2011/09/28
【トイカメラ】法事が無事に終了したこと。 +ホルガを連れて宝ヶ池に行ったこと。 +冷たい熱波
法事は特にトラブルもなく無事に終了。去年の出来事をなぞるかのように当日はまた再び雨の日で帰宅ごろには小降りになっていたこと、法事の日を境にして季節が劇的に移行したことなど、まるで去年とそっくりで、一年前に帰ったかのような進行状態となってました。法事の日の数日前に、今度のは身内だけの狭い範囲で行うから、もう大層な喪服なんか着なくて良いんじゃないかなと父と云ってたのに、葬儀社の人に聞いてみると亡くなってからの初めての法事だから黒い服のほうが相応しいと云われ、結局は残暑真っ盛りの日にまた大層な喪服一式を切る羽目になりました。わたしは夏の間はどちらかというと裸族に近い感じなので、会場は冷房が効いてたとはいえもう早く脱ぎたくて仕方がなかったです。次は三回忌ということになるんですけど、三年後に行うものかというとそうではなくて、来年に行うものらしいですね。この辺の事情、意味合いはさっぱり分からないけど、一年間は神社に立ち寄ってはいけないというような慣習と同じようなものがあるのかもしれません。
法事が終わって、といっても取り仕切ってたのはわたしじゃなくて父のほうでわたしは云われるままに動いてただけなんですけど、それでもすべて終了したと思うと、なんだか緊張感というかそれなりにテンションがかかっていたものがことごとく緩んだような気分になり、残暑の日にフル装備の服を着たり、台風がやってきたり、気温が劇的に下がったりというようなことも重なって、頭痛、眩暈などに親しげに寄り添われることになり、しばらくダウンしてました。
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さて、何を書こうかと思い巡らすも、森山大道の展覧会は19日で終了してしまい、これまたモホイ=ナジの時と同じように時期はずれになってしまって、観にいった記録として残しておく意味合いしかなくなって急ぐこともないし、いまだあまり本調子でもないので、ここは今までに記事にしなかった写真でも貼ってお茶を濁しておこうかと思い至りました。この前の記事に夏に撮った宝が池の写真を貼ってるので、それ以前、5月頃に撮りにいった時の宝ヶ池とそのほかの写真を少し混ぜ合わせてみようかと。なんとなく一つ前の記事と連続性もでてくるから、単独で出せなかった写真も収まりが良いかもしれません。
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5月頃に宝が池に写真を撮りに行ったときに連れて行ったカメラは中国製のトイカメラであるホルガでした。ホルガはレンズがプラスティックのものとガラスのものがあって、わたしが持ってるのはプラスティック・レンズを装着してる120CFNのほう。買うときにプラスティック・レンズのものを選んだのは光がにじんだような写りになりそうだったから。プラスティック・レンズのほうが像の崩れも大きいかもと期待したんですけど、周辺域の流れ具合だとかドラマティックな写りになるのは意外とガラス・レンズのほうだったらしいです。なんだかガラスのほうがかっちりとした写りをしそうに思ってたんですけどね。
買ったのは実は一年位前のことで、でも仕様のあまりの弾けぶりと使うフィルムがブローニーというちょっと特殊なフィルムだったりすることで、カメラ本体は早々と手元にやっては来たものの持ち出す決意にいたるまでには時間がかかりました。
ブローニー・フィルムというのはスプールという軸に裏側に遮光の紙を貼ったフィルムがそのまま巻きつけられてるだけという、若干原始的な仕様になってるフィルムです。35mmフィルムのパトローネのようなケースに入ってないんですね。スプールに唯巻いてあるだけのフィルムなので、巻物を解くように緩めてしまうだけで感光してアウトになってしまいます。使い方も変っていて、巻き取り軸に巻いていくのはフィルム一般の使い方と同じなんですけど、全部露光し終わってもブローニーは元の軸に巻き戻しません。巻き取った軸ごとカメラから取り出して現像所に渡します。当然巻き取る側のスプールが無くなってしまう事になるんですけど、次のフィルムを入れるときに今までフィルムが巻かれていたスプールを巻き取り側に移動させて、巻き取り軸として再使用することになってます。つまりフィルムを全部使用してスプールだけが残っていても、これを使用済みのものとして捨ててしまったら、次のフィルムを巻き取る部品がなくなってしまうことになるんですね。でも最初は気がつかないで捨ててしまう人も結構いるんじゃないかなぁ。
とまぁ若干敷居が高そうなイメージのフィルムだったので、ホルガを買った当初はなかなかカメラに詰めるような能動的な気分には持っていけませんでした。ブローニーを始めて使ったのはハッセルブラッドのほうで、こっちで何となく要領が分かったのでホルガにも使ってみようといった気になった感じです。
さらに5月になってようやく外に持ち出したのにそれ以降ホルガを手にしてないのは、同じブローニーを使うハッセルブラッドに詰める機会が多くなったからでした。この夏はかなりの頻度でハッセルブラッドを持ち歩いてました。ハッセルに関しては凄いカメラなんだけど、とにかく重かったり、大きすぎるシャッター音とかちょっと引いてしまう気分がありました。でもこういう飛ぶカラスも振り返るようなシャッター音も意外とロケン・ロールな要素で面白いと思い初めて、そうなると、ハッセルブラッドを使うことに躊躇いもなくなり、ブローニーを使うとなるとホルガじゃなくてハッセルに詰めてるという感じに今はなってます。
でも、後に書くようにあまりたいしたものも撮れなかった宝ヶ池のホルガ写真を選ぶために眺めてるうちに、また使いたくなってきたので、今度ブローニーを詰める時はハッセルブラッドじゃなくて、またホルガに詰めてるかもしれません。

