【洋画】 ジェイコブス・ラダー

ジェイコブス・ラダージェイコブス・ラダー
(1999/12/10)
ティム・ロビンスエリザベス・ペーニャ

商品詳細を見る


あの結末があるために、大どんでん返しがある映画という扱いになっています。自分はどの辺りで見破ったとか、あるいは最後まで気づかなかったとか。
確かにそういう映画でもあるんですが、わたしには何かそういう受け方をして済ませてしまうとちょっともったいないような映画という感じが強いです。

一応、最後のどんでん返しそのものにはふれないで書こうと思ってるので、おそらく意味不明の部分が出てくるだろうと。こういうタイプの映画は話題に上げるのが難しい…。

☆ ☆ ☆

ストーリーはとてもシンプル。ベトナム帰りのジェイコブ・シンガー(ティム・ロビンス)がなぜか悪夢、というか幻覚に取り付かれるようになる。その悪夢は風景のごく一部が異物感を持つような程度のものから、同棲してる同僚ジェジー(エリザベス・ペーニャ)が悪魔に犯されている光景を見てしまうようなことまで、様々な様相でジェイコブの目の前に現われます。
原因を探ろうと、オカルトの本を読んだりして悩んでる時にベトナム時代の戦友に呼び出されます。戦友から誰かに監視され追いかけられてるといった話を聞かされ、その話によれば同じ部隊に居た戦友たちも似たような状態にあるらしい。部隊で吸っていたマリファナなどに何か特別な薬が混ぜられていた可能性に気づき、やがてベトナムの部隊を使って新薬を試した国家的な実験計画の存在も浮かび上がってくる。
さらにこういう話を中心軸にして、ジェイコブの離婚した奥さんや事故死した息子ゲイブ(マコーレー・カルキン)の話などが絡んできます。

観れば分かるんですが、新薬の実験台の話も最後に明かされるベトナムでの戦闘の真実も、この映画のテーマとは直接的な関係がほとんどありません。ジェイコブの幻覚に対する「現実」的な理由付けみたいに出てくるだけで、真相の代用品として使われてる程度です。

この映画が優れているのは、ジェイコブを取り囲んでいる世界、この世界がどういうものだったのかは最後に分かるんですが、描くのが物凄く困難なその世界を視覚的に分かりやすく描いて見せたことにあります。直接的な幻覚のオブジェだけじゃなくて、地下鉄の駅や整体師の治療室や窓から光の射しこむ部屋の光景まで、この映画に観られる大半のカットにおいて。

直接的な幻覚だと、背中を痛めて動けない状態になったまま病院のX線室に運ばれていく途中で、病院が血と肉片に彩られた廃墟のような場所に変貌していくシーンと、そこに出てくる不気味な振動魔人。

ラスト近くの「光射す部屋」も困難なものの描写としては見事です。
導く者の化身、整体師ルイ(ダニー・ アイエロ)によってジェイコブが核心に導かれて以降、ベトナム時代の認識票を首から提げて、軍の秘密を知る者の話を聞きに行き、その後夜の道をタクシーで元妻の住居に帰ってから「光射す部屋」に行き着くまでの、あのジェイコブの周囲の世界がどんどんと閉じていく感じ。世界中を照らしていた光がまるでスポットライトにでも変化したように、ジェイコブの周囲に向けて狭まっていく感じで、不安感が画面から漂ってきます。
そして、元妻との生活があった場所で、自分に何が起こっていたのかをようやく認め、自分の運命に抵抗するのを止め、全てを受け入れた時、ジェイコブは「光射す部屋」に辿り着きます。その部屋は、ジェイコブの周囲の世界が完全に閉じて、同棲相手のジェジーも、軍の陰謀を一緒になって追っていた戦友も、元妻もどこかに消え去り、部屋だけが存在して外には何もないという感じがよく出てました。でも、不安感はもう画面からは伝わっては来ないんですよね。

☆ ☆ ☆

同棲してるジェジーのもとで高熱を出して倒れたジェイコブは、倒れている間に、離婚した妻と事故で失ってしまったはずの息子と一緒に生活している夢を見ます。死んだはずの息子と夢の中では交流したり、元妻とは「同僚のジェジーと同棲してる変な夢を見ていた」と、笑いながら話をしたりもします。
やがて熱も引いて、ジェイコブは大量の氷を浮かべたバスタブの中で目覚めることになります。再び、最愛の息子が存在しない無慈悲な世界に連れ戻されるわけです。
この時ジェイコブは泣くわけでも喚くわけでもなく、ただ見開いた目から涙を流すだけ。
わたしはこのシーン、その喪失感の大きさに圧倒されて、物凄く痛々しく見えました。そうなんだよなぁ、本当に絶望してしまうと、もう泣き声さえ出ないんだと。ただひたすらに涙を流すだけのシーンを撮ったエイドリアン・ラインは凄い。

こういうエピソードを初めとして、映画の中で語られる息子ゲイブのシーンはどれも観る側の感情を悲劇の方向に揺さぶるしかないんですが、ゲイブは最後には今までとは変わって、ジェイコブへの救いとして画面に登場します。そういう形で最後に姿を見せるのは本当に良かった。
ジェイコブの物語は正真正銘の悲劇なんだけど、あのシーンに出てくる息子ゲイブに、ジェイコブ・シンガーだけじゃなく、彼の悲劇に立ち会ってