美子の描くキャラクターはこういうタイプのマンガを描くときの、ある種のプロトタイプになってたと思います。
今は大友克洋から始まった、写真をトレースしたような背景や骨格から考えてるような人物描写のリアルな絵柄が主流になったり、萌え美少女のような絵柄が中心になったりで、萌え絵の元祖みたいな絵柄ではあるものの、高橋留美子の絵は今のマンガに直接的な影響力を持つという立場にいるわけではなくなってきているようです。でも展覧会のこの人出を見る限りは、それでも人気は全然衰えていないっていうのが再確認できるような感じでした。
この人の凄いのは少年漫画誌を活動の場にして30年近く未だに少年漫画を描き続けてるっていうこと、実は少年漫画を描き続けるっていうのは手塚治虫にも出来なかったことでした。
会場に飾られてた絵は「うる星やつら」「めぞん一刻」「らんま1/2」「犬夜叉」の代表的な4作からのものが大半で、短編などからのものは添え物程度に出展されてるだけでした。
代表作からといってもコマ割りのなかでキャラクターが動き回ってるマンガ本編の原稿じゃなくて、特別扱いの、たとえば少年サンデーの表紙や増刊号に付属したポスターのために描かれた絵とか、カレンダーのための原画、コミックスの表紙用に書き下ろされたものの原画と、そういうものがほとんど。基本的には彩色されて見栄えのする一枚絵ばかりが選ばれて額に入れられてるようでした。
展覧会としては若干安易、見た目の綺麗な原画を適当に並べておけばいいだろうって云うような手抜きコンセプトが見え隠れするような感じもあります。
印刷物では絶対に感じ取れない、目の前の色を塗った筆跡の延長に実際の筆があって、その先に筆を動かした高橋留美子の手が存在したというところまで想像させる臨場感が原画には確かに存在するし、印刷前提のマンガという事でそういう部分は原画でもあまり表立って現れないようにしてる部分はあるのかもしれないけど、そういうのを感じ取れるとやはり見ていて面白かったです。
それと感心するのは「線」が活きてるっていうこと。
Gペンを使って絵の適切なところに強弱をつけて引いていく表情のある「線」がやっぱり上手いです。力の入った勢いのある部分から細く綺麗にぬけて次の「線」に流れを繋いで行ったりするのを観ると、単純に観ていて視覚的に気持ちいいんですよね。これは極めて感覚的で、「線」を引く練習を相当やらないと会得できないものだと思います。
展示物としては僅かだったんだけど、仕上げの過程が見える本編原稿がやっぱり生々しい感じがして面白いです。切り貼りしてるネームがそのまま確認できたり、鉛筆でラフに書き込みがしてあったり、高橋留美子の名前が刻印されてる特別の原稿用紙に描かれてるのを目の当たりにしたり。
愛用の道具もちょっとだけ展示してあって、これはマンガやイラストを描いてる人には常識かもしれないけど、隅の何箇所かに1円玉をセロテープで貼り付けてスペーサー代わりにしている定規がありました。あと「火の用心」だったか、なぜかそんなロゴが入ってる愛用の座布団だとか。こういうのをもっと展示して欲しかったと思います。
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それで展覧会場は人が並びながらも前がつかえるわけでもなく、後ろから押されもしない自分のスピードで充分に観て歩けるくらいのものだったんですが、一区画だけとても混んでいて絵の前に辿り着くのにあまり動かない行列ができてる場所がありました。
この場所がなんだったかというと、高橋留美子以外の漫画家34人が「うる星やつら」のキャラクター、ラムちゃんを描いた絵を展示してる、特別規格「My Lum」のコーナーでした。
正直なところ展覧会自体は、高橋留美子の展覧会なのに高橋留美子の展示物が何だか適当に集められてるだけという印象を受けて会場を廻っていたので、実はこのコーナーがこの展覧会の中で一番面白いものでした。
34人の中には吉田戦車だとか諸星大二郎だとか花輪和一だとか一癖どころじゃない癖の固まりみたいな漫画家も多数参加していて、それぞれが自分の持ってる「ラムちゃん」のイメージを画像にしてるんですが、それぞれの漫画家の「ラムちゃん」との距離の取り方か千差万別で、でもこの漫画家だったらやりかねないっていうような絵柄にきちんとなってたりして、凄く面白かったです。
それぞれの絵の下に各漫画家のラムちゃんに対峙した感想が書いてあるパネルが掲げられていて、悪戦苦闘した感想だとか途方にくれた様子だとか、これまた読んでいて非常に面白いものでした。このコーナーで動かない行列が出来てたのは、絵を観てはこのキャプションを皆が楽しんで読んでたからじゃないかと思います。
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わたしは展覧会に行くと、なにか戦利品を持って帰らないと気がすまないたちで、美術館の売店は大好きな場所。展覧会に行ったら絶対に立ち寄ります。
この美術館 「えき」 KYOTOっていう場所は岡崎にあるような本格的な美術館とは違い、云わば伊勢丹の一部の扱いで、一応出口手前にグッズ売り場はあるんですが(写真に写ってる部分です)、伊勢丹の売り場から関連商品を持ってきたんじゃないかという品揃えの方が目についたりするあまり張り合いがない場所です。
大体目録も売ってない場合が多いんですが、今回は売ってました。

目録は展覧会に行けばその記録として、余程くだらない体験をした場合以外は大抵確保するんですが、これは名前こそ高橋留美子展って書いてあるものの展覧会の記録というよりも小学館が一般的に売り出した唯の高橋留美子画集のような体裁でした。普通の本屋でも買えそうな雰囲気の本。
しかも買う前に一応中身を確かめて、それであえて買ったんですが、この目録にはおそらくこの展覧会の一番面白かった目玉企画「My Lum」がずっかり抜け落ちてます。これは物凄く残念。一番面白かったものが載ってないってどうかしてます。
実はこの「My Lum」、新装になったコミック「うる星やつら」の各巻の末尾に1作家づつ載せてあるんですよね。展覧会の目録に載らなかったのはこの新装版「うる星やつら」の売りにするための商売上の戦略だったというわけ。
わたしは羽海野チカが描いたラムちゃんの絵がどうしても欲しかったので、この出口のグッズコーナーに置いてあった新装版、それぞれ読めるようにしてあったのを一冊ずつ巻末を確かめて羽海野チカのラムちゃんが載ってる32巻目を一冊だけ買いました。
でもこの新装版コミックに載ってるのはモノクロ、会場にあったのは色付きの絵だったのでかなり不満です。原画に近い色付きのが欲しい…。
もう一つ、京都会場限定ってことで、そういうのを取り混ぜてこまごまとしたものを。
ピンバッチなんて集める趣味は無いんだけど限定という文字に引かれて…。
それと限定でも何でもないテンちゃんキーホルダーが混じってますが、実はわたしは結構なテンちゃんファンだったりします。

こっちはちょっとした気の迷いで。

中身はラムちゃんの形でもしてるかとちょっとは期待したけど、ただの雷おこしでした。
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東京で開催された時の高橋留美子初日挨拶の模様らしいです。
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