【洋画】 ウェイキング・ライフ

ウェイキング・ライフウェイキング・ライフ
(2007/05/25)
洋画≪初回生産限定版≫

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映画全編にわたって、画面に見える全ての細部が浮遊感たっぷりにゆらゆらと揺らめき続けます。実際に観てみれば意外と大丈夫なんだけど、ちょっと見ただけでは「絶対に酔う!」と尻ごみしてしまうような、ぐにゃぐにゃのアニメーション映画です。今までに観たことも無いような映像は圧倒的で、凄く面白い。

実在の俳優を使って実写で撮った素材をデジタル処理でロトスコーピングしていく。基本はこういう作り方だと思うんですが、単純なロトスコーピングでも無くて、揺れる世界にするために画面上の各要素を細かくレイヤー分けして、そのレイヤー単位でばらばらに動かすような処理を執拗に施してます。
アニメーターは多人数参加していて、シーンごとに担当が異なり、その結果シーンが違えばかなりタッチが違うものになるといった具合に、絵柄はバラエティに富んだものに仕上がってます。同じ人物なのにシーンによっては陰影を細かく塗り分けられていたり、別のシーンでは単色塗りに一筆書きの目鼻みたいなものになったりする。
でも観た印象としては、映画全体が揺らぐ世界で統一されてるせいか、人物のタッチが変わったとしても、余りちぐはぐには感じませんでした。いろいろ変化があって面白いっていう感じのほうが強かった。

☆ ☆ ☆

主人公(名前が無い!)の男が、どこか分からないところから電車に乗って街に戻ってきます。戻ってきた男が街なかを歩いたりしていると、なぜか男の前に脈絡もなく人が現われては、哲学や思想に関する話題を唯ひたすら垂れ流していきます。男を前にして一応対話の形には成ってるけど、ほとんどは相手が勝手に喋り続ける独り言。映画は人を変えながらそういうシーンを延々と繰り返して、膨大な量の哲学的な言葉を浴びせかけて来ます。

これ、観始めた最初ははっきり云って面食らいます。だって主人公がどういう人物かも分からないし、話しかけてくる人物がどういう係わり合いで話しかけてくるのかも分からない。それなのに脈絡もなしにそういう人物が次から次に現われるので、わけも分からないままに相手の話を聞いてるだけの展開になる。

でも暫らく観続けていると、これが主人公の男が見ている夢の中だってことが分かってきます。ただひたすら人が現われて得体の知れないことを喋り続けるのも、現実に起こってることじゃない。夢を見ている主人公本人も自分が夢を見ていることを自覚しています。
しかもさらに分かってくるのは、主人公の男がこの夢から覚めない状態になってるっていうこと。ベッドで目覚めはするんだけど目覚める夢を見てるだけで、実際にはまだ夢の中に居る。それが延々と繰り返されている。男は自分が目覚める夢を見ているだけで実際には夢の中から逃れられなくなってることにも気づいていきます。

覚めない夢について、現実と夢の区別の仕方、現実とは何なのか、そういったことを夢の中の人物と議論したりするシーンも増えてきて、この辺りになると最初は訳の分からない展開だった物語も、凄く面白くなってきます。
何度目覚めても目覚めた夢を見てるだけっていうのは結構こわい話です。映画は特に怖さを強調するような作り方はしてなかったけど、実はこういう場面で一箇所ぞっとしたシーンがありました。照明のスイッチの話のところなんだけど…、一瞬産毛がざわついたというか。

☆ ☆ ☆

細部まで揺れてとにかく視線を引っ張リ回す画面と、絶え間なく注ぎ込まれる膨大な言葉で、情報量としてはあっという間に過負荷状態になる映画です。画面から向かってくるものを全て受けきれない状態に簡単になってしまう。特に字幕で観てるとつらい。
映画で展開される思想、哲学問答は、入門書に書かれてるような程度のものが大半で、そのうえ喋り言葉に乗せてるから理路整然としてるわけでも無いんだけど、そういうものでもそれなりに理解しようと字幕を読んでる間は画面からの情報をかなりの部分取り残してしまう事になりがちです。
映像の方を見たいのに、字幕から目を離す余裕がないって箇所が一杯あって、これはもったいなかった。字幕に視線が絡み取られないように、吹き替えで観るのが、この映画のベストな観方かも知れません。

揺れ動くアニメーションはこの世界が現実じゃなくて主人公の頭の中の世界だということを表現するための手段だったわけで、脳内世界を映像として表現するにはどうしたら良いのか、そういうことから出発して、これだけ斬新で、しかも的確な視覚表現に辿り着いたのはやはり凄いの一言です。

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Waking Life Trailer



Waking Life - Making Video Clip

原題 Waking Life
監督 リチャード・リンクレイター
公開 2001年
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