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【写真】刹那と螺旋 +【音楽】Hey there Grant Green

螺旋の集合

撮った時はこういうイメージになるとほとんど予想してませんでした。でも出来上がってみればなんだかちょっとかっこいい写真に仕上がってるような気になった一枚。
今年の梅雨前の5月頃に伏見の辺りを街撮りしながら散策していたことがあって、その時に撮った写真の一枚です。小さな町工場だったかな、もう一度行けといわれても途方にくれるくらい正確な場所も覚えてないその工場の前にドラム缶が並べてあって、覗き込んでみればこういう細長かったりくるくるとねじ巻き状になったオブジェが一杯詰まってました。工場の人に訊いみるほど外交的でもないので、状況から判断すると、どうも旋盤なんかの削り屑をドラム缶に入れて纏めてあったらしいです。ちなみにあとで調べてみたらこういう削りかすを「切粉」というらしくて、ちゃんと名前がついてました。

覗き込んでなんだかごちゃごちゃしてるのが面白くて、シャッターを切ってみました。本当はドラム缶に入れてある様子も写ってるはずだったんだけど、そういうところは陰に沈んでしまって、具体的な事物の属性が幾分剥ぎ取られ、奇妙なオブジェの堆積状態だけがフィルムに焼き付けられたようです。それにしてもこんなにクールな感じで撮れてるとは思わなかったです。

云ってみるなら、刹那と混沌と螺旋の競演って言うところ。こういう風に云ってみると削り屑もなんだかとてもたいそうなものに見えてくるからなかなか楽しいです。

混沌としているというのは最近ちょっと面白いと思ってる要素の一つで、そういう風にも撮れると気づいた時はやけにごちゃごちゃした状態のものを撮ったりしています。本当だと被写体とそれ以外という風に整理したり纏めたり、余計なものを画面に入れない引き算の撮り方のほうが写真らしい写真の撮り方なんだとは思うけど、世界はヒエラルキーもなくすべては等価で、混沌としているとイメージしているものだから、整理してその混沌に意味を与えるのも必要かもしれないけど、混沌そのものをそのものとして捉えるのも別に良いんじゃないかと思ったりしてます。

刹那的というのは、このフィルムの一齣はわたしがドラム缶を覗き込んだ時の状態が写し取られたわけだけど、この時目の前にあり削りかすが複雑に絡み合って作っていた混沌の形はまさにこの時だけ瞬間的に存在していたもので、その時を逃してはもう二度と同じ混沌はこの世界には現れないということ。
そういう瞬間的にこの世界に現れて消えて行った何か、5月の中ごろに伏見の小さな町工場のドラム缶の中にみたこの複雑で混沌とした世界のなかにもあったはずの刹那的な何かが、この些細な写真の中にでも多少は定着できていたら面白いとも思いました。

見てるうちに思いついたことは自然がジャクソン・ポロックを気取って、アクション・ペインティングしたといったこと。これは結構云い得てると思います。

☆ ☆ ☆

この写真に一杯入ってるくるくると螺子巻く、螺旋って云うモチーフは、螺旋階段とといったような類縁的なものとして、思い返してみればこのブログにはあまり載せたことがないにしても、螺旋形態は今までに結構色々と写真に撮ってます。螺旋の形態が目に入るととりあえずカメラを向けて撮ってみるといった感じ。
別にわたしは螺旋マニアでも螺旋が好きで仕方がないというわけでもないんだけど、なぜか磁力めいたものを察知して目が留まってしまうところがあるようです。

思うに螺旋の同じパターンを繰り返して徐々に階梯を上り詰めていく様相は音楽そのものじゃないかと。音楽もパターンを繰り返して高揚感へと導いていくものだし、螺旋はそういう風に見てみると極めて音楽的なフォルムなんですね。だから、音楽好きのわたしとしてはそういうメタファーとしてのフォルムを体現してる螺旋という形になにかしらの親近感を抱いて視線を留めてしまうんじゃないかと思ったりします。

もちろんこれはこじつけではあります。




KONICA BIG MINI F +KONICA LENS 2.8 / 35


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Grant Green - Hey there


ファンクジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンがチャーリー・パーカーのラテン・アルバム「Fiesta」にトリビュートするようにリリースしたラテン・アルバム「The Latin Bit」に収録されていた曲。
トリビュート云々はまぁわたしの勝手な印象だけど、「Fiesta」と3曲ほど同じ曲が入ってるし、グラント・グリーンはギターの練習をする時になぜかサキソフォン奏者のチャーリー・パーカーの演奏を参考にしていたというから、それほど的外れでもないのかも知れないです。
曲は57年のミュージカル「The Pajama Game」からのもので、スタンダード曲は本当にミュージカルから出てきたものが多いです。わたしはミュージカルとか不自然さが気になりすぎてあまり好きじゃないし、関心もないんだけど、なんだか音楽分野の大きな領域をすっかり素通りしてしまってるような気分になります。

全体にリラックスして緊張感もほぐれるような演奏なんだけど、わたしが初めて聴いた時一番印象に残ったのはリズム隊の演奏でした。まるでテクノの機械打ち込みのように正確無比のリズムを刻んでるのに、機械的な生硬さが微塵も見られない快楽的なグルーブ感を、この曲の場合だと7分近くも続けてる、ゆるい凄さ。
この波が打ち返していくようなグルーブ感にグラント・グリーンも一緒になって鼻歌でも歌ってるかのようなギターをのせてくるのがこの曲の心地よさとなってるんだと思います。

アルバム全体のピアニストはJohnny Aceaという人なんだけど、ボーナストラックのこの曲でピアノを弾いてるのはソニー・クラークで、これも何気に凄いところだったりします。






Latin Bit (Reis)Latin Bit (Reis)
(2007/08/20)
Grant Green

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