【洋楽】 Cliffs of Dover - Eric Johnson

ブルース好きの人ならエリック・クラプトンとロバート・ジョンソンを足して2で割ったような名前と思うかもしれないけど、だからと云ってブルースに傾倒したミュージシャンというわけでもありません。
王子様風の風貌だからと、そのアイドルのような外見から軟弱な演奏を連想すると大間違いで、実は超絶技巧派とでもいうのか、そういうカテゴリーに属するようなギタリストの一人です。
これだけの凄腕なのに、わたしの感触では、日本ではあまり知名度が高くないような感じがします。同じく技巧派のギタリスト、ジョー・サトリアーニが主催する、自らと他のギタリスト2人が競演する「G3」ツアーにも参加したことがあって、こういうロック・ギターが好きなリスナーには知られてるようなんですけどね。
「G3」的なものに関心が無い層にはあまり名前が広まっていかない。

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1954年、テキサス生まれ。74年にプロとしてのキャリアをスタートさせてます。
元はスタジオ・ミュージシャンで、フュージョン系のマイナーバンドにも在籍していたようですが、一般的に良く知られてるような有名バンドには在籍したことはなく、ほとんどスタジオ・ミュージシャンから直接ソロデビューしたような人物です。日本であまり知られてないようにみえるのはそういう有名バンドの看板を一度も背負わなかったからかもしれません。

セッション・ギタリストとしてはミュージシャンの間では名前を知られていたようで、ミュージシャンが評価するミュージシャンという立ち位置にいたようなギタリストだったんですが、それが結果としてデビューに結びついたということらしいです。
アルバム「TONES」で86年にソロデビュー。その後90年に2枚目のアルバム「AH VIA MUSICOM」をリリースし、この中に収録されてた。「Cliffs of Dover」が大ヒットします。
この曲がヒットしたことでエリック・ジョンソンはグラミー賞を獲得することになります。

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さてそのグラミー賞獲得の曲「Cliffs Of Dover」なんですが、歌は入ってなくて完全なインスト曲。最初から最後までギターから迸り出る音が乱舞し続けるような曲です。
でもこういうギタリストを取り上げておいて云うのもなんですが、わたしは早弾きとか超絶技巧とか、実はあまり興味がないんですよね。そういう演奏を前にすると、音楽を聴いてるというよりも曲芸でも見てるような気分になってくるから。
音楽が楽器という道具を使いこなす技術の披露でもある以上、超絶技巧だって音楽の一部だとは思うんですが、今のところわたしの感覚ではそういうのを聴く要求が自分の中から出てきません。
だから「Cliffs Of Dover」がお気に入りなのも物凄いテクニックよりも、もちろんそのテクニックには目を見張るんですが、そういうものよりも、この曲が旋律感に満ち溢れていることに気を引かれるからという、これが理由になってます。

この手の音楽としてはメロディ、和声の動きはとても綺麗に仕上がっていて、ロックギターが予想させるような様々な要素、たとえば「暴力性」だとか、エリックという名前だから云うんじゃないですが「泣きのギター」だとか、そういう慣用句めいたものとは全く異なった位置に立っているような気がします。
これだけの音を奔流のように弾き出す演奏にも関わらすその音は荒々しいものとは正反対に繊細な印象の方が強く、ウォームで伸びのあるトーンが、縦横無尽に駆け巡るような旋律を艶やかに歌い上げていきます。この音がまたなかなか気持ち良い。
エリック・ジョンソンは音質に関しては信じがたいほど神経質らしく、この頃はエフェクターの電池1個から指定のものでないと駄目だったんだそうです。

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「Cliffs Of Dover」収録のアルバム「AH VIA MUSICOM」には他にこういう曲が収録されてます。ちなみに邦題は「未来への扉」、ちょっとダサいです。

1. Ah Via Musicom
2. Cliffs of Dover
3. Desert Rose
4. High Landrons
5. Steve's Boogie
6. Trademark
7. Nothing Can Keep Me from You
8. Song for George
9. Righteous
10. Forty Mile Town
11. East Wes

各曲の邦題はこんな風になってます。

1. 未来への扉
2. 遥かなるドーヴァー
3. デザート・ローズ
4. 失われた大地
5. スティーヴに捧ぐブギ
6. トレードマーク
7. 消えぬ想い
8. ソング・フォー・ジョージ
9. ライシアス
10. 40マイルの彼方
11. イースト・ウェス

