【洋画】ターミネーター4

今これを書いてるのは2月の19日なんですけど、どうも「アバター」が頭から離れなくて、他の映画の事を考える気になかなかならないという気分が続いてます。「アバター」を観てからほぼ一月くらい経ってるし、実はあれから2度目も観にいってるんですけど、これで完結!次の映画に行こうって云う風にわたしの中で落ちてこなくて、この映画、やっぱり結構中毒性があるようです。
それで頭の中から「アバター」を完全に追い出す気にもならずに次の映画はどうしようかなと考えていて、ジェイク役をやってたサム・ワーシントンが出てる映画繋がりで選ぶのもいいんじゃないかと思いつき、この作品「ターミネーター4」を取り上げることにしました。サム・ワーシントンはこれと「アバター」で去年かなり存在感をアピールした俳優だったのではないかと思います。
もう一つこの映画はターミネーター・ワールドの一部を構成することになるので、「ターミネーター」をこの世に送り出した「アバター」の監督、ジェームズ・キャメロン繋がりにもなりそうなんですけど、残念ながらキャメロン監督が関わったのは「ターミネーター2」まで。それ以降のシリーズ展開には関わっていません。関わってないどころか確か何番目かの奥さんへの慰謝料としてターミネーターに関する権利を全部譲渡してるんですね。キャメロン監督自身は「ターミネーター」は「2」で完結してると云う風に考えているらしいです。

ちなみに前作「ターミネーター3」の監督はジョナサン・モストウ(Jonathan Mostow)。「U-571」というタイトルで潜水艦の映画を撮った人です。
その後をついでターミネーター・ワールドの最新作になる今回の映画を撮ったのはマックジー(MCG。本名ジョゼフ・マクギンティ・ニコル、Joseph McGinty Nichol)という監督。わたしはこの妙な名前の監督に関してはあまり知らないんですけど、「チャーリーズ・エンジェル」で監督デビューした人のようです。まともな人の名前にも見えないし、こういうふざけた名前をつける感覚の背後には、何だか最終的に出来上がったものに責任を持ちたくないといってるような意識が見えるような気がするのはわたしだけでしょうか?

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「ターミネーター4」の公開は去年の夏のことでした。
久しぶりのターミネーター・シリーズの映画ということで期待を一身に背負ったような注目の作品だったんですが、興行成績はどうだったかというと、結果的には大コケの映画ということになってしまいました。製作会社「ハルシオン」は経営難に陥って破産、ターミネーターに関する一切の権利を売りに出すことになります。日本ではそれでも中ヒットくらいはいったらしいんですけど、酷評そろいであったのは避けることが出来ず、映画秘宝で選んだ2009年のトホホ映画では第2位の位置さえも確保してしまう体たらくでした。
秘宝は本屋で見つからなかったので未だに読んでないんですけど酷評の理由は大体想像がついて、おそらく今までのターミネーター・シリーズと全然世界観が違うといったようなところにあるんだと思います。
未来の世界では機械と人間が戦争をしていて、劣勢となった機械側が人類を率いて勝利へ導こうとしてるリーダー、ジョン・コナーをこの世界から消し去るために、ジョンを生む前の母親サラ・コナーを抹殺する目的で、過去の世界に向けてターミネーターを放つというのがターミネーターの世界観でした。未来から来たターミネーターに付け狙われることになったサラは、自分を守るために未来のジョンによって送り込まれたカイル・リースとともに行動するうちに、未来では機械と人間が戦争することになると知り、やがて自らの使命を悟ってたった一人でその未来を変えるべく奮闘することになります。
機械側からの核による人類への総攻撃の日「審判の日」を回避するべく、サラと後には息子のジョンも一緒になって行動するというのがキャメロンがデザインしたターミネーターの世界でした。
ところがモストウが監督した前作の「ターミネーター3」では、実際に機械側の核ミサイルによる攻撃が行われてしまいます。回避すべく行動していたジョンたちはなす術もなく立ち尽くし核攻撃が広がっていく世界を傍観するのみ。
実は「ターミネーター3」もあまり評判が良くなくて、その評価の低さはジョン役がニック・スタールという「2」のエドワード・ファーロングとは似ても似つかないさえない俳優に交代したこととともに、「ターミネーター」「ターミネーター2」というキャメロンワールドでサラとジョンが将来に核戦争が起こらない世界にしようと奮闘してたすべての努力がこの「ターミネーター3」で無駄になってしまったことにもあったように思えます。
そして今回の最新作「ターミネーター4」はその機械による人類への核攻撃、「審判の日」が訪れて以後の世界が舞台になって物語が始まります。将来来る核戦争の日を日常風景に重ねながら孤独な戦いを展開するという「ターミネーター」お馴染みの世界がここでは完全に別のものに置き換わってしまってました。未来からジョンを始末するためにやってくる人の皮をかぶったほとんど無敵の抹殺マシンもこの世界では人と見れば攻撃してくる兵器の一つとして既に日常風景として当たり前のように存在しています。こういうことが従来のキャメロンワールドの「ターミネーター」が好きな観客にとっては、「ターミネーター4」は「ターミネーター」を名乗った全く別の模倣映画のように見えて、本来的な「ターミネーター」を名乗るに値しない映画と判断されたのだと思います。