Nikon CoolPix P5100

Nikon CoolPix P5100
右側に巻き取りスプールが見えてます。左側にブローニー・フィルムをセットしてこの軸に巻き取っていき、フィルムが終了したら、巻き取ったフィルムをこのスプールごと取り出します。スポンジ状のものが見えてますけど、これはフィルムが軸に巻いてあるだけの状態なので、装着したフィルムが緩まないように抑えておくための部品です。はっきり云って隙間テープと同じものじゃないかと思います。ちなみにこのスポンジ、剥がれてフィルムと一緒に巻き込んでしまうことが割りとよくあるらしいです。
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トイカメラの二大巨頭といえば、このホルガとロシアの大衆カメラLOMOのLC-Aというのが一般的な認識だと思います。わたしは以前に書いたように、トイカメラに初めて関心を持ったのが今は無き洋書店ランダム・ウォークでやたらと楽しそうなカメラの一群を見たのがきっかけだったんですけど、ランダム・ウォークはたしかホルガを中心に品揃えしてたので、ずっとホルガがトイカメラの代表選手だと思ってました。一般的にはホルガよりもLC-Aのほうが人気があるというかトイカメラ的な認知度としては上になってるようです。
でも両方触ってみると段違いにホルガがおもちゃっぽい仕様になってることに気づきます。ホルガの破格振りと比べるとLC-Aは思ってる以上にまともなカメラ、露出がマジカルな転び方をするものの機能としてはきわめて普通のカメラにみえてくるくらい。
ちなみにLC-Aのほうは途中で写真に追記している使用カメラの表記から「+」の表示を取ってるのに気づいてるかもしれませんが、今わたしが使っていて、この前比叡山にも持っていったLOMO LC-Aは「+」無しのオリジナルのほう、今年に入ってから中古で4000円ほどで出てたものを買って使ってます。最初に使ってたLC-A+も中古で手に入れたものでしたが、なんと、しまっておくだけで気がついたら壊れてました。ホルガと比べるとトイカメラの頂点的なイメージととはいえ随分とまともなカメラに見えるLC-Aであっても、触れてもいないのに自壊するなんて、やっトイカメラの頂点を二分するに相応しいカメラなのかもしれません。
ホルガは遠めにみると割りと堂々としたカメラに見えないこともないですが、近くで見たらまるっきりプラスティックの安物感を濃厚に漂わせてます。内部を見るとカメラとしてはきわめて原始的な作りでシャッター以外はフィルムを唯ひたすら巻き上げるだけの機構しか備わってません。一齣分巻くとストップするような機能もなく、セットしたフィルムを一度もシャッターを切らずに最後まで巻き取ってしまうことも出来ます。どこまで巻き取ったかというのはブローニー・フィルムの裏側に数字が打ってあって、その数字が裏蓋の赤窓から見えるようになってるのを目安にします。赤窓に次の数字が出てくるまでフィルムを巻いて、数字が出てきたら巻くのをやめて撮影するという手順。フィルムを巻かずに何度もシャッターを切れば多重露光は簡単に出来るものの、シャッターを切ったら必ず巻き上げるというような自分の手順を決めておかないと、今の駒は既に撮影したコマなのかどうか絶対に分からなくなってきます。