基本的にギターの音はディストーションで歪ませたような音じゃなく、クリーンな音が基調になっていて、アルバム全体をざっと聴き流してみたら、スムーズなAORといった感じに聴こえてきます。3,4、7、10と、エリック・ジョンソン自身のヴォーカルが入ってる曲は特にそんな傾向が強く出ているようです。

でも一つ一つよく聴いてみれば、ロック、ポップ、ジャズ、カントリーと、いろんな側面を見せる演奏にもなっていて、結構雑食性が高い感じがするアルバムでもあります。
5曲目の「Steve's Boogie」は軽快なカントリー調の曲。
アルバム全体の、空中を乱舞するようなギターの音が満ち溢れてる中に現れる、アコースティックで土臭い響きを持った8曲目の「Song for George」。
この中では一番ロックっぽいかもしれない9曲目の「Righteous」
11曲目の「East Wes」はちょっと毛色が変わって若干ジャージーな感じの響きがする曲。これはタイトルやオクターブ奏法から判断すれば、ジャズ・ギタリスト、ウェス・モンゴメリーへのトリビュートかも。

やっぱり2曲目の「Cliffs of Dover」が突出して出来が良く、これが目当てのアルバムという位置づけは変わらないにしても、「Song for George」なんかはアコースティック・ギターのさばき方も含めてわたしにはちょっと面白く聴けたりしました。

ただギターの音そのものは人を驚かせるような奇矯な癖もなく、壮絶なテクニックを使ってるのに、まるで当たり前みたいにさりげなく弾いてしまうから、パフォーマンス性の欠如というか、これだけ音が乱れ飛んでるのに、アルバム全体では聴く方を強引に引き釣り回すようなところも無くて、地味に聴こえてしまう傾向があるようです。

もう一つ。リズム隊が弱いんですよね、このアルバム。
手堅く、そつなくこなしてる感じがするだけで、体が勝手に動き出してしまいそうになるような躍動感のあるフレーズがほとんど出てこない。音数の多いギターのバッキングに徹してるのかもしれないけど、こういう手堅いだけのリズムだとドライブ感にかけてるような印象があって、そのせいでアルバムの印象はアルバムのなかでやってることと較べると、不釣合いなほど大人しい感じになってしまってるようにわたしには感じられました。

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Cliffs of Dover - Eric Johnson

とにかく音の洪水というか、決まった長さの1小節のなかに、無理やりねじ込んだような圧倒的な音数というか。よくもまぁこれだけ指が動くものだと感心します。わたしには左手の指の動きが若干蜘蛛の足の動きのように見えて、ちょっと気味悪い時があるんですけどね。
見た目はやっぱり王子様風ですね。この演奏は特にそう見える感じです。

Desert Rose - Eric Johnson

アルバムでは「Cliffs of Dover」に続く3曲目。

Song for George - Eric Johnson

8曲目、アーシーなアコースティックギターの演奏です。



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コメント

No title

こんばんはv-85

エリック・ジョンソン・・・見るからに神経質そうですね(笑)
電池1本から指定のものとは・・・

映像を見ていて、ちょっとだけイングヴェイ・マルムスティーンを思い出したのですが・・・(笑)
リッチー・ブラックモア然り、いわゆる「早弾き」を得意とするギタリストがメジャーになるには、やはり「メタル」の世界が一番なんじゃないですかね?
エリック・ジョンソンは、やや貴族然とした音に聞こえますが・・・

この人、クラシックの影響をかなり受けてるんじゃ・・・?
そのあたりが、イングヴェイ・マルムスティーンに似てるなぁ~、と。
まぁ、エリック・ジョンソンの方が年上ですけどね・・・(笑)

ともさんへ

こんばんはv-484

他にもエフェクターの下に敷く板まで指定だったとか。「G3」に参加した時、周りのミュージシャンから嫌われてたらしいです(笑)

イングヴェイ・マルムスティーン。
わたしこの名前を見るたびに吉本の芸人「まるむし商店」が重なるんですよね(笑)

こういうのはメタルの専売特許みたいな感じがありますよね。この動画のはまだロックぽく聴こえるんですが、アルバムはもうクリーン・トーン満載で完全にAOR。
クラシックの素養については良く分かりませんが、ギターの音がヴァイオリンっぽく聴こえてくる感じはありますね。
この人、髪の毛が長いと貴公子、アイドル風なんだけど、髪の毛を短くしたら一気におっさんに変身してました。

コメント有難うございました ☆

今更ながら・・・

こんにちは
いつもコメントありがとうございます

記事と関係ない話ですみません
今更ですが、リンクさせていただいてよろしいでしょうか。
もし不都合あったら、おっしゃってくださいね。

応援ポチっとしていきます!
またよろしくお願いいたします

No title

お久しぶりです

G3系全くわかりませんが(ジョーサトリアーニしか知りません)YouTube見るとけっこういい感じですね

邦題の「未来への扉」ってできそこないのジャーニーみたいですね(こういうB級の邦題って好きなんだけど)

スーパーサイドバックさんへ

こんにちは!