わたしはと云えば実は「審判の日」がやってくるのは物語の当然の帰結だと思っていたので「3」を観たときもそれほど落胆しませんでした。サイバーダイン社という、未来に人類を敵とみなすことになるスカイネットを開発する会社から、将来「ターミネーター」やスカイネットに繋がっていく情報を引き出し破壊して、スカイネットそのものを開発できなくするという筋道で「ターミネーター2」では一応の成功を見て完結したわけですけど、未来の機械との戦争が回避されたなら、回避が決定した瞬間から、サラとジョンは未来からターミネーターが送られてこなかった世界に移行してるはずで、ターミネーターがやってこない世界に移行したらサラやジョンの記憶からはターミネーターの存在は消えてなくなってるはず。さらに云うなら将来機械の宣戦布告によって核による「審判の日」がやってくるというヴィジョンも当然存在しなくなってるはすです。
なのにクリスタナ・ローケン演じる新型女ターミネーターはやってくるし、相も変わらずシュワルツェネッガーのターミネーターはジョンを助けにこの世界に降り立ってくる。これがどういうことかといえば、サラとジョンが生きてる世界ではたとえジョンたちが別の平行世界に移行していたとしても、その移行した平行世界でもまた必ず将来に「審判の日」がやってきて、その先の未来では機械と人間の戦争が始まってるということです。何をどう試行錯誤してスカイネット誕生に致命的なダメージを与えようと画策しても、シュワルツェネッガーの記憶がジョンにある限り未来ではかならず戦争は起こります。
だからわたしは「3」で「審判の日」が実際に起こっても、到来して当たり前の新しいステージに「ターミネーターワールド」が移行したという取り方の方が強くて、サラやジョンの努力を台無しにする最悪の物語とは思いませんでした。

今回の「ターミネーター4」はその「審判の日」以降の機械との戦争を描いたものとして酷評を呼び起こすことのみ目立ってしまいましたけど、物語の世界を形作ってる「審判の日」を受け入れるかどうかで、その印象は結構変わってくるのではないかと思います。

☆ ☆ ☆

21世紀初頭、人類を敵とみなしたスカイネットによる核攻撃、「審判の日」を生き延びた人類と、スカイネットが操る機械軍団ターミネーターとの間に戦闘状態が続いていた。
2018年、そういう戦闘状態にある中、抵抗軍によってスカイネット研究開発施設の一つを急襲する作戦が立てられる。常々抵抗軍兵士の間で密かに救世主と噂されるジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)もその作戦に参加していた。

