団地 + 写真集 Jeanloup Sieff 「40 Years of Photography」

壁際の枯れた花
2015 / 12 / OLYMPUS 35DC +F.ZUIKO 40mm f1.7 / Lomography Color Negative 400






公園
2015 / 12 / OLYMPUS 35DC +F.ZUIKO 40mm f1.7 / Lomography Color Negative 400


去年の暮れからお正月にかけて、向島の団地で撮っていた写真。年末に入手したペンタックスの大昔のデジイチがどんな感じなのか感触を確かめるのに持ち出していたために、この期間撮った写真ではフィルムのほうが少なくなってる。今回はそのうちのフィルムで撮った分から。このフィルム、年末には撮り終えてたんだけど、大晦日の日にフォトハウスKへ現像を頼みにいったら、まぁ時期が時期だけにもう休んでるだろうなぁと思ってた予想がぴたりと当たって既にお正月休みに入っていた。チェーンで通せんぼした人気のない店前の空間と閉じたシャッターを目の前にして、予想していたとはいえ若干の落胆は隠せず、この日は結局その後ブックオフやGUなんかに寄って帰ってきただけとなる。ただまるで無駄足だったかというとそういう風でもなく、ブックオフの洋書コーナーでジャンルー・シーフの写真集を見つけたりして、出かけてきたことの帳尻は何とか合ったという感じになった。
店の前の貼り紙では新年は四日からということだったので、四日に再び現像を頼みにいって、新年の挨拶を交わすついでに現像をして貰って来た。年末には撮り終えていたこのフィルムの結果を見たのは年を越してからということになった。

空ろなもの、朽ち果てた空間、そんなものを撮りたくて、去年の秋ごろから京都の片隅をうろつきまわってた。小椋の干拓池もそういうものを撮りたくなったら一番に頭に浮かびそうな場所だ。視界を遮るものもなくただ広い田畑が広がるばかりで、そのところどころに農家の作業小屋のようなものが建ってるだけ。でも実際に行ってみると空ろな雰囲気が気を引くよりも先に、被写体になりそうなものとものの合間の空間が広すぎて、さて次の被写体でも探してみようと思うたびに、広がる農地の中を延々と歩かなければならない。これが結構辟易する。
ということが頭の片隅にでもあったのかどうか、あまり意識はしてなかったんだけど、年末にこの辺りにやってきた時は結局干拓地のほうには入らずに、近鉄の向島の駅をはさんで反対側、団地が広がるほうへと足を伸ばしてみた。だだっ広い干拓池は雪でも降ると誰もまだ踏み荒らしてない雪原でも出現しそうで、そういうのが出来上がってたら撮りに来たいとは思ってるものの、今年の冬は驚愕するほどの暖冬になってるから、おそらく雪なんて降らないだろうと思う。去年は自分の書いたブログの記事を読んでみると、どうやら元旦に雪が降ってたみたいだけど。
それで思い出した。去年の今頃、珍しく本降りになった元旦の雪に誘われたか、その後水面に降りそそぐ雪なんていうのを撮りたくなって、宝ヶ池へ何回か通ったんだ。でも元旦以外は結局雪なんか降らずに、ここもだだっ広い水面が広がるばかりの池の様相を見ただけで、ただひたすら寒さに辟易して帰ってくる日々だった。




稲妻ライン
2015 / 04 / Nikon F3 + Ai-S 50mm / Fuji PROVIA 400X


最初の写真はテクスチャを撮ろうとしたもの。最近事物の質感とか触感みたいなものを撮りたいと思っていて、こういう感じのものをよく撮ってる。枯れた花が被写体だけどこの花自体はそんなに意味があったわけじゃなくて、あくまで枯れた質感と壁のまだらに汚れた質感に気を引かれた。

二枚目のは事物に囲まれて空ろな空間ってところかなぁ。団地は巨大な建物が連続して建ってるので、物理的にはもので満ちてるんだけど、印象はどこか空ろな感じがする、結構矛盾した空間と思うことが多い。
こういう広い視野を含める感じの写真が最近どうも撮りにくくて、その辺りで四苦八苦してる感じ。この場所に立って同じような日に同じカメラで同じ方向を向いてシャッターを切れば、きっと同じような写真が撮れる。写真はそういう風に自我に還元されない部分があるのが過激で面白いところなんだけど、そうは分かっていても、広い空間を切り取るような撮り方のどこかに自我の痕跡を埋め込みたいっていう欲望もあるわけで、その辺の納め具合を見失ってるような感じがする。