わたしのブログのリンクを張って頂いて、ありがとうございました。
不都合なんて全然無いですよ♪

わたしのほうもスーパーサイドバックさんのブログへリンクを張らせてもらいますね。
これからもよろしくお願いします。

応援とコメントありがとうございました ☆

赤坂王子さんへ

こんにちは!お久しぶりです!

ちょっと癖が無さすぎって云うか、もう少し押しの強い部分があったほうが売れるんじゃないかと思うんですけどね。端正な感じがこの人の良いところなのかもしれないけど、淡白な感じはありますね。最も日本とは比べものにならないくらいアメリカでは名を知られたギタリストらしいんですけど。

邦題、ダサいでしょ(笑)
でもこういう感覚は赤坂王子さんと同じで、わたしも嫌いじゃないです。
ただアルバム全部聴いた感じでは、どこが未来への扉?としか云いようが無い内容なんですけどね。

コメントありがとうございました ☆

No title

こんばんは!

エリック・ジョンソンですか。うーん、初めて聴くかもしれません。それか、聴いたことあるのに忘れてしまったか・・・。どれだけ浅いのよ自分って感じです(笑;)。

私は早弾きとか曲芸チックな演奏は好きなんですよ。映画と同じく技巧を凝らしたものにはグッときちゃいますね^^。
勿論、早いだけでなく、メロディアスなちゃんと聴かせる部分があれば最高です♪

「Cliffs of Dover」はイイですね♪昔、フュージョンをよく聴いていたもので、こういうインスト曲は好きです。スローで始まってもの凄い早弾きに入る。メロディもいい。ウットリですねえ^^
私も一時ベースをやってまして早弾きを目指しましたが、指が言うことを聞いてくれませんでした(笑;)。

エリックは王子様衣装だけでなく、何を着てもカッコ良さそうですね~。

また一つ勉強させて頂きました!

ガツンと応援~♪凸

umetramanさんへ

こんばんは!

やっぱり有名じゃないです、この人。エリック・ジョンソンを知ってるのはおそらく大半がギター・キッズだろうと思います。

早弾きをパフォーマンスだと自覚して見せ場を作ったりしながら弾く、スティーヴ・ヴァイっていうギタリストもいて、わたしはこの人のギターを見るのは結構好きなんですよね。ただやっぱり早弾きが自己目的化してしまったようなのはちょっと敬遠ってところはあります。
でも技巧を凝らしたものを映画として例えられると、こちらも技巧を凝らした映画大好きなので納得してしまうところがあったりしますね(笑)

こういう曲は好みの範疇に入ってましたか。
umetramanさんベーシストだったんですか!技巧派のベースといえば、ジャコ・パストリアスが頭に浮かんだんですが、ひょっとしてこの辺りを目指しておられたとか。どうして指があんなに早く動くのか、本当に疑問ですよね。

王子様衣装は似合うかもしれないけど、曲調とは合ってませんよね。王子様がエリック・ジョンソンの好みだったのかな。

いつも応援、コメントありがとうございました ☆

No title

Cliffs of Dover でエリック・ジョンソンのファンに。 私は、この曲がギターソロナンバーワンだと思っています。Jimmy Page のStairway To Heaven を推す専門誌(というかファンの投票で決まっているそうです)が多いですけど。エリック・ジョンソンの他の曲はあまりピンときません。上記コメントはなかなか的を射たものだと思います。

Cliffs of Doverさんへ

初めまして、こんばんは!

以前はZeppelinも聴いていて、でもその時から「Stairway To Heaven」はわたしもそれほど良いとは思わなかったです。世評は高い曲ですけどね。
今はこれが人気投票だと1位になってるんですか。

エリック・ジョンソンは一般的にもうちょっと知名度があれば良いんですけどね。それがちょっと惜しい。グラミー賞は取ってるものの、知ってる人の大半はギター・フリークじゃないかと。

やっぱりこの曲が突出してますよね。アルバムを聴いてもとにかくこの1曲の印象が強くて、他の曲は何度も聴いてるうちに個別のニュアンスが分かり始めるって云う感じでした。

記事内容に同意していただいて嬉しいです。

コメント有難うございました ☆
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