【洋画】 遊星からの物体X

原作はジョン・W・キャンベルの小説「影が行く」。以前に一度クリスチャン・ナイビーが映画化していて、このカーペンター版は二度目の映画化になります。

完全に化け物映画に徹したところがやはり良いんですよね。結構酷評されたり興行的には振るわなかったものの、この部分を徹底的に映像化したから、今ではカルト映画扱い。表現の有効な方法論として「極端化と曖昧化と神秘化」を挙げたのは埴谷雄高ですが、まさにその「極端化」がスクリーンの形をして立ち上がってるような映画になってます。

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太古の昔に南極に飛来し、氷の下に潜んでいた、何か。たまたまそれを発掘したノルウェー隊を全滅させた後、犬の姿を借りてアメリカ基地に進入してきた、得体の知れないもの。
原題の「The Thing」でも分かるように、この映画に出てくる化け物は名づけられるような定型の姿を持っていなくて、「正体不明」としか云い様のない存在です。その「正体不明」生命体が何をやるかと云えば、ターゲットにした生き物を取り込んでその生き物とそっくりの姿に変身し、取り込んだ相手に成りすますみたいなことをやる。そうやって相手の世界を乗っ取っていきます。

特定の形を持たない、そのうえで擬態を解くときに得体の知れない気味の悪いかたちを現すという「物体X」を視覚化したのは、ロブ・ボッティン。
ロブ・ボッティンは「ハウリング」の狼男変身シーンとこれでホラー映画ファンの間で一躍アイドルとなりました。同業の格としてはリック・ベイカーのほうが遥かに上だったんだろうけど、次に何をやらかすか、みたいな期待感ではロブ・ボッティンのほうが桁外れに大きかった。

この映画の頃はCGIとかはまだ使われてなかったので、物体Xへの変身シーンは特殊メイクの技術で実現化してます。でもこういうのはCGIで作ってしまうとあまり面白い出来にはなりません。リアルな素材感、手作り感が残ってる方が遥かに面白い。だからこの時代に製作されたのはむしろ幸運だったんだと思います。CGIを駆使して今作ったとしてもおそらく唯のB級映画でお終いって可能性がかなり高いです。

不定形という設定をベースにして、まさしく考えられる限り好き放題やったグロテスクな造形は驚きの一言で、最初に「物体X」が現われる南極犬の変身のシーンから、アクセル全開状態です。
犬小屋の中での変身シーンで、他のリアル犬と一緒に撮ってるようなシーンでは、リアル犬のほうが本気で威嚇したり、怖がったりしているように見えたんだけど、そう見えたのってわたしだけなのかな。
一連の変身シーンのなかで、一番人気はこの南極犬の変身か、見せ場たっぷりのノリス・モンスター出現のシーンだと思うけど、わたしは血液検査から始まるシーンも好きです。悲惨な状況のギャリィ隊長には負けるだろうけど、あそこは観ている側にも結構な緊張感が伝わってきました。

舞台が南極の基地っていうのも良いです。しかもブリザードに閉ざされて完璧に孤立してしてしまってる場所。そういう助けも呼べないような隔絶された極限状態の場所で、物体Xとの生存をかけた戦いが行われてる。
「エイリアン」も同じような孤立した場所を舞台にしていて、こういう閉ざされた場所の物語って、何だかそれだけでわくわくします。

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カーペンターの演出は、誰が物体Xに取り込まれてるとか、誰はまだ人間のままだとか、同じような部屋と通路ばかりという基地の中で、やり方によっては確実に混乱してくる多人数の人間の動きをうまく捌いてるところはあります。でも、たがが外れたようなモンスター造形やこの世の光景とは思えないような変身シーンに食われがちというか、どれほどメリハリをつけて心理的な描写をしても、一度「物体X」が出てしまえば観てる側にとってそういうシーンは、次のモンスターの出現までの待ち時間みたいになってしまうような感じです。

誰が物体Xなのか、疑心暗鬼になっていく心理的な部分が「物体X」登場シーンに食われがちな印象でも気にならないのは、結局わたしにとっては「遊星からの物体X」はカーペンターの映画というよりも、ロブ・ボッティンの映画みたいになってしまってるからでしょう。


チャイルズ役のキース・デヴィッドはこれ以後も他の映画でよく見かけます。「アルマゲドン」で将軍になって出てきたりするのを見ると、あのあと南極から生還して、その後軍隊で出世したんだなぁと、妙な感慨にふけったり。
カート・ラッセルは、この映画の時はやはり若い。今はそれなりに年食ってしまったけど、それでもあまり印象は変わらない感じかな。

あとね、この映画、男しか出てきません。ものの見事に男ばかり。男以外に出てくるのは犬と化け物。
撮影現場はどんな雰囲気だったんだろう。

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遊星からの物体X トレーラー


原題 The Thing
監督 ジョン・カーペンター
公開 1982年


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コメント

初めまして。この映画良かったですね~、特にあの宇宙人の手作り感が^^ 私も南極犬の変身シーンが気に入っています。
あの宇宙人を手がけたのはロブ・ボッティンという方なのですね。参考になりました。
今後もちょくちょく訪問させていただきますね。よろしくお願いします。

K さま、始めまして。コメントどうも有り難うございます。
犬のところは本当によくできてますよね。この映画を観たことない友達なんかに見せると、唸る犬の頭が○○るあのシーンで、大抵息を呑むような感じになって、傍目で見ていて反応が面白いです。
ロブ・ボッティンもあまり名前が出なくなってるんですね。特殊メイクはCGIに取って代わられたから仕方ないのかな。
始めたばかりで、試行錯誤真っ最中の場所ですが、よろしくお願いします。

はじめまして

俺も見ましたよ。ラストシーンは映画史上で最も恐ろしいですね。
悪趣味が高じてエピソード2をゲームでやったんですが,最後にマクレディが元気な姿で出てきて嬉しかったです。
しかし,よーく考えてみると,あの映画の事件から何ヶ月も経っている…………もしかして( ̄◇ ̄;)

コウさんへ

コウさん、始めまして!こんばんは!

あのラストシーンは含みを持たせてましたね。あの場面で息が白くないからどうだとか、あとから推測する意見が一杯出てきましたけど、製作者側から云えば、息が白く見えなかったのはたまたまだったそうで。
でも深読みを許す良い終わり方だったと思います。

続編はゲームだったって云うのは知ってましたが、わたしは遊んだことがないです。面白かったですか?
マクレディも出てくるんだ。
時間経過もあれだけど、チャイルズが出てきてないなら、コウさんの推測も結構当ってるかもしれませんよ(^^

これ、実写で続編を作るって云う話もどこかで聞いたような気がするんですが、その辺はどうなんでしょうね。
続編作って欲しいなぁ。

またよろしくお願いします。
コメント有難うございました ☆
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