2015/05/26
街の肖像画#14 跳躍する光 見切れ椅子 + Albert Watson 写真集「Cyclops」

光が跳ねる段差
2015 / 03 / Kodak SuperGold400

3つのカラフルな椅子
2015 / 01 / Fuji Natura1600
最初のは四条烏丸の交差点、三井ビルを地下道から上がってきたところ。二枚目のは確か大阪梅田の大丸、トイレに向かう通路にあった待合的な空間で、通路にちょっと顔を出していた色の塊が面白くて目を引いた場所でした。顔文字の |ω・`)チラ みたいなものも連想しました。
イメージは極めて断片的でいつものごとくあまり情緒が絡まない、乾いた撮り方になってます。クールな写真は撮ってみたいけど、これはクールというよりもドライという感じかも。もうちょっと情緒を乗せるほうがいいのかどうか、出来上がった写真はいつもどこか腑分けしてるような撮り方だなぁと思うところもあるんだけど、やっぱりこういうのが自分の世界を見る視線なんだろうと思ったりして視線は揺らぎ、そういう視線の揺らぎのようなものを写すのも、写せるものならば面白いのかなと思ったりもします。
それと今回の写真は何かがいろいろ足りないような気がする。シンプルというよりも物足りなさが先にたってる。
でも何が足りないのか答えが出てこない。
このところ「街の肖像画#~」なんていうタイトルで記事を書き続けてるけど、まぁいちいちタイトルを考えないですむのは楽ではあるものの、これ、全部の記事をこのタイトルにしてしまうと、個別の意味も乗らずに、全部同じならいちいちつける必要性もないわけで、やっぱりそれぞれに区別できるものをつけたほうがいいのかなと、ちょっと迷いが生じてる今日この頃。
前にも書いたけどタイトルとかつけるの本当に苦手。ひょっとしたら何を撮ってるのか自分でも判ってないんじゃないかと思うくらいある共通した意味合いで纏めるのが苦手だし、意味のありそうなタイトルをつけようとしても、その方向では有意味なフィールドに辿りつけないんじゃないかと思うものもあって、テーマで纏めると今回のような写真はどういう形で記事にしていいか分からなくなってしまいそうです。
とかなんとか云いながら、それなりにイメージに安定感が出るから、見たままの個別タイトルをそれぞれの写真にくっつけてみたりして。
☆ ☆ ☆
なんだか事あるごとに意味がどうのこうのって言う話題にふれてます。読み返してみて、対象と意味の関連とか乖離とか、自分の中で自分でも思わないほどシリアスな位置にあるのかも。
☆ ☆ ☆
アルバート・ワトソンの写真集「cyclops」です。アルバート・ワトソンの写真集としてはこれが一番最初に出たものらしくて、処女作にすべてが詰まってるなんて云う説に従うと、ここにはワトソンの写真のエッセンスが詰まってるといってもいいかもしれません。
まず「cyclops」って云うタイトルがかっこいい。写真集を見てみると怪物の姿なんてどこにもないし、その内容とはあまり関連してないようだけど、写真集のタイトルとしてはどんなコンセプトで撮られたんだろうと興味を引く意味深なタイトルではあります。
これは情報としては以前から知ってたんだけど、アルバート・ワトソンは生まれつき片目が見えなかったということで、でもこのタイトルとその事実がわたしの中で結びついたのは結構後のこと。気づいた時は、あぁ成程、とパズルピースが組み合い、所定の位置に収まった感じでした

