【写真】JAZZ 木屋町界隈のギャラリー +【写真集】ハンス・ベルメール

voxビル01


河原町三条下がったところ、木屋町と河原町の間にある、VOXビルの前で。いつも停めてある、前を通るたびに写真撮ったらかっこいいかもと思う黄色い車と、この時始めて目に付いたジャズのポスターの写真。
VOXビルは飲食店なんかも入ってるビルなんだけど、わたしがもっぱら利用してるのは一階にあるアート系の書籍、画集だとか写真集だとか、大手の流通経路に乗ってないような、ひょっとして自主制作?なんて思えるようなのも混じった見たこともないCDやDVDだとかを扱ってる店とその隣にあるギャラリー。もっとも利用するといっても馬鹿高い本や映像、音響メディアばかりで、しかも専門のショップだからきわめて珍しいものがそろってるかというと海外からの輸入の画集なんかは珍しいけど、他はそうでもなかったりして、さらに店が小さいから扱うアイテム数そのものが少なくて、じつのところ買い物はほとんどしたことがなかったりします。多少傾向は違うけどアート系の本なんかは一乗寺の恵文社辺りのほうが利用しやすい品揃えかも。
ここではちょっと前に写真の季刊誌「IMA」の以前に出版された創刊準備号が出てたから買った程度。これだってバックナンバーだから普通の書店では見つからなくても、おそらくアマゾン辺りで簡単に手に入るような本だと思います。わたしが行く時間帯ではお客さんがいるところをほとんど見たことがない本屋さんで、営業できてるのがちょっと不思議な店でもあります。雰囲気はいいんだけど。

ギャラリーのほうは8年ほど前、恋月姫の球体関節人形の展覧会があった時に行ったのが記憶に残ってます。このことはこのブログに以前書いたような記憶があるけど、恋月姫の人形は写真集を何冊か持っていてそれで見ていただけで実物を見たのはこのときが始めて。想像以上に小さく、華奢で繊細な細工を施した人形で、一体持って帰りたくなるような所有欲を刺激された展覧会でした。
欲しければ買えばいいんだけど、一体いくらくらいするのかなぁ。

この写真はジャズのポスターが気を引いて撮ってみたものでした。車のほうもいつも結構目立っていて被写体にはいいんだけど、この時はモノクロということで黄色い色が写せないから撮った時の感覚としては車のほうは脇役といった感じ。
でも仕上がったのを見てみると、一番目をひくのはアンドレ・ケルテスのディストーションのように、車の窓に映る曲がった周囲のビルの反射像で、これが一番かっこいい要素になってるんじゃないかと思います。ジャズのポスターはもっといかしてるかと思ってたら、撮ってみると随分とありきたりのイメージでした。

ちなみにいつもビルの前に目立つ黄色で停めてあるから、ひょっとしたら店前の空間演出のディスプレイの一部なのかと思ってたら、いなくなってる時もあるので、ビルに関係する人が乗ってる車なんだと思います。



vox吹き抜け



vox入り口



VOXビルは中に入ると一番上までの吹き抜けになっていて、周囲はなんだか無骨な感じに仕上げてある、結構かっこいい空間になっています。窓好きのわたしにとっては天から降り注ぐ柔らかい光にきわめて居心地がいい場所です


木屋町界隈の画廊

ギャラリーついでに、VOXビルの近くで、以前は立体ギャラリー射手座という画廊だった場所。今はGABORという喫茶店になってるらしいけど、降りていったことがないから分かりません。優雅な曲線を引いて視界の端へと消えていく螺旋の階段に血が騒いで写真撮ってみた場所でした。壁には色々と展覧会や映画のポスターが貼ってあるから、まだアート関連のことをやってるところもあるのかなぁ。



最初の写真はNikonのFM3A、Ai-s50mmレンズとフジのモノクロフィルムプレスト400で、下の三枚はOLYMPUS PEN EE-2にコダックのモノクロTriXを詰めて撮ってます。両方ともフィルムは自家現像でした。

ちなみにPEN EE-2はこんなカメラ。暫く使ってなかったんだけど最近モノクロフィルムをお供に目に付いたものを、あまり考えずに撮る用のカメラとして使ってます。

オリンパスペン EE-2
ずっと前の記事に貼ったビスケットカメラで撮った写真を流用。これ、BALの最上階にあった喫茶店で撮ったものだ。
BALビルは今建替え中で、古いビルは完全に取り壊され、この写真の空間はもうこの世界のどこにも存在してません。

電池も要らず、ピントを合わす必要もない、フィルムを送ってファインダーを覗いてただシャッター押すだけの簡単カメラ。ファインダーにぶつけた凹みがあったり結構汚れていたりで売り物にならないと判断されたのかジャンク扱いだったんだけど、店でちょっと試してみたらこちらの操作にきちんと反応して普通に写せそうなカメラでした。無水エタノールで拭けば綺麗になったし、ちゃんと使えて今でも使える状態だから、この時のカメラの代金500円の元はもう十分に取ってます。


☆ ☆ ☆



さて、この話題に繋げたくて、恋月姫の人形展の話を振るためにVOXビルから書き始めたと、そういうあまり成功してそうにも見えない経路が見え隠れするのが、今回のこの一文の難点だけど、最近、ハンス・ベルメールの、人形集じゃなくて写真集を買ったんだよと、こういう話題を出したかったということでした。こんな本が以前に出版されていたなんて全く知らなかった。
わたしは結構人形、それも球体関節人形が好きです。興味の大元は今から思うとこのベルメールの人形だったんだけど、上に話題に出した恋月姫の人形なんかも好き。恋月姫のほうはちょうどVOXビルで展覧会があった頃、恋月姫の人形のミニチュアつきという限定版写真集なんか買ったりして、これは絶対にプレミアがつくと思い未だに封を切ってないんだけど、思惑は多少外れて、吃驚するほどの高値にもなってないようです。

