2015/09/26
夏のスケッチ + Saul Leiter - early color

sale
2015 / 09 / Olympus Pen F + F.Zuiko Auto-S 38mm f1.8 / Kodak SuperGold 400

on the corner
2015 / 09 / Olympus Pen F + F.Zuiko Auto-S 38mm f1.8 / Kodak SuperGold 400
ジャズの曲名でタイトルをつけようと思ったけど、関連付けられそうなタイトルなんていう縛りをかけたら、マイルス・デイビスのアルバムのタイトルを思いついただけで、他はまるで頭に思い浮かばない。saleのほうはlove for saleなんていうのが頭に浮かんだけど、単に単語が一個、一致してるだけでした。
ジャズのお気に入りのアルバムをピックアップして、そのアルバムに収録されてる曲、全曲のタイトルからその曲の数だけ何か写真を撮ってみるっていうのも思いついたものの、こんな体たらくではあっという間に却下となりました。
わたしの大好きな曲「My Foolish Heart」、このタイトルだけでも写真にしろといわれたら途方にくれるばかりとなるのが目に見えてます。そう考えたらレコードのジャケット作ってた人とか、凄い才能だったんだなぁと今更の如く感心します。
☆ ☆ ☆
前回のフィルムの続き、同じくPen Fで撮っていた写真。
ティルマンス展に行った日以降に、またあの辺りへ出かけて撮ったものです。
最初のショーウィンドウの写真が、写ってるものはなんてことのないものなんだけど、何か雰囲気があってお気に入りです。コーナーの俯瞰写真はかっこつける方向としては結構ありきたりな感じがするかな。
☆ ☆ ☆
フィルム機のPenはレンズ固定のレンジファインダーが中心の展開になっていたけど、一機だけレンズ交換可能な一眼レフタイプの「F」というのがありました。

その一眼レフタイプのPenにもいくつか世代があって、わたしのFは初代のモデルです。初代の特徴はボディにFのアルファベットの花文字が刻み込まれてること。初代は二回巻き上げしないと撮影できなかったり、露出計がついてなかったりするモデルだからあまり人気が無いようだけど、露出は単体の露出計を持ってるからそんなことはまるで問題にならず、露出計を持ってなくても晴天順光は感度400でシャッター1/1000、絞り8を基準に日陰なら三段開くとか、体感露出で撮ることができる。二回巻き上げも、だからといってどうなんだといった程度のことなので、その程度の違いしかないんだったらこの花文字がついてる機種のほうが持つには絶対にいい。装飾的で持っていて楽しい。わたしは装飾的なものとかわりと好きなほうで、クラシックカメラだと、Exakta Varex VXなんかが一度持ってみたいカメラです。まるでアンティークの道具みたいで、なおかつメカニカルな、スチームパンク・カメラ。
塗装がはげてたから手を出してないけど、京都のカメラのナニワに委託品が一台置いてあるのを知ってます。
ただPenFはレンズ交換ができるといっても、なぜか今の時代レンズそのものが、終わったシステムとしてはかなり高価になっていて、特に広角のものなんかは手が出しにくくなってます。レンズそのものもそれほど市場で見たことがないし、ひょっとしてアダプターを介してデジカメで使うために買ってる人が多いのかなぁ。
だからわたしの場合はレンズ交換できるといってもPenFのレンズはこの標準のと、なぜかこれだけは安価で売ってる100mmの望遠レンズしか持ってません。でも、広角は今もって惑うことのほうが圧倒的に多いわたしの撮り方でいくと、これで十分っていう感じです。
デジタルのPenも、説明書を最初のほうだけ読んだまま放置してるのを一台持ってます。これはでも名前と全体のカメラデザインを受け継いでるだけで、ごく普通のデジタルカメラだし、ハーフカメラとしてのPenはやっぱりフィルムカメラとして存在し、終焉したといってもいいんじゃないかと思います。
だって一番の特徴である縦位置のファインダーがデジタルには実装されてないんだもの。縦構図の対象化こそがハーフカメラのレゾンデートルだと思ってるわたしには、これはありえないです。
とはいうものの、たとえデジタルのPenでオリジナルPenの完全再現とばかりに液晶が縦位置になっていたとしても、馬鹿げてるからわたしは手を出さないと思うけど。
☆ ☆ ☆
このところPenの話題に絡めて、縦構図縦構図とやたらと口にしてるので、縦構図の魔術師、というほど大げさでもないんだけど縦構図好きの琴線に触れるに違いない写真集を一冊。