☆ ☆ ☆

大晦日に帳尻が合ったジャンルー・シーフの写真集はドイツの出版社タッシェンが出してる「40 Years of Photography」というものだった。
タッシェンの25周年記念として過去に出た写真集の廉価での再版シリーズの一冊。
同様の装丁でウィリー・ロニだとかブラッサイだとかアッジェだとかの写真集も出てる。わたしはブラッサイとアッジェのものも持ってるけど、すべて版型は大きくて豪華な写真集だ。
実のところこの写真家の写真集で手軽に手に入るものは他にはあまりない。
ただ25周年記念再版バージョンのものは、以前は大体1500円前後くらいで入手できたんだけど、版元で絶版、流通在庫も底をつき始め、古書でしか手に入らないような状態になってくると値段は跳ね上がって、今はあまり廉価の写真集といったイメージでもない。


ジャンルー1


ジャンルー2

ジャンルー・シーフは最初はマグナムに所属していたけどのちにファッションの分野で活躍することになった写真家。広角レンズの使い手で広角の使い方のお手本になるような写真を数多く撮ってる。写真集はファッション写真だけじゃなくて、各年代ごとの代表作を取りまとめて一冊の本にしており、35mmフィルムのカメラで広角を使った写真が分量としては一番多くて8割強くらいで、残りはスクエア・フォーマットで撮られた写真が纏められてる。35mmはライカかな。スクエア・フォーマットのほうはハッセルかも。
広角のほうは確か21mmだったと思うけど、ワイドレンズで撮った写真と真四角写真だとか、使いにくくてわたしが苦手にしてるものばかりで一冊出来上がったような写真集だ、
写真はすべてモノクロ。モノクロの色気がページの端々まで充満してるようで、これはいい。

ただこの本に納められてる広角で撮られた写真は、確かにこういう風に撮るのが効果的だというのがよく分かる撮り方にはなってるし、苦手意識があるわたしにとっては参考になりすぎるくらいなんだけど、あまり冒険的でもなく、優等生といえば優等生的な写真とでもいうのか、才気で突っ走って、破格で強烈な印象を残すような写真とはちょっと毛色が違うという印象だった。結果今までに単発で見たことがあるシーフの写真では面白いものがあったんだけど、ここに収められてるものに限っては、中心舞台だったファッション写真に特化するというよりももっと普段の感覚で撮られたスナップ中心になってる感じで、そういうものを期待するとちょっとはぐらかされたような気分になるかもしれない。
生涯を俯瞰するような纏め方なので、個別の感覚に深入りする方向でもなく、その分誰が見ても文句なしの写真にスポットを当てた、当たり障りのない選択になってしまってるんだろう。
わたしは特にファッション写真が目的でもなかったからそれなりに全貌を見渡せるのは良かったんだけど、シーフの中心的だったファッション写真が目当てだったら、この場合もこの写真集はちょっと物足りない出来になってるんじゃないかと思う。スタイリッシュでかっこいいというなら、以前ここで取り上げた同じくファッション写真で活躍したアルバート・ワトソンの写真集 サイクロプスなんかのほうが印象に残る。
とまぁ、写真集としてはこれは凄い!というような印象でもなかったんだけど、広角レンズで作る絵は手馴れていて、効果を最大限に生かして見栄えがするし、写真集としては先に書いたように色気のある美しい本になってると思う。









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コメント

No title

写真のせいもあると思うのだけど
私が想像するというか、こちらの「団地」がそうなのか
もっと うらぶれた雰囲気ですよ~
ここの団地は綺麗!
でも薄荷グリーン・フィルターがかかると
単なる団地が不思議な空間になっちゃいますね(*^_^*)

私は結構、ファッション誌出身の写真家って好きですね~
柔らかな写真が多いからかも。
このジャンルー・シーフの写真集も素敵だなって思います。

・・・って、そんなに写真家に詳しくは無いのだけどね(^^;

