2008/11/04
【邦楽】 ふしあわせという名の猫 - 浅川マキ
60年代後期の頃の新宿、状況劇場や天井桟敷などのアンダーグラウンド・カルチャーの持っていた独特の雰囲気が、人の姿をして立ってるような歌手です。映画でいえば大島渚の「新宿泥棒日記」に写しとられてるような空気感。アンダーグラウンドっていうよりもアングラのほうが相応しいかな。もっとも当時の新宿なんて行った事もなければ、アングラをそのまま体験したこともないので、大きなことも云えないんですが。
寺山修司に見出され、68年に新宿の「蠍座」でワンマン公演をしたのが人に知られるきっかけ。あとは口コミで拡がり、知名度が上がっていったそうです。
この「ふしあわせという名の猫」が淺川マキのデビューだと思ってたんだけど、調べてみたらデビュー曲は別にあるようです。一般に知られるようになるのはセカンドの「夜が明けたら」くらいからなのかな。それで「ふしあわせという名の猫」は3枚目のEP「ちっちゃな時から」のB面でした。
70年前後の時代の雰囲気そのままの人なので、時代は移り過ぎて、懐メロみたいな企画で出てこれるようなタイプの歌手でもないから、すっかり消えてしまったと思ってたら、新譜こそ10年くらいは出してないけど、歌手活動は今も続けてるそうです。
☆ ☆ ☆
元はビリー・ホリディとかのジャズやゴスペルのようなスタイルから出発して、適度に歌謡曲の雰囲気も織り込んだ結果、新宿アングラ的な風貌に仕上がってるような、そんな感じの歌を歌ってる人のように思えます。
いつも黒尽くめの衣装を着て、とにかく「黒」という印象の歌手です。
「ふしあわせという名の猫」は内容はボッサ的な浮遊感や、どこかほの明るい感触があって、どちらかというと土臭かったり、暗く淀んだようなのが多い淺川マキの歌のなかでは、他とはちょっとニュアンスが異なった印象を持って好きな曲になってます。
確かこの歌、作詞が寺山修司だったような。
☆ ☆ ☆
ふしあわせという名の猫 - 浅川マキ
2017年1月変更、補講。
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コメント
昔、「寺山修司詩集」なるものを愛読しておりました。
この時代の躍動感って、すごいですよね!
アメリカでは、ベルベット・アンダーグラウンドとアンディ・ウォーホールのコラボだったり・・・
奇をてらう芸術が、地下ではびこっておりました。
ある意味、今よりずっと自由だったのかもしれませんね。
パンクな時代・・・そんな言葉が似合う気がします。
2008/11/05 01:08 by とも URL 編集
ともさんへ
わたしも寺山修司の本、持ってましたよ
イメージの喚起力が強い言葉を選んだりするのが上手かった人ですよね。
短歌とか読みなれない類の本だったのに、頭の中に鮮烈なイメージが湧いてきて嘘みたいに面白く読めた記憶があります。
ともさんはルー・リードとかも聴かれます
60年代頃のアートはポップ・カルチャーが台頭してきて、いろんなものと混ざり合い、混沌としていて面白いですよね。
ビートルズがサイケデリックやってたのもちょうどこの頃だし。
こういうわけの分からないエネルギーの渦みたいなのは今はあまり見かけなくなりました。
確かにこの頃だって、セックス・ピストルズなんかの時代に負けないくらいパンクな時代ですよね。
コメント有難うございました☆
2008/11/05 08:46 by 薄荷グリーン URL 編集
地下劇場にアングラ、うーん何ともいえない響きですね。
淺川マキ、名前は聞いたことありましたが、曲は今回初めて聴いたかもしれません。
気だるい感じがいいですね♪寺山修司は触れたことがなく正直わかりませんが、個性的で魅力ある歌手という感じがします。歌謡曲にはない魅力ですね。
この時代に詳しい訳ではないのですが、思い出すバンドでサディスティックミカバンドがいます。「黒船」というアルバムから聴き出したのですが、70年代初頭からこんな音を出すバンドがいたんだ!と驚いた記憶があります。結成当初に出した曲で今聴いてもアバンギャルドすぎるのがあって凄いです。
実はこの頃が一番音楽の面白い時代だったかもしれませんね。90年代の音楽火付け役は墜落しちゃったし・・・(笑;)。
ガツーンと応援いきますよ♪凸
2008/11/05 20:24 by umetraman URL 編集
umetramanさんへ
アンダーグラウンドよりもアングラのほうがどことなくいかがわしい響きで良いですよね。
淺川マキ、気に入ってもらえましたか?でもこの人の曲は陰気臭いから、長時間聴いてると気分は真っ黒になります。
この頃はいろんな価値基準に揺さぶりをかけて、今からは想像できないくらい混沌として面白かった時代みたいです。
サディスティックミカバンドは当時日本のミュージック・シーンでは新しさでは突出してたようですよ。海外の評価の方が高かったんじゃないかと思います。確か高橋幸宏がドラムやってたんですよね。