フィギュアつき限定版



ハンス・ベルメールは特異なイマジネーションで球体関節人形を作っていたシュルレアリスト。人体の断片化と、その細分化された人体を、球体という神秘の形態やフェティシズムに満ち溢れた隠微な曲面を駆使して再構築した、異形の人形を作り続けた作家です。


ベルメール写真集1



ベルメール2


本はそのベルメールの人形の特集というよりも、というか結果的にはベルメールの人形の集大成にもなってるんだけど、むしろ視点は写真家ベルメールというものにスポットを当てるような取り方をしていて、自作の人形を撮ったもの以外のベルメールの写真も纏められ、写真家ベルメールの全貌を知れるような構成になっています。
序文で澁澤龍彦さんが書いているように、ベルメールの人形の写真、わたしたちはこれらの写真を見てベルメールの人形を知ったわけなんだけど、このベルメールの人形が写った写真を前にして、そこからベルメールの人形の情報を得ることが主目的となり、それが写真であることはそれほど重要視されずにやり過ごしてきているところがあったんじゃないかと。
思うに、ベルメールの人形があってそれを別の写真家が写真に写すという形じゃなくて、わたしたちが目にしてきたベルメールの人形の写真はことごとく人形作家本人が写真にとって形にしたものであるなら、パーツの配置だとか背景となるものだとか、一般にベルメールの人形としてイメージされてるものはベルメール本人が自作の人形をモチーフにして入念に演出し、写真という形で定着させたものと考えるのが妥当なんだと思います。人形が内在させてる異形でフェティッシュでエロチックなイメージを作家自身がもっとも十全な形でイメージ化しようとしたものがベルメールの写真であったと。そしてわたしたちはそういう人形作家による演出を含めた形でベルメールの人形のイメージを把握してるなら、写真家としてのベルメールは人形作家であるベルメールと同じくらいに重要な要素なんじゃないかと思い至ることになるわけです。

だから、この今までの纏め方とはちょっと視線をずらせたところのある、ベルメールの人形の集大成でありながら、ローライフレックスで撮っていたベルメールの写真の全貌を収めようとした写真集は、視線のずらせ方は少しではあるのかもしれないけど、結果としてはかなり新鮮な角度でベルメールの全貌を再照射しようとしたものだといえるんじゃないかと思います。
特に人形以外の被写体を捉えた写真が纏められていたのは興味深かったです。人形の写真はそれこそいろんな形で何度目にしたか分からないものも多数あったけど、これは始めてみたものばかりだったから。ほとんどポルノグラフィーといってもいいくらいの写真で、異形の人形を作るほかなかった背後において、作家がどんなイマジネーションに捉われていたか推察できて興味深いです。

巻末の写真に関する解題も、謎めいた写真の素性や背景を探り、モチーフとなってる人形のその後の動向なども解説されていて写真を見る上ではかなり参考になります。人形の中には写真に撮られて知れ渡ってはいるけど現存してないものがあるというのが意外といえば意外。こういうのって、これだけ有名な作家のものだったら確実に保存されてるものだと思ってました。
それともう一つ興味深かったのは本の最後に謝辞として載っていた文章。
わたしの買ったものは最初に出た版のもので、復刊されたものにはどう書いてあるのか知らないけど、本の最後のほうに纏められたポルノグラフィー的な、局部が見えたというよりも局部を見せた写真にぼかしをかけたことに関して、はっきりと作品を毀損したと書いて、その写真の権利保持者への謝罪文を載せていたこと。修正なんていう言葉じゃなくてはっきり毀損という言葉を使ってる時点で、これが刊行された当時でも時代はそれなりに動いていたんだなと思いました。
復刊のほうはどうなってるんだろう。ぼかしそのものをやめてしまってたらいいんだけど、まだそこまではいってないかな。
ティルマンスの海外で出版されてる写真集なんか、あっけらかんと見せてるのが何の躊躇いもなく日本に入ってきてるし、ぼかしを入れなかったからどうなるって云うものでもないと思うけど。

最初に発刊されたものの他に後に復刊されたバージョンも存在して、でも現在のところは復刊されたものも絶版になってる模様です。
古書の価格は意外なことに復刊されたもののほうが高く取引されてるよう。こういうのって最初の版のものが高値になりそうなのに。わたしが買ったのは安かった最初の版のほうでした。






ハンス・ベルメール写真集 (fukkan.com)ハンス・ベルメール写真集 (fukkan.com)
(2004/08/31)
ハンス・ベルメール、アラン・サヤグ 他

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わたしが入手したほうじゃなく、復刊されたほう(高値のほう)のリンクです。こっちのにしか画像が用意されてなかったので。
ちなみに本のカバーは写真集としてははっきり云ってダサいというか、この表紙だけだと買う気はほとんどおきません。


人形月 特装版 (Ikki amuseum)人形月 特装版 (Ikki amuseum)
(2006/06/29)
恋月姫

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古書で内容を見るとフィギュア欠品というのがほとんどだけど、これをフィギュアなしの特装版状態で買う人なんかいるのか?










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