【洋画】 ニューヨーク1997

1981年公開の映画です。だからタイトルにある「1997」というのは公開当時から見て近未来の話ということなんですが、今や完全に過去を示す年号となってしまってます。
癖のある俳優というか、妙に豪華な俳優が出てる映画でもあります。わたしにとっては特に、ドナルド・プレザンス。「大脱走」の偽造屋で、ジェームス・ガーナーに助けられながらドイツ軍から逃げる役が印象に残ってる俳優です。さらにB級映画の帝王とも云うべき人でもあって、胡散臭いホラー映画なんかでよく顔を見るけれど、思いのほか堅実な印象の俳優でした。この映画では大統領役です。

☆ ☆ ☆

1997年の近未来、犯罪者の増加に頭を悩ましたアメリカは、マンハッタン島全域を監獄にして、そこに犯罪者を放り込んで隔離するという方針をとっていた。マンハッタン島の周囲は高い壁で覆われ、島から壁に向かう道路には爆薬が仕掛けてあって、一度この監獄に放り込まれれば逃げ出すのは不可能。壁の内部は犯罪者による治外法権の場所となっていた。

そういう状態の島に大統領の乗る専用機が墜落、大統領は命は取り留めたものの、このマンハッタン監獄に一人放り出されることになる。
マンハッタン監獄を牛耳る犯罪者デューク(アイザック・ヘイズ)は墜落した大統領を捕まえ、その捕まえた大統領を使って、監獄からの解放を要求してきた。
サミット終了までに大統領を救い出さなければならないため、特殊部隊司令官のボブ・ホーク(リー・ヴァン・クリーフ)は昔の同僚で今は犯罪者になってしまってるスネーク・プリスキン(カート・ラッセル)を呼び寄せ、今までの罪を帳消しにすることを条件に大統領救出の任務を与えた。
スネークは感染防止薬の注射と偽られて首に爆薬を埋め込まれ、サミット終了というタイムリミットまでに任務をやり遂げられなければ埋め込まれた爆薬が爆発するという条件で、たった一人、犯罪者の巣窟となってしまったマンハッタン島にグライダーで降り立つことになる。爆発までのタイムリミットは22時間。

島に降り立ったスネークは島を流してる運転手キャビー(アーネスト・ボーグナイン)と知り合い、そのままでは近くにも寄れないデュークに近づくために、キャビーの勧めで、デュークの傍にいることを許されてるブレイン(ハリー・ディーン・スタントン)に会いにいくことになる。

ブレイン経由でデュークの元に近づいて、大統領を発見。スネークは大統領を救出しようとするがデューク側に発覚して、囚われることになってしまう。そしてその後、捕まったスネークはリングに上げさせられて大男とのデスマッチを強要される。

デスマッチに勝利したスネークは大統領救出にも成功して、キャビー、ブレイン、その情婦マギー(エイドリアン・バーボー)とともに島を脱出しようとグライダーの直陸地点のビルの屋上に向かったものの、島の犯罪者集団によってグライダーはビルから落とされて、使い物にならなくなった。

島からの脱出ルートは爆薬だらけの道路を通って壁まで辿り着く以外には無くなってしまい、爆薬の地図を持ってるブレインを頼りにキャビーの車で壁に向かおうとするが、背後からはデュークが迫ってきていた。

☆ ☆ ☆

この映画は設定がいいんですよね。
高い壁で周囲を囲まれ、脱出不可能になってるマンハッタン島監獄だとか、マンハッタン島内部で跳梁跋扈する異形と化した犯罪者だとか、首に埋め込まれて22時間後に爆発する爆薬だとか、多勢の犯罪者対たった一人のアウトローとか、もう、いろんなものを含みこんでるようなわくわくする設定。「遊星からの物体X」も設定が上手かったし、カーペンター監督というのはそのままの状態でもこういう「物語」をいっぱい含んでるような設定で映画を撮ることが結構気にいってるのかなとも思ったりします。

それで、脚本家はこの含みの多い設定を注意深く観察して、その設定が内に持ってる「物語」を引き出せばいいだけだったんだけど、実はこの映画、この段階であまりうまく物語を引き出せていないような感じです。この魅力的な設定なのに、内容は非常にあっけない展開で終始します。

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ボブ・ホーク率いる強襲部隊がまず最初にマンハッタン監獄に侵入して、大統領救出を試みるんですが、そのボブ・ホークの前に現れるデュークのメッセンジャーのパンク野郎がこれまたいかれてて、切断した指をボブ・ホークらに見せ「30秒で戻らないと大統領は死ぬ」としか云わない。何の交渉も受け付けずにカウントダウンを始めるだけという相手をまえにして、ボブ・ホークの強襲部隊は引き下がる他がない。
このパンク野郎がでてくることで、観てる側はマンハッタン監獄の中の犯罪者連中のいかれ具合を予想してわくわくしてきます。どんな凶悪なやつがこれから目の前に立ち塞がってくるんだろうって。