生まれはスコットランドの人、奥さんの仕事の都合でアメリカにやってきて、もともと大学でデザイン関係の勉強はしていたそうだけど、ここで写真家としての自身のキャリアをスタート。のちにヴォーグやハーパースバザーなどで活躍することとなります。そう、活躍の場とした雑誌の名前で一目で分かるとおり、ファッション写真の分野で頭角を現した写真家の一人で、作品はファッション関連だけに留まらず広い範囲をカバーする活動になってるけど、どの写真もそのコアの部分にファッション写真の撮り手であることが明瞭に存在するような、クールでかっこいい写真が目白押しとなってます。
「cyclops」は全写真モノクロでファッション関連が主な活躍の場所ということもあるのか、ポートレートの写真が多いです。
わたしはポートレートって撮ったことないし、撮られた写真を見てももう一つよく分からないっていうのが本音のところで、可愛らしい、美人だ、くらいの反応はするけど、基本的にこの人、誰?って云うところで止まってしまうし、しわだらけの老人の顔とかいかにもイノセントな子供を出して、ヒューマニズムと絡めて何か言いたげで、分かった風な写真は、写真に人生なんか写るかよとばかりに大嫌いとくるから、基本的にはあまり馴染まない素材なんだと思います。
でもこの写真集に出てくるポートレートはファッション的なセンスに軸足を置いて、被写体となってる人物もクラプトンだとかクローネンバーグだとか、マイク・タイソンだとかキース・リチャーズだとか、デニス・ホッパーもいるし挙句の果てには坂本龍一まで分野を越えて有名人ばかりとなると、ポートレート不感症のわたしでも結構興味深く見ることが出来ます。
モノクロの質もトーン重視の人だとまるで版画だと拒否反応が出るかもしれないくらい、影は漆黒に沈みこんでエッジが効いた写真が多いです。ポートレートもオブジェの写真もそんな感じで、漆黒の影を作り出すための、モデルへのライティングとかは、モノクロのポートレートを撮ろうとする人にはかなり参考になるかもしれないと思います。ただ実際にやってしまうと完全にワトソンのコピー写真になってしまうのが落ちだと思うけど。


フィリックス・ザ・キャットの写真と、腕を出したドライバーの写真が凄い好きです。結構前に薬局の前のうさぎの人形の写真で、まさにこんな感じのを撮ったことがあるんだけど、後でこのフィリックス・ザ・キャットの写真見て、圧倒的な存在感の差にめげた事がありました。一体どこにこの存在感の差が出てくるんだろうと。結局自分のうさぎの写真は未だにここに載せてないんだけど、そのうち比較対象でさりげなく載せてみようかな。
ドライバーの写真はデザイン感覚の勝利っていうところ。リアルな空間は色々と雑多なものが存在してるから、その雑然としたところから、こういうシンプルな切り取り方が出来る発想力はもう単純に凄いとしかいいようがない。デザイン方向にのみ突出させたソール・ライターって云う感じで、より街中でのスナップショットにシフトした位置で、斬新なデザイン感覚を持ち込んだ、そのソール・ライターの写真も好きだし、絵的な構成力が際立ってるのがやっぱりわたしの気を引くようです。
もう一つ、全体にクールでかっこいいイメージの写真集なんだけど、その印象に一役買ってるのがデヴィッド・カーソンが担当したタイポグラフィーのセンス。まさにプロフェッショナルになるべくしてなった才能って云うのはこういうものだろうと思わせるセンスは表紙のデザインから全開状態になってます。写真もそうだけどこういう写真を引き立ててるセンスもこの写真集の特筆すべきところなんじゃないかと思います。
実はこの写真集、オリジナル以外にコンパクト版も存在していて、このアマゾンリンクのものは商品情報だとオリジナル版のようだけど、レビューを見るとコンパクト版のレビューも混じりこんで、一体どっちの版か分からなくなってます。
ここで買うのは、どのバーションがやってくるかが分からないので、ちょっと危なっかしいところがあります。
当然オリジナル版の大きな本のほうが写真を十分に見回すには最適で、コンパクト版は予想以上に物足りないんじゃないかと思います。
それとドイツ版と英語版、フランス語版があって、ドイツのほうがオリジナル本流らしいんだけど、レアなのは英語版。わたしのは英語版のオリジナルで、入手するならこれが一番いいんじゃないかと思います。