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施設のコンピュータ・データを持ち出す目的で施設の地下に降り立ったジョンたちは、そこでスカイネットが人間を捕獲しその細胞から人型潜入タイプのターミネーター「T-800」を開発している研究室を発見した。現在地上を徘徊してるターミネーター「T-600」は機械の体にゴムの皮膚を被せただけのものでとてもではないが人間の中に潜入させて何か出来るというものではなかった。
作戦は目的のコンピュータ・データを持ち出すことには成功するが、連絡の途絶えた地上待機部隊の様子を見にジョンが地上に出ていた時に地下施設が爆発、ジョン以外の部隊員は全滅し、作戦はジョンのみがかろうじて帰還する結果となった。
帰還した先の抵抗軍本部でアッシュダウン将軍(マイケル・アイアンサイド)ら幹部と話をしたジョンは今回の作戦で持ち出した情報は機械が短波を使って交信する際の秘密シグナルで、そのシグナルは機械を制御してるものだから有効に使えば機械の動きをとめることが出来るかもしれないというものだった。そして本部ではそのシグナルが有効であるか確認の後、4日後にはスカイネットの本拠地に総攻撃を仕掛ける予定だという。なぜ4日後なのか尋ねるコナーに幹部の一人は、抵抗軍の幹部全員の抹殺が4日後にスカイネット側で予定されてること、その抹殺リストにはジョンの名前と民間人が一人、カイル・リースの名前が入っていることを教えてくれた。しかも抹殺リストのナンバー1はこの民間人カイル・リースであるらしい。
カイル・リースはスカイネットがジョンの母親サラを抹殺するために過去に送り込んだターミネーターを阻止するべく、ターミネーターの後を追うようにジョン自身が過去に送り込むことになる人物であり、結果的にジョンの父親になる人物でもあった。
ジョンはサラから名前を聞いてはいるものの、カイル・リースがどういう人物なのか全く知らない。おまけにこの時代のカイル・リースはまだそれほど大人にもなっていない、ジョンよりも若い年頃の青年のはずだった。カイル・リースが存在しなければ自分も存在することが出来なくなる。そう思うと4日後の総攻撃と同時進行で、ジョンはトップクラスの重要度で命を狙われてるカイル・リースを探し出す必要があると考え始めた。
一方、ジョンが後にした施設の瓦礫の中からは一人の謎の男マーカス・ライト(サム・ワーシントン)が這い出してきていた。
マーカスは施設の爆発口から這い出てくると、その足で砂漠を横切り、やがてロスアンゼルスの街に辿り着いた。

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LAは核戦争で瓦礫の山と化したままの姿を晒している。マーカスは瓦解したビルの合間をさ迷い歩いてるうちに、LAを徘徊するターミネーター「T-600」に遭遇してしまい、銃撃を受けることになった。
そこへどこからともなく少年が現れ、マーカスは少年の手引きで「T-600」の攻撃から逃れることに成功する。
マーカスを助けた少年はカイル・リース(アントン・イェルチン)と名乗った。
その夜、マーカスらはラジオから流れてくるジョンの抵抗軍兵士への通信を聞いた。抵抗軍に合流しようと提案するカイルとマーカスの意見は分かれたが、とりあえず車を修理してLAの廃墟から出ることにした。
LAからの途上に立ち寄ったコンビニ跡で、生き延びたものの抵抗軍には参加せずに隠れ住む一団と遭遇、マーカスらといざこざを起こしそうになった時に、突如現れた巨大ターミネーター「ハーヴェスター」を含む機械軍団に襲われマーカスはかろうじて逃げ切るも、カイルはコンビニ跡にいた生き残りの人々とともに拉致され、スカイネットの本拠地に連れ去られてしまった。
LA近郊でターミネーターの動きが活発になってることを知ったジョンは誰か人間が襲われてると判断、近くを偵察飛行していたブレア(ムーン・ブラッドグッド)を現場に向かわせた。ブレアはターミネーターが襲撃した現場付近でマーカスと遭遇し、マーカスとともにジョンのいる抵抗軍の秘密基地に戻ることにした。
ジョンは基地にたどり着いたマーカスからカイルが4日後に総攻撃されるスカイネットの本拠地に連れ去られたことを知らされる。本拠地への攻撃日程はずらされる可能性はなく、アッシュダウン将軍は囚われてる人間の救出は目的ではないとまで言い切っているので、このまま総攻撃の日を迎えてしまえば自分の父となるカイルはスカイネット本拠地とともにこの世から消えてしまうことになる。
カイルはスカイネットが抹殺リストのトップに上げたくらい機械と人類の戦争の行方を左右する人物だった。そこでジョンは総攻撃前にスカイネット本拠地に単独潜入してカイルを救出することを考え始めた。