その後、部隊で行動を起こすのは不可能と判断して、一匹狼のスネーク登場に繋がっていくんだけど、きな臭い雰囲気一杯に登場してくるスネークがたった一人で夜の中をグライダーで飛び、マンハッタン監獄に潜入した辺りは物語がどう展開していくのか固唾を呑んで画面を注視してるものの、潜入後のスネークの取る行動は何時までたっても意外とアクションすること無しに場面を移動してるだけだし、出来事も何だか希薄でなだらかに続いていくだけという感じになってくる。

たとえば、スネークがブレインに初面会するシーン。会って初めて、スネークはブレインが知り合いで、昔裏切られた人間だったことに気づきます。そういう関係だった相手だから、ひと悶着ありそうな展開なのに、昔の恨みでごたごたしそうな雰囲気だったのに、銃で脅すスネークに対してブレインは協力するのをあっさりと承諾。以後そんな確執があったとは思えないくらい一緒に協力して行動することになります。
あっさり仲間になるもんだから昔いざこざがあった人間と一緒に行動してるという違和感の描写もなく、結局それはハリー・ディーン・スタントンなんていう良い俳優を使ってながら、ブレインの人間の描写の弱さにも繋がって、あまり印象に残らないような結果になってます。

マンハッタン監獄のいかれた犯罪者も最初のパンク野郎が出てきただけで、それより凄いいかれ具合のやつなんていくら待ってもその後ちっとも出てきません。

ラストシーンの爆薬を仕掛けられた道路を車で疾走していくクライマックスも、どんなチェイス・シーンがあるかと思えば、かなり離れた位置でデュークが一人で追ってくるだけ。
手下を山のように従えて、普段は近づくことも出来ないマンハッタン島監獄のボスが、クライマックスの追跡にたった一人で繰り出してくるなんて、絵的にも寂しすぎます。

いささか古くなってしまった映画というのを割り引いても、きちんと耳を済ませていれば豊かな物語を勝手に語りだすような設定なのに、そこからうまく物語を引き出せなかった映画という印象はやはり残りました。

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アウトローっていうのはいつの時代でもアンチ・ヒーローみたいにかっこよく感じます。全てのしがらみ、束縛から自由な存在、なりたくても現実には絶対になれないからよけいにかっこいいんですよね。
この映画のカート・ラッセルはまさにそのアンチ・ヒーローであるアウトローそのものでした。アイ・パッチをしてる風貌からしてもうそのままアウトローを絵で書いたような感じ。
でも、なんだか演出が弱くて、スネークのアウトローぶりはかなりカート・ラッセルの存在感に頼ってたような感じがしました。

自分のこと以外は頭にないという非情ぶりも、救出した大統領に最後に問いかける言葉やカセット・テープを引きちぎった件の、妙に人情味を出したエピソードでぶれてしまった感じでした。
非情に見せながらも人間的な部分も垣間見せるというキャラクターも有りだとは思うんだけど、この映画の場合は最後だけ急に良い人になったみたいで、どうも居心地が悪い。
あと、これは演出の弱さになるのかどうか、スネークは頻繁に腕の時計を確かめるんですよね。
爆薬が爆発するまでの自分の命の時間を確かめてるのは十分に理解しながらも、残り時間気にしすぎて神経質な印象の方が勝ってしまい、スネークの屹立したアウトローぶりとはあまり上手く溶け合ってなかったような感じでした。
カート・ラッセルの存在感で見せてるけど、演出のぶれも含めて、人物造形は意外と浅い印象です。

それと、悪役デュークのキャラクターも浅かった。監獄内部のうわさでは極悪非道のようなイメージを持たせる感じだったのに、大統領を壁に立たせて銃で威嚇射撃をして遊ぶくらいで特に非道な行為もなく、悪役のキャラクターが薄いのはこういう映画ではちょっと致命的な感じでした。

リー・ヴァン・クリーフがキャラクター造形ではよく出来てた感じだったかな。「夕陽のガンマン」なんかに出てくる悪役俳優なんですが、スネークの首に爆薬を埋めるようなことを何のためらいもなくやってしまう反面、元部下のスネークを信頼してる部分も確かに併せ持っているような人物。この映画では一番キャラが立ってた人物かもしれません。

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ニューヨーク1997 (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第4弾)ニューヨーク1997 (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第4弾)
(2008/08/07)
カート・ラッセルリー・ヴァン・クリーフ

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Escape From New York Original 1981 Trailer