ソール・ライターの1940年代中ごろから60年代にかけて撮られたカラー写真を集めた写真集、「アーリー・カラー」
ソール・ライターはアメリカの写真家で、もとはファッション写真の分野で仕事をしていた人。でもファッション写真の業界というか写真のあり方に馴染めないところがあって、しだいにその分野から身を引くようになり、やがて表舞台からは消え去ってしまうことになります。もともと名声とか写真家としての成功などにほとんど関心がなかったとも云われてるけど、そういう気質も自らフェードアウトしていったことに関係していたのかもしれません。
再評価のきっかけになったのがこのシュタイデル社が出版した「アーリー・カラー」という写真集で、この本はなかなか手に入らない希少本になってたんだけど、今は再刊されて手軽に手に入れられるようになってます。ちなみにシュタイデル社はドイツの小さな出版社。世界一美しい本を作ると云われる出版社で、ここから著名な写真集も数多く出版されてます。
写真集ってかなり有名な写真家のものでもあまり売れないのか、大抵初版だけ、それを逃したら手に入れるのがかなり困難になるというのが多いです。そんな中、ソール・ライターのこの写真集は再版されたわけで、一般的に今でも名前はほとんど知られてはいないと思うんだけど、一部ではあれ伝説的な写真家としての熱狂的な支持はあったんじゃないかと思います。わたしはまだ見たことがないんだけどソール・ライターのドキュメンタリー映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」というのもあるそうで、こんな風な映画って思い入れのある人がそれなりにいないと作られないです。
写真の特徴はとにかく縦フレーム。もちろん普通の横長フレームのもあるけど、印象的なのは圧倒的に縦長のフレーム。
そしてその縦構図の中に詰め込まれた、斬新な構成力といったところかな。
切り取り方はかなりユニークで洒落たものがあり、こんな撮り方は思いつかない、なんてかっこいい把握の仕方だろうって思いながらちょっと嫉妬心交じりでページを繰るような写真集でした。被写体はほぼ全部が都市、おそらくソール・ライターが生活していたマンハッタンだと思うけど、そういう都市の詩情とでも云ったものを、ユニークな視点で切り取ってます。詩情あふれるといっても、絵画的な構成力だとか色の配置だとかが最前面に出てるから、被写体の内情にあまり深入りしないような、硬質のリリシズムといったものに留まってるのもわたしのお気に入りのところ。
反面、被写体の変化は乏しく、おそらくソール・ライターの好みなんだろうけど、水気で曇った窓越しとかガラスの反射とか雪の日だとか、わりと大きなカテゴリーで纏められるようなところもあって、ユニークなんだけどイメージの展開はちょっと単調という印象もある写真集でした。
わたしはもう一冊ソール・ライターの本を持っていて、これは写真だけじゃなく活動の全貌を俯瞰するような本で、写真集としてみるにはかなり不足感のあるものだったんだけど、この本にはソール・ライターの描いた絵画も纏められてました。
ソール・ライターの出発点は写真じゃなくて絵画。もともとニューヨークへ行ったのも画家を志してということでかなり絵画志向があります。
絵画のほうは、同じく絵画志向の写真家で、モノクロが当たり前だった作品的な写真にカラーを使うことを一般化させたニューカラーのウィリアム・エグルストンが描いていたような、気まぐれで得体の知れない抽象画といった印象だったけど、明示されないまでも写真のほうにもその志向は確実に出てきてると思うし、わたしがソール・ライターの写真に惹かれる大きな要因になってるんだろうと思ってます。
数点だけだけどこの「アーリー・カラー」の写真を紹介したものがYoutubeにありました。ビル・エヴァンスの音楽付きで、音楽がつくと詩情倍増って感じになりますね。
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締めにもう一枚。

ラバーダック
2015 / 09 / RICOH GR Digital 3 + GR LENS 6.0mm f1.9
今回はこれでお終い。