☆ ☆ ☆

映画のプロローグは意表をついていて、始まり方としてはとても上手い展開だったと思います。刑務所の檻のなかで、マーカス・ライトと見るからに異様な謎の女セレナ(ヘレナ・ボナム=カーター)との意味深な会話。マーカスがセレナとの会話のなかで「1時間」と口にするのは観ていると即座に分かることになるんですが、これから自分が処刑されるまでの残り時間のこと。要するに死刑執行直前の死刑囚マーカスの独房の中がこの映画の始まりの地点になってるわけです。タイトルクレジットが進む中でやがて処刑シーンへと画面は移行して、薬物注入による刑執行なので見た目のグロテスクさはないものの、監督の名前が出る直前にマーカスは実際に処刑されてしまいます。
監督の名前がスクリーンに出る前に主要登場人物の一人がかなりショッキングな状況で命を落としてしまうわけで、観てる側はマーカスと会話をしていた見るからに謎の女の印象もあって、このシーンは一体何の意味があるんだろうとか、いきなり登場人物が死んでしまってどうするつもりなんだとかいろいろ考えてしまうと思います。観客の興味を引っ張り出す展開としてはかなり思い切っていて面白いです。
この出来事が2003年で、次のシーンからは2018年、「審判の日」以降の「ターミネーター4」の物語が展開する主要な時代へと飛び、ジョンの紹介を兼ねたスカイネット施設への攻撃シーンに変化していきます。刑務所の独房から砂漠の戦場へと、状況の落差もあってこの展開も興味を引く上ではかなり有効。この映画はスタート時点のシーンの組み立て方はかなり良く出来ています。そして状況の落差の仕上げでもするかのように、その戦闘シーンが終了した直後に冒頭で処刑されたはずのマーカスが地下から這い出してくるシーンが続くことになります。
マーカスの正体は物語的には映画中盤までは明かされません。ブレアと遭遇しジョンのいる基地にたどり着いて始めて、マーカス自身も吃驚するような正体が判明するという筋道になっていて、それまでのカイル・リースとともに行動してる間はマーカスは謎の人物のままです。でも物語的にはそういう展開であっても、死刑という絶対に逃れようもない死を通過してるのに、再び生きて登場した時点で、この映画が人の振りをした機械が大暴れする「ターミネーター」という映画であることを知っていれば、たとえ映画が秘密にしてようと、マーカスの正体は早くも完全に分かってしまうことになります。回避できる死であれば何らかの形で生き延びた可能性もあるけど、死刑では一度死んでるのは確実で、この生存率0というとびっきり意外なプロローグが仇になって、マーカスの正体に関しては再登場とほとんど間をおかずに観客側に予想がつき、謎ではなくなってしまうという結果になってました。映画のスタートの方法が興味を引くやり方としては上手かったので、この予想外に勝手にばれてしまうマーカスの正体に関してはあまり手際が良くないという印象で終始したような感じでした。

マーカスの正体こそ早々と予想はつくものの、冒頭部分の展開はこういう風に観客を若干翻弄するような動きを持って、また施設急襲のシーンも戦闘中のヘリに乗り込んで飛び立ち墜落するまでを操縦席内からの1カットで撮るなんていう凝ったショットも挟み込んで、なかなか面白い出来になっています。
ではマーカスが施設の地下から這い出してきてLAに向かいカイルと出会うというという風に続いていくそれ以降の物語はどうだったかというと、その後の物語の印象は助走を始めた物語に感じた高揚感とは比べ物にならないくらい何だか平板なものになってしまってるようにわたしには思えました。云ってみるならばクライマックスに用意されてるカイル・リース救出劇にむけて映画の時間中そこへ至る前振りばかりが延々と並べられてるような感じ。

長編の物語といっても、結局はその長編の長さになる分だけ小さなエピソードが繋がり重ねられた結果、長編の物語として成立することになります。でも長編の物語が基本的には細かいエピソードの集積物に他ならないとしても、では逆に小さなエピソードを長編の物語になるだけの分量繋いだらそれが長編物語になるかといえば、実は必ずしもそういうことにはならないんですね。エピソードを膨大な量並べても、それは膨大なエピソード集にはなっても、そのまま無条件に長編物語になるとは限らない。
「ターミネーター4」は映画全体は危機、解決、危機、解決という風に並んでいて、アクションなどの個別のシーンを眺めてると、映画としてはそれなりに観られるものに仕上がってます。でもその個別のエピソードが危機から解決へという運動を繰り返してるうちに有機的に絡み合って、より包括的で大きな物語空間を形成していくかと思えば、必ずしもそういう風には動いていきません。
豊かな物語空間がいつ目の前に開かれ始めるのだろうと期待して観ていても、スカイネットと人類の戦いという壮大な世界観の割には極めて限定的で小さなカイル・リース救出というクライマックスが何だか唐突な感じでやってきて、救出シーンで展開される、過去作品へのオマージュなのかどこかで見たようなシーンも多いT-800との戦闘を眺めてるうちに、気がつけば映画が終わってしまってると、そういう感じの映画になってるようでした。
エピソードは揃えているけれど長編を構成するべき何かが欠けていた映画という感じなんですね。結果、見終わった後の全体の印象はスケール感に乏しく散漫なものというような表現が相応しいものへと落ち着いていくことになります。