ROUGEさんへ

おはようございます。
こっちも普通の団地は裏寂れたようなのが多いですよ。
ここはちょっと特殊かも。街中にある団地エリアっていう感じじゃなくて、街そのものが団地で成り立ってる感じのかなり規模の大きなところなんですよね。新興都市というほど新しくもないけど、元は広大な干拓池のなかに、それまではなかった向島駅なんていうのも作って展開した巨大団地で、団地の中に一つの都市機能をすべて抱え込んでるような場所です。だからわりと綺麗な状態を維持してるんじゃないかな。
でも奥のほうへ行くと家賃が安そうなちょっとくたびれた建物の一角もあったりして、枯れた花を撮ったのもその奥まってくたびれた一角だったんだけど、こっちは従来的な団地のイメージに近いかもしれないです。
大晦日だったから普段にも増して人がいなくて、終末的なちょっと面白いイメージになってました。人っ子一人いない公園とか、しかもそこにだけ陽だまりが出来て舞台のように浮かび上がってるとか、結構シュールでしたよ。でもこういうところとか見られてない様に思えて、実は窓の向こうとか停車してる車の中から、結構見られてるんですよね。誰もいない公園で写真撮りまくってた変な人だと、どこかからひそかに見られていたかも。
ちょっと幾何学的な絵が撮れないかと期待して行ってみたんだけど、撮れはするけどありきたりかなぁと思って、そういう絵はあまり撮らなかったです。

写真家って結局それで商売しようとすると需要があるのはファッションか広告の分野となって、ファッション写真を撮ってる写真家っていうのは思う以上に多いかもしれないです。
シーフのは嫌いじゃないんだけど、この本を買う前にかっこいいなぁと思った写真はほとんど入ってなかったのがちょっと残念というか。撮ることそのものにあまり変わったことはしない人なので、そういうインパクトはあまりないんですよね。たとえばサラ・ムーンみたいに、これ、どうやって撮ってるんだ?っていうのがあまりないです。
だから見た目のインパクトとかはそんなにないんだけど、その代わりとにかく上手いっていうのは嫌になるほど伝わってきます。
ワイドレンズは苦手だから、こうやればいい感じになるというヒントが一杯で、真似するのは癪だけど、ヒントとしては大いに活用させてもらおうかと思ってます。
おもに女性が被写体になるから柔らかい印象に仕上がる写真も多いのかもしれないですね。そういえばわたしは柔らかい写真とかあまり撮ったことがないなぁ。鉄骨の柱とかは撮ったりするんだけど、柔らかい写真っていうのを撮ってみるのも面白そうです。

No title

最後の写真が好き
ニャンコはもうこの世にいないって感じのモノクロがやけに新鮮でもあり寂しくもありって詩人になったわ( *´艸`)

みゆきんさんへ

こんばんは!
一瞬どの写真のことか分からなかったけど、文字通り最後に載せてる写真ですね。
これ、わたしが撮ったんじゃなくてジャンルー・シーフの写真集に入っていた写真です。
うーん、やっぱりプロの世界的に有名な写真家の撮った写真には負けてしまうのか。
大したことないなんて云うようなことを書いたから、しっぺ返しでも食らったかな。
まぁ、貰ったコメントは、精進せよって云う叱咤激励ととっておくことにします。
猫は、それにしても被写体としてはかなり卑怯な感じがするなぁ。
何をどうあがいても可愛らしく写るし酷い絵になりようがないんだもの。

No title

そうだったのか
でも彗星さんのtouchに似てるわ
彗星さんの柔らかい被写体だとばかり思ってたの
プロだったか
彗星さんのモノクロも負けてないよ

みゆきんさんへ

こんばんは!
超有名な世界的な写真家とタメを張れると思うほど、思い上がってはいないけど、近づきたいとは思ってます。
モノクロはいいですよね。上手く行けば本当にスタイリッシュでかっこいい写真になるし、こういうファッション系の写真家はかっこいい写真にかけては超一流だから、得るところも多いと思ってます。
上手い写真というよりも自分が納得できる写真が撮りたいなぁ。

No title

こんにちは
先日、前の記事も読ませていただいたのですが、もうすでに何度か訪問させていただいてたのに気が付きました
そのうえ、以前にコメントしてもいたかもしれません。失念してすみませんでした
団地の写真がいいですね
なんてことない被写体なのにとてもいいです。下町育ちなので山に囲まれた今となってはとても懐かしいです

sukunahikonaさんへ

おはようございます。
コメント欄結構長い間閉じていて、再開してからそんなに時間たってないから十分把握してますけど、コメントいただいたのはこの前のが最初でしたよ。わたしのところのコメントって昔から本当に限られた人しか書いてこないです。
どんなブログをされてる方だろうって訪問しに行った時は、あぁこのブログを主催されてる方だったのかと、最近訪問してもらってることに気づいたりはしてました。主催されてる方のHNとか、実のところあまり注意して見たことがないから、なかなか結びつかないってことが多いです。