原題 John Carpenter's Escape from New York
監督 ジョン・カーペンター
公開 1881年


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コメント

最後は、たくさん追いかけてきたら、タイムオーバーになるので、デュークだけにしたんです、きっと(笑)。カッコいい映画というより、おかしくて笑えて大好きです。ドナルド・プレザンスさん、「ハロウィン」にも出てましたね。禿げ頭に金髪の鬘を被らされたり、散々でしたが、おかしかったです。
タクシー運転手が登場しますが、「トータル・リコール」を観たときに似てる~と思ったんですが・・・

ホラー映画って、いろんなのがありますね。予想以上にたくさんコメントいただいたのでびっくりしてます。恐怖描写も、やりすぎると、コメディみたいになってしまいますし、中途半端だと面白くも怖くもないので、さじ加減が難しいですね。カーペンター監督のは面白いですね。音楽までご自身でやる(予算の都合か、それとも好きなのか?)ことも多いみたいですが、怖さとおかしさがすれすれの所でバランスをとってる感じが好きです。

なんか、スッゴイ興味をそそられました!彗星さんのレビューってほんと感心します。
リリコより引き込まれますねw

Whitedogさんへ

こんにちは!

確かにデューク一人相手で残り1秒でしたか、そんなタイミングの爆薬解除でしたよね。
一杯来られたら、スネークはまずアウトは確実なところでしょうね(笑
ドナルド・プレザンスって監督の要求には全身を持って応えるってところがあるんでしょうか。割と律儀そうな人には見えるんですけど。
何の映画だったか、誰の証言かも忘れましたが、最後まで演じたのにドナルド・プレザンスは脚本を何も理解してなかったっていう話、読んだことがあります。

「トータル・リコール」のタクシーってあの妙な等身大人形のやつですか。あれだったら確かに似てますよね、ボーグナイン(笑
太い眉毛にギョロ目で、見方によったら人形っぽい外見ですもんね。

わたしはこの映画、冒険SF小説みたいなのを期待して観ました。だから正直ちょっと食い足りないところがありました。食材は豪華なのにB級グルメ料理に使って、それなりに美味しいんだけど、もったいないなぁって云う感じとでも云うんでしょうか。

「サハラ」もカッスラーの原作は冒険小説として面白く読めるのに、映画になったらどこか荒唐無稽な馬鹿げた映画になったのを思い出しました。この映画は原作は無いにしても、リアルな絵にしたら荒唐無稽な形で出てくる要素って、こういうタイプのお話では結構ありそうですね。

音楽は、予算の都合を口実に、おそらく自分の楽しみでやってるんだろうと思いますが、どことなくゲーム音楽みたいです。わたしはゲーム好きなので、ニヤニヤして聴けますけど。

コメント有難うございました ☆

もじゃもじゃのっぽさんへ

こんばんは!
気が向いたら、ぜひご覧になってください。カート・ラッセル、かっこいいですよ。
ゲーム「メタルギアソリッド」のスネークは、このカート・ラッセルが演じたスネークを元にしてるらしいです。

ところで、リリコって何ですかv-361

コメント有難うございました ☆

こんばんは!
これって結構役者が揃っていたのですね。ドナルド・プレザンスは出てくると何故か安心できる印象がありました。でも、ここでは捕まった大統領役ということであまり安心はできそうもないですね。この人、博士っぽいイメージがあるのですが(笑)。
その他にも沢山の役者が出ていたのですね。B級的に豪華な顔ぶれだと思います(笑)。
マンハッタン島そのものが閉鎖されて巨大な監獄になってるという設定はそそるものがありますね。その後のカーペンター作品のことを考えると、ちょっと感覚がズレちゃったのか確かに残念なところはあったと思います。やっぱりカーペンターには『遊星からの物体X』とか『ゼイリブ』みたいな、あまりスケール感がない分濃厚なホラー系映画がいいですね♪
そういえば、近々公開される『デスレース』も監獄島が舞台になるのですよね。話は全然違うのですが(笑)。

ガツーンと応援いきますよ♪凸

umetramanさんへ

こんばんは!

ドナルド・プレザンス、確かに博士のイメージあります(笑
ドナルド・プレザンスもせっかく大統領役を貰ったのに、この映画の大統領役って、薄汚れた格好で廃墟を動き回ったり、壁の前に立たされて銃撃で弄ばれるようなシーンしかないので、大統領的に見えるところってほとんどないんですよね。

マンハッタン島監獄や、監獄の中は完全な無法地帯といったようなアイデアは秀逸だと思うし、もちろんB級テイストで面白く纏めるのもいいんですが、アイデアの使い方としてはやはりちょっと勿体なかった感じがします。
今のところ、お化け屋敷みたいな映画が好きということもあって、「物体X」が一番という感じです。


「デスレース」って、この前おっしゃってたポール・アンダーソンのやつですよね。監獄島なんていうのが出てくるんですか。ポール・アンダーソンの映画だと分かっていながら、期待値がまた上がってしまいそうです。

ガツーンと応援、そしてコメントを有難うございました ☆
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