☆ ☆ ☆

たとえばマーカスが理由もなく向かったLAで都合良く出会った、たった一人の人物がカイル・リースであったりといった、伏線を張るわけでもないシーンの連鎖が、この映画全体の散漫さに繋がっているんだろうと思いますが、登場人物の扱いもまた中心を欠いたようなこの映画の印象を形作ってる要因の一つじゃないかと思いました。
「ターミネーター4」の主要登場人物は後に反乱軍のリーダーとなるジョン・コナーと、ジョンが自分の母親を守るために過去へ送り込むことになるカイル・リース、そして「ターミネーター4」で初登場となる謎の人物マーカス・ライトの3人です。
ターミネーター・シリーズを最初から観てると、カイルは「1」でターミネーターからサラ・コナーを守る人物として主役の位置にいたし(演じていたのはマイケル・ビーン)、ジョン・コナーはそのサラの息子で将来の反乱軍のリーダー。初登場の「2」ではほぼ無敵の液体金属製のT-1000相手に、今度はジョンを守る側に立ったシュワルツェネッガーT-800とともに立ち向かう、まさしくこの「ターミネーターワールド」の主役という位置に相応しい人物だということを知っているはずです。だからこの「ターミネーター4」もこの二人が主役とみなして鑑賞し始めた人も多かったんじゃないかと思います。
ところが本来的な主役であるはずのこの二人の扱いが「ターミネーター4」ではどうだったかというと、あまり重要な人物的な動きを与えられてないという感じでした。

カイルはマーカスがたまたま立ち寄ったLAの廃墟で自称「反乱軍LA支部」と名乗る人物として登場します。

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マーカスとは今の世界で何が起こってるのか話す程度でそれほど重要な会話をする場面もなく、動かせた廃車を使ってLAを出た後は途上のコンビ二跡で巨大ターミネーター「ハーべスター」に襲われ、そのまま拉致されて映画のラスト近くで救出シーンが始まるまでスクリーン上から消えてしまいます。今までシリーズを見ていた人間はカイルの素性は知ってるけど、映画の中ではジョンが抵抗軍として一緒に行動してる奥さんのケイト(ブライス・ダラス・ハワード)に自分の父親になる人物と語るだけなので、その事実は物語全体では共有されないままに終わってしまいます。どういう人物なのかは、喋れない女の子ピースを引き連れてLAで単独で機械に抵抗してる子供という以上のことは説明されず、さらに云うならなぜピースと単独で抵抗してるのかということさえも語られないので、観客にはアントン・イェルチンジョンが演じる外見上の存在感と将来ジョンの父親になるということより他は分からないまま終始するような形になってます。

一方ジョンの方はどういう感じだったかというと、本来ならカイルよりもさらに主役に相応しいし、クリスチャン・ベイルなんていう一流の俳優まで起用してるのに、扱いはひょっとしたらカイルよりも酷いんじゃないかという印象でした。
冒頭のスカイネット施設急襲シーンで始めて画面に登場し、その急襲シーンではそれなりに中心に位置する動き方をしてはいるし、位置を知らせないために返信を拒否する潜水艦内の反乱軍本部へ、自分を迎えに来いと発信しておいて大海原の上空にいるヘリから直接海に飛び込む、いささか無茶ともいうべき行動力のある人物として描かれてるんですが、急襲シーン以降のジョンはその行動力が一体どこに消えてしまったのかと思うくらい何かといえば自軍の秘密基地に閉じこもって、母親のサラが残した機械との戦争に関する知識を詰め込んだテープを聴いてるだけの人物になってしまいます。
ジョンは自室に篭って母親のテープに耳を傾ける以外では、世界中に散らばって個別の抵抗を強いられてる人たちに向けて電波を通じてメッセージを送ることもあるんですけど、それを聞いた人々がなぜジョンの放送に無条件で従うのか、なぜションにそれだけ人を追従させる力があるのか「ターミネーター4」を観てもよくわかりません。人を追従させる力があるから人を追従させると、いささか同語反復的な描写で納得してるような描き方で、全体に印象の薄い人物像に終始してるような感じでした。