どうってことのないものを撮るのって結構好きです。これぞ美しいものだとばかりに用意されてるものとか、綺麗に撮れて当たり前って思い出すとどうも食指が動かなくなるというか。だから絶景で評判のところとかで、並ぶカメラの砲列の仲間入りなんてまるでやりたいとも思わないし。絶景的な美しさのようなものから比べるとまるで美しいもの扱いにされてないけど、自分の周囲にある日常の、何か美しい位相を見出せて切り取れれば面白いかなと思ってます。
でも団地って結構撮りにくかったですよ。似たような建物が並んでる印象が強すぎたり、ちょっと深入りすると完全にプライベートな空間に早変わりして、どうもやばそうな気分になってきたりするんだもの。
山に囲まれた場所もカメラ持って歩くのはいいですよね。木々が林立してるだけの世界とかも撮ってみたい。去年の夏の終わり頃から桃山の天皇陵とかに木が一杯はえてるところを撮ろうと思っていったけど、天皇陵の林の中へは柵が設けられて入れませんでした。

No title

1・2枚目の写真が好きです。
二枚目の大きなお口は、家の亀さんのアクビ様
撮影時の対象、機種が先ですが・・・それによってその時の思いが深く、写真を~撮影を楽しまれているところが、いいですね。

和さんへ

おはようございます!
枯れた花のは、壁の色とか結構良い感じに出てるでしょ。何かこういう事物の質感とかがその空間の空気感のようなものを作ってるんじゃないかと思って、最近はこういうものをよく探して歩いたりしてます。はがれたポスターとか、木の板が重なり合ってるところとか、探すと色々と面白い発見があったりするんだけど、でも今の街の作りはコンクリートのブロックが無表情に積み上げてあったりするだけっていうのも多いです。あと、もうちょっと色を使った壁とかあると面白いのに。京都は特に景観規制でカラフルなのは避けられてるようだから、そういう意味では京都はあまり面白くないかも。
亀さん、結構迫力のあるあくびをするんだ。屈託ない感じで可愛らしいでしょうね。この遊具、人が見てないところで本当にあくびをしてたかも、なんて考えると面白いです。人の気配がないところだったからちょっと現実離れした雰囲気もあったし。しかしそれにしても人がいない場所を我ながら上手く探してきてるなぁと、ちょっと感心したりして。意図的に人がいないのを狙ってるわけでもないんだけど。

機材は何でもいいって云う人もいるだろうしこだわりのある人もいるかもしれないというなかで、わたしはあまり拘るほうでもないけど、使ってる機材によって微妙に撮る写真の雰囲気が変わったりはすることがあるようです。みんなカメラであることには変わりないから、どれも似たようなものと云えば似たようなものなんだけど、使いやすくて、なぜか気に入った写真が撮れやすいカメラというのができてくるんですよね。ちょっと相棒めいた感じになるところが出てきたりして、カメラに協力してもらいながら写真撮ってます。

はじめまして

薄荷グリーンさん はじめまして

置手紙でお世話になっております、ぴーこと申します。
いつもステキな写真拝見させていただいています、京都の宝ヶ池なんて地名をみつけて、懐かしく思いました

もり、よろしければ、リンクを貼らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか

よろしく御願い致します

ぴーこさんへ

はじめまして、こんばんは!
いつも訪問していただいて有難うございます。
宝ヶ池、ご存知ですか。
結局名前出しただけで、写真ほとんど撮ってないんですけどね。国際会館も何だか用もないのに入るなとでも云われそうな雰囲気で近寄りがたいし。池の写真はちょっとかっこよく撮ってみたいとは思うので、また撮影に行ってみるかな。

リンクの件有難うございます。
もちろん貼ってもらってかまわないです。大歓迎です。
相互リンクの形にしておきますね。

これからもよろしくお願いします。

感激です

薄荷グリーンさん こんばんは!

ご返事いただきまして、ありがとうございます。
とっても感激しております。

学生時代京都ですごしたことがあるので、懐かしく思っておりました

今後も、素敵な写真を拝見させていただきますので、よろしくお願いいたします。

ぴーこさんへ

こんばんは!
こちらこそわざわざお返事有難うございます。
学生時代を京都で過ごされてたんですか。わたしは全部地元で済ませてるからそういう特別な記憶とかがあまりないんですよね。
全部今でも地続きの日常の範囲内で収まってます。
京都の写真と言っても最近はもう細部に深入りしたようなのばかり撮ってるから、あまり京都とか意味がなくなってます。
その分他の人が見過ごすようなイメージで捉えたものが多くなってるんじゃないかと自分では期待してるんですけど、さてどうなのかなぁ。
ともかく楽しんで撮ってますので、一緒に楽しんでもらえたら幸いです。
よろしくお願いしますね。
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