ファインダーはレンズの位置から離れてるために結構な視差があったり、ファインダーの枠よりもかなり外側が一緒に写るというような代物なのであまり役には立たないです。こちらの方向を眺めてるということくらいしか示してくれない感じ。
シャッターは単速。絞りは晴れと曇りの切り替えになってるもののこれはホルガ本来の設計ミスで意味を成してません。カメラ本体レンズ奥に光が通る穴が開いていて、そこにそれよりも小さい穴を開けた部品を重ねることで入ってくる光の量を調節するという意図の設計になってるんですけど、なぜか切り替える部品の穴よりも本体の光を通す穴のほうが小さいので、穴の大きさを変えるための部品が意味を成さなくなってます。これ、ホルガの設計ミスとして有名なので作ってるところも知ってると思うのに、未だにこの仕様で作り続けてるみたい。わたしのホルガも露出は切り替えても何の変化もでてこないこのタイプのホルガです。
他にもストラップが付属してるのに、説明書にはこのストラップをつけると裏豚を止めてる金具が外れて蓋が開く可能性があるので、使わないでくださいって注意書きがあるし、ある意味未知の世界を覗き込んだような驚きはあるものの、製品としてどうかと思うような仕上がりになってるカメラです。
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当てにならないファインダーに、単速の、でも必ず一定の速度が出てるとは限らない、細い針金バネが妖しく弾いてるシャッターと、どんな天気でも変化させようがない絞りという、そんな、ほとんど制御不能でどういう風に写るかその場の運次第という驚異のカメラを持って宝ヶ池にいってみたわけです。結果は一つの記事に出来なかったくらい思わしい写真が撮れない結果に終わったというか、カメラの気まぐれがわたしが欲しい方向には働いてくれなかったというような感じでした。ブローニーは1ロールで12枚しか撮影できないので、出来上がる写真の絶対数が少なくなる分上手く撮れた数も少なくなる感じでもあります。
そんななかで気に入ったのがこの写真。なんだかこの写真を撮るためだけにこの日宝ヶ池に行ったのかもと思えるくらい、わたしには決まった写真になってました。

Holga 120CFN : Kodak Portra 400NC
宝ヶ池といってる割にいきなりちっとも池じゃない写真です。
宝ヶ池公園は京都の北のほう、国立京都国際会館に隣接する位置にある大きな池を中心にした公園です。池の周辺は遊歩道が設けられていてさらにその外周には森が展開してます。これを撮ったのは国際会館との境目にある石塀だったんですが、遊歩道からは間に木立を挟んで若干距離がある位置で、歩道を歩いてる時にこの赤い花に木立を抜けた陽射しがスポットライトのように当たっているのを見つけ、歩道から脇にそれ木立の中に分け入って写真を撮りました。確かにちょっと目を引くスポットだったけど、出来上がった写真がこんなに植物だけが浮き出したような形に撮れてるとは思わなかったです。背景の石垣がよく見えるような写り方だったらもうちょっと具体的なイメージになってたかも知れません。幻想的な写り方になって大満足。もう一度撮って同じように撮れるかというとおそらく無理だろうと思います。