今回始めて登場したもう一人の謎の人物、マーカス・ライト。はっきり云って、この人物こそが今回の映画「ターミネーター4」の主役です。
何よりも映画はマーカスが死刑囚の独房にいるところから始まって、マーカスがある行動選択をしたところで終わります。つまり映画の最初と最後がマーカスに関連したことで語られているわけで、こんな扱いを受ける端役なんているわけないです。
ジョンはカイルを自分の父親だとは知ってるけれど、会ったこともないし顔も知りません。この二人が実際に始めて出会うのはもう物語も終わりに近くなってるクライマックスのスカイネット本拠地での救出作戦で、この時ジョンはカイルに対して何者なのか誰何してます。そのぐらいこの場面に至るまで出会ってなかったということ。
またカイルのほうもジョンのことは放送で声を知ってる程度で、しかも終わり近くの場面になったこの時点でも自分が将来目の前にいるジョンの父親になるような最重要人物であることも全く知らないでいます。

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それではこのマーカスはどうかというと、マーカスはジョンとカイルのラインを横断するように、物語前半でカイルと出会い、後半でジョンと出会うという形のストーリ・ラインになってます。従来からの登場人物が物語の最後にならないと出会えないような物語の中で、その両者と満遍なく係わり合いを持っていたのはマーカスだけ。
こういう風に「ターミネーター4」では従来のシリーズ・キャラクターを脇に退けて、マックG監督が創出した新しいキャラクター、マーカス・ライトが一番派手に動き回る位置におかれるということになっていました。

わたしは「ターミネーター」のような支持者が膨大に存在する著名なシリーズものの続編を依頼されて、そういう場合に監督はよく引き受ける気になるなぁっていつも思ってました。シリーズに相応しい面白いものを作らなくてはといった重圧は半端じゃないと思うし、ファンの期待を裏切れないなんて思い始めると到底受けられるようなものではないだろうって。
でも実際はそんなに殊勝な感じのものでもなさそうです。この「ターミネーター4」に関わった人の仕事振りを観てると、もとの「ターミネーター・ワールド」の延長上で雰囲気も壊さずに従来のファンの思い描くようなものを第一に考えるという姿勢よりも、そういう重圧なんかとは最初から完璧に無縁で、どちらかというと自らの世界を実現するためだったら、こういう超有名な世界設定のシリーズを利用しつくすという感じのほうが強いのではないかって思いました。自分たちの考えたものを労せずして超有名な舞台に乗せられるのだったら遠慮することなんてどこにも必要はないって。
マーカスの場合も、「マックジー」印をでかでかとくっつけてるそのキャラクターをターミネーターワールドで活躍させることが出来るなら、今までの物語やそれに馴染んだファンが要請する、本来的な主役であるはずだったジョン・コナーとカイル・リースの重要度をマーカスよりも下げて、脇に回しても差し支えないと考えたんだと思います。
ただその結果は本来活躍するべき人物があまり活躍しないちぐはぐさとしてやはり映画には現れてきていて、観客には「ターミネーター」と「ターミネーター」のようなものの間で揺れ動いてる何か焦点の定まらないものを観ている感触が強かったのではないかと思います。

「ダークナイト」で同じく主役のバットマンだったにもかかわらず悪役ジョーカーを演じたヒース・レジャーに食われてしまった時のように、今度はマーカス・ライトを演じたサム・ワーシントンに良いところを全部持っていかれたクリスチャン・ベイルはちょっと可哀想でした。

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マーカス・ライトはたとえていうなら、従来のシリーズでシュワルツェネッガーが演じていたT-800に相当するような役割だったのだと思います。未来から抹殺しにきたり保護しにきたりするのとは全く違う状況ではあるものの、ジョンに寄り添うものとして物語的には近似的な形をとってるようにみえました。
しかも「2」でT-800とジョン・コナーの間にあったようなテーマ性が、形や内容は異なっても「ターミネーター4」のマーカスにも同様に与えられています。