何年か前に加藤和彦の映像観たことありますけど、完全に老人化の過程にあってちょっと愕然としました。ロック・バンドをやってた人が年食っていくのを見るのは何だかやるせない感じがします(´・ω・`)
90年代の音楽火付け役は、全盛期の時にはこんな終わり方をするとは誰も想像できなかったでしょうね。あの、全部独り占めにしてたような人が借金生活に落ちてたというのからして信じがたかったです。
いつも応援とコメント有難うございます♪♪
2008/11/05 23:51 by 薄荷グリーン URL 編集
浅川マキですね。私はあの時代は、どうしても壁を感じます。余りに感性が露骨過ぎて・・・。
「黄昏のビギン」ですが、私は水原弘のほうが好きです。ちあきなおみを聴いて、
こんなに優しい歌だったのかと、驚きました。粋でシャレた曲だと思っていたので・・・。
2008/11/06 22:06 by よーじっく URL 編集
よーじっくさんへ
黄昏のビギンはYoutubeに水原弘のもあったんですけどね、ちあきなおみのほうが馴染みやすいと思ってこっちを選択することにしました。
水原弘のはパーカッションが良い感じで入ってきたり、歌の上手さも良く分かる仕上がり、ちあきなおみはこのTV番組だけのことかもしれないけど、オーケストラの編曲やギターの歌わせ方が結構好きです。
他には夏川リミが歌ってたのと、前川清のものがありました。
夏川リミはこの歌に関しては完全に解釈違いでよくなかったです。
前川清のは、ギターとピアノが意外にかっこよかったです。
こんなこと書いてるよりも、全部ここに貼ってみましょうか。
2008/11/06 22:22 by 薄荷グリーン URL 編集
コメント、ありがとうございました
この方、名前は知っているのですが、詳しい知識がありませんでした
お恥ずかしい
That Means A Lot・・・確かに単調で、看板になるようなフレーズがない感じは否めませんね
2008/11/06 22:45 by つかさ☆ URL 編集
つかさ☆さんへ
いつもご訪問有難うございます。
淺川マキはやはり、時代に拘束された歌手なんでしょうね。耳にする機会なんてまずないだろうし。
ポールのあの曲、これ以上いじれなかったっていう感じはわたしも感じました。さすがのポールも何か煮詰まったみたいな状態に陥ってしまったんじゃないかっていう気がします。
実はわたし「Tell Me What You See」も結構好きなんです(^^;
でも一般的にはこの曲評判悪いですよね。
あまり耳にしたことないような曲を紹介してもらって面白かったです
こちらこそコメント有難うございました。
2008/11/06 23:20 by 薄荷グリーン URL 編集
水原弘もビギン(ダンスのリズム)も、今は全く知らない人ばかりだと思います。
浅川マキの時代は、時間の密度が今の倍以上あった感じですね。だから、暗さも訴求力は強烈。巻き込まれてしまうのが怖くて、コチラが壁を作っているんだろうと思います。
寺山修司なんか、知ってしまうと、否定できないし、逃げられないですよ。(^^ゞ
2008/11/06 23:21 by よーじっく URL 編集
よーじっくさんへ
わたしもこうやって並べて聴き比べしてみると、水原弘の上手さが際立ってる感じに思えます。
この曲、歌うのは結構難しそうですね。前川清でさえも四苦八苦してるように見えるし。
これ浅川マキの後ろにくっつけておくには分量多すぎみたいなので、新しい記事で立て直そうかな。
淺川マキも聴き過ぎると妙な暗闇に囚われてしまいそうだし、寺山修司もよーじっくさんのおっしゃるように深入りしてしまうと逃げ場がなくなる感じがありますよね。
東北というか日本人の土着の感覚にある得体の知れないものを、ああいうイメージの塊みたいな言葉で浮上させた作家って未だに寺山修司唯一人。ユニークであることは間違いなしの人でした。
コメント有難うございました☆
2008/11/07 13:03 by 薄荷グリーン URL 編集
No title
かかって来る訳ですから。 日本が、別の世界に入った様な妙な感じ
を受けました。 浅川マキのことは、すぐに わかりました。 多分、
友人に 知ってる奴が居たのでしょう。 ここに有る曲は、みんな知っておりますが、今度は、なぜ知っているのかがわからない。
とても、昔の話です。
2008/12/17 15:16 by k-ochi URL 編集
k-ochiさんへ
浅川マキは本人はひょっとしたら歌謡曲として歌ってた部分もあったかもしれないけど、それでも純正の歌謡曲に混じればちょっと異質だったかもしれませんね。
ここに投稿した曲全部ご存知ですか。でもなぜ知ってるのか分からないって何だか不思議な話ですね。わたしには良く分からないですが、そのお友達経由で聴かれたって云うことじゃないんですか?
ご訪問有難うございました。また良ければ気軽に立ち寄ってみてください。
コメント有難うございました ☆
2008/12/18 01:09 by 薄荷グリーン URL 編集