Holga 120CFN : Kodak Portra 400NC
宝ヶ池なんだからと、池らしい写真を撮ろうとして撮った、池らしい光景。意図としてはもうちょっと幻想的に写したかったんですけど、植物のほうは思ってもみないほど幻想的だったのに、こちらのほうは意図とは反してあまり幻想的でもない感じ。
足漕ぎの青いボートに遊具的な具体的なイメージが強すぎるのかなぁ。ちなみにこの日、宝ヶ池には映画の撮影隊が来ていて、本来のボート小屋とボート置き場をまったく別の建物に仕立てていたので、本来の置き場に置けなくなったボートがこういう風にちょっと違和感を伴って別の場所に繋がれることになってました。この光景はこの日だけ世界に現れた光景で、もう一度撮影隊が来ない限り二度と出現しない光景なので、ある意味貴重かもしれないです。

Holga 120CFN : Kodak Portra 400NC
撮影隊が作ったセット。貸しボートの小屋という設定の建物のよう。当然後日行った時には手前の渡り板から何から何まで綺麗さっぱりなくなってました。近くに腰掛ける場所があったのでそこに腰掛けて近くにいる人の会話を聞いてると、撮影隊の大道具はあっという間にこの小屋を建ててしまったそうです。この方向から見た時だけ体裁を整えてるようなセットじゃなく、どこから見てもきちんと一軒の家になってる、おそらく中に入ってもそのまま映画のシーンに使えるような内装も備えた小屋だったような印象でした。

Holga 120CFN : Kodak Portra 400NC
撮影の準備を始めた撮影隊。これまたなかなか撮影が始まらないので、しびれ切らして帰ってきたんですけど、撮影中の写真も何枚かとっておいたほうがよかったかなぁ。撮影が始まったらカメラで撮るなんて追い出される公算のほうがはるかに高そうだけど。
邪魔と追い払われそうであまり近寄れなかったための手前の無駄な空間と、展開もしないでこじんまりと寄り集まってる撮影隊が手前にいるだけの証拠写真みたいなものの割りに、背景の森の映り方がなんだか無駄に深遠な感じがしてかっこいいんですよね。もったいない。
これも近くで見物していた人の話を聞いて分かったんですけど、この日撮影していた映画はどうもゲームが原作の映画らしいということ。帰ってから調べてみて分かりました。カプコンのゲーム逆転裁判を映画化するつもりらしいです。来春公開予定だそうで、この貸しボート小屋がどう使われてるのかちょっと興味があったりします。でもゲーム原作の映画というのは、ゲームは好きだけどゲームが元の映画となると行く気は半減するかも。
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宝ヶ池以外でホルガで撮っていたものにはこんな写真もありました。

Holga 120CFN : Kodak Portra 400NC
新京極と寺町通りの間にある路地の一本の光景。時間は夕方だったけど、それほど暗くもない時に撮って、この雰囲気。この人形の雰囲気にあってるといえばあってるんですけど、この青い光り方は一体どこから来たんだろうと撮った本人も予想外の出来上がり方でした。
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最後に、夏の初めの空の写真を撮って、夏の終わりに再び空の写真を撮ってみる。

Nikon AF600 : Kodak Portra 400NC
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Marian McPartland - Love For Sale
女流ジャズ・ピアノ奏者Marian McPartlandのボッサ・ジャズの演奏。クールなエレピの音がパーカッションのリズムに乗ってなんだか冷たい熱気を帯びたような不思議な感触の演奏になってます。後半4ビートになってしまうところがちょっとありきたりになってしまってるのがもったいない感じ。イギリス出身のピアニストでどこか端正なタッチがあるのはイギリス人だからなのかなぁ。
Antonio Carlos Jobim - Brazil
Brazilという曲名で通ってますが、正式な名前はAquarela Do Brasil。ブラジルの水彩画とかいう意味らしいです。わたしは郷愁感に満ち溢れたこの曲が大好き。ひょっとしたらブラジルの音楽の中で一番好きな曲かも。歌ものではジョアン・ジルベルトのアルバム「Amoroso/Brasil」に入っていたのがベストだと思ってます。Marian McPartlandに冷たい熱波なんていうキーワードをつけてみて思い出したのが、このジョビンの「Brazil」。ストーン・フラワーというアルバムに入ってるもので、このアルバムも割りと好きなアルバムだったりします。
ここでもエレピとブラジリアン・パーカッションの組み合わせです。エレピがやっぱりクールさを運んできてる?
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