「2」では外見上は人のように見えはするものの本質は機械というT-800とジョンとの間に生まれてくる擬似的な父子関係を通して、人の絆や、どういう行動をとることで人は人らしく生きていけるんだろういったことをテーマとして提示してました。演じてるのは人間の俳優シュワルツェネッガーではあったけれど、T-800という命を持たない機械の行動を通して描写するからこそ人が人らしくある有り方といったテーマは際立っていくことになります。そういう風にテーマが描かれることの行き着く先に溶鉱炉の最終シーンでシュワルツェネッガーの差し出した指のサインへの感動があったわけです。実際に生きてる人間でも機械人間シュワルツェネッガーT-800が示した人間的なものよりもはるかに機械的な生き方をしてる人がいたらちょっとは身につまされる思いをするかもしれません。また「2」の面白いところというか、キャメロン監督の凄かったところはこういうテーマを堅苦しい形ではなくアクション映画のなかでエンタテインメントの言葉として語ったところでした。

「ターミネーター4」でマーカスが担ってるテーマは、「命を、生きる価値のある命として生きること」、一言でいうならこんなところだと思います。
マーカスはプロローグの死刑執行1時間前の独房の中で謎の女セレナにもう一度生きるチャンスをやると云われた時、自分のせいで兄と警官二人が死んだからもう一度生きるチャンスなんかいらないと答え、自分の命は生きる価値がない命だと自分で断罪して刑場に赴きます。でも冒頭で自分の命に対してそういう決断をしたマーカスですが、物語の最後には全く逆の心情に変化して、もう一度生きる価値のある命を生きてみたいと、自らの命の有り様をジョンに託すことになります。
こうやって書いて見ると自己犠牲という観点では「2」のT-800の最後を思い起こさせるところもあってやっぱりシュワルツェネッガーの後を継いだようなキャラクターだったんだなと思ったりするわけですが、それはともかく映画は最初と最後をこういう風に構成してることで、マーカスの自分の生に関して180度転換する心情を見せることがテーマだったのは間違いないところだったと思います。
でも、テーマはそういう風に分かるんですが上手く表現できていたかというとちょっと怪しいというか、「2」のジョンとシュワルツェネッガーの間にあったテーマ性ほどには十全に展開できなかったような印象で終始しました。
まず、マーカスが自分の命をいらないとまで言い切ってしまうほどの原因となった事件について、映画の中では何も語られないんですよね。本人の口から兄と二人の警官が死んだということを言われるだけ。マーカスを焦点にしてその人間性を描写しようとするなら、この原因となった出来事を表現しないのは有り得ないです。なぜ自分の命までもいらないと云うほどになってしまったのか分からないと、もう一度意味のある生を生きたいと希求する心情の切実さもまた理解不能となりますから。
もう一つはやっぱり主役級の人物を3人も揃えたことで、物語的にマーカスに焦点を合わせきれなかったことも描写不足に拍車をかけていたようです。こういうところを丁寧に描いていたら「ターミネーター4」はかなり様相の変わったもの、ひょっとしたらトホホ映画の汚名を返上できるような出来の映画に変貌していた可能性さえあったかもしれません。

マーカス・ライトに関してはわたしにはもう一つかなり気になったところがありました。
映画の中ではマーカスは意識を持った機械の一種として扱われていて、その結果映画の最後であのジョンの最終判断に行き着くわけですが、マーカスはどう見ても機械が意識を持った存在じゃないんですね。
マーカスの体の大半は確かに機械に置き換えられてるけど、マーカスの素性をたどれば元人間であることは揺るがすことの出来ない事実で、体の99パーセント機械で置き換わっていたとしても、マーカスの属性は根本部分では機械じゃなくて人間です。
それを脚本を書いた当人がおそらく勘違いしてしまって、人間の振りをしている機械、つまり根本部分が機械である存在として書いてしまってる。だからジョンは最後の判断を軽く頷くだけで済ませてしまってるんですが、マーカスに関する最後の展開は一見「2」のT-800の自己犠牲になぞらえてるように見えはするものの、マーカスはT-800と違って明らかに人間なんだから、わたしにはマーカスの意志を何の躊躇いもなく当たり前のように承諾したジョンの行為は冷酷な殺人そのものとしか見えませんでした。
主人公マーカス・ライトの属性を脚本家自身が勘違いしてる。ひょっとしたらこれがこの映画の最大の傷なんじゃないかと思います。だから結末は「ターミネーター2」的な感動を狙って「2」と相似した形に持って行ってるんだと思いますけど、この部分では「ターミネーター4」はキャメロン監督が描き出した「2」のような感動を覚える結末には到底至らない結果となってます。

☆ ☆ ☆

ターミネーターといえば毎回新型のターミネーターが登場するのも結構な楽しみになってます。「ターミネーター4」で新しく登場したのは人間型ターミネーターT-600と、巨大ターミネーター「ハーベスター」、それに水中用の蛇型ターミネーター「ハイドロボット」とバイクタイプの「モトターミネーター」。
ところが先に書いたようにこの映画に関わったスタッフはどうもターミネーターワールドという超有名な世界を利用して自分のアイディアを披露することにポイントを置いていて、従来の世界観に沿うようなものにするということにはあまり関心がなかったような感じなんですね。どれもこれも確かに機械が動いてるんですけど「ターミネーター」らしくない。

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コンビニ跡に出現する「ハーベスター」は出てくるとすればどう見ても「トランスフォーマー」の方が相応しそうだし、「ハイドロボット」、「モトターミネーター」に至っては人型であることも放棄してしまってます。この映画に出てくるターミネーターって人の形をしてるのが最低限の条件だと思うので、製作した側ではこんな意表をついたターミネーターって凄いでしょうって云うノリなんだと思うけど、わたしにしてみればこれをターミネーターと呼んでしまうのははっきり云って論外でした。しかも強いのかというと、「ハイドロボット」は水に近づく人しか襲えない間抜けだし、「モトターミネーター」は道路にロープ張られただけで簡単にひっくり返ってしまう程度。

ターミネーターで一番の見ものだったのはこういう新型ではなく、最後の方に登場した開発途上のT-800だったのではないかと思います。このT-800というターミネーターは将来ジョンの母親サラ・コナーをこの世から消してしまうためにスカイネットが過去に送り込むことになるターミネーターです。当然見た目は最初の「ターミネーター」が公開された1984年当時の、この役を演じた若い頃のシュワルツェネッガーなんですけど、「ターミネーター4」ではこの若いシュワルツェネッガーの頭部を3DCGを使って完全に再現しています。これがまた驚異的な出来で到底CGで製作されたものとは思えず、本当に若いシュワルツェネッガーを過去から連れてきて撮影したんじゃないかと思えるくらいのとんでもない出来に仕上がっていました。

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少し前の「ベオウルフ」という映画なんかでもフル3DCGで人物を描いてましたけど、まだまだデジタル人形劇という部分は残っていて、実際の人物が演じてるように見えるところまではかなりの隔たりがありましたから、この3DCG製のシュワルツェネッガーは人物の3DCG表現としては完全にステージが別のレベルに上がってしまったという感じでした。ただこのT-800はすぐに外装が剥がれて金属骨格だけのものになってしまうので、若いシュワルツェネッガーが見られるのはわずかなカットのみ。その辺りに何かまだ3DCGによる人物表現の限界があるのかも知れません。

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この「ターミネーター4」は対スカイネット戦争の時代を背景にした三部作の最初の作品として構想されてるようで、世界観の多くを過去のシリーズに委ねてる他にも、未来にむけては未解決な部分を後に続く作品に投げ渡しているようなところもあって、基本的な部分で舌足らずになってしまう以外にはない映画でした。そこへこれまで書いてきたようなこともあわせて、わたしはこの映画に「ターミネーター」シリーズの新作としては力足らずのところを見てしまったんですけど、それでもアクション映画としてはそんなに酷評を貰ってしまう映画か?と思いながら結構楽しんだところもありました。また、わたしにはサム・ワーシントンという俳優を観られたのもこの映画を鑑賞した収穫だったように思えます。
サム・ワーシントンはマーカス・ミラーという役を通してかなりの存在感を示しています。「アバター」の時にも思ったんですけど、朴訥という印象を持ちながら田舎臭い方向には全く向かっていかない不思議な魅力があるんですよね。寡黙で誠実な役をやるとかなりぴったりと嵌ってしまう俳優じゃないかと思ったりします。またこれと続く「アバター」でも、期せずして目覚めたら違う状態になっていたという役が続いてるのも、サム・ワーシントンにそういう役を引き寄せる何か隠された特質でもありそうで面白いです。
映画ではああいう結末になったので主役を続けていくのは不可能になった可能性が強いですが、新シリーズの三部作がこれから続くのならマーカスをシリーズの主役にした方が良かったんじゃないかと思いました。

あと、クリスチャン・ベイルはもっと役を選んだ方がいいです。



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原題 Terminator Salvation
監督 McG
製作年 2009


最後まで読んでくださってありがとう御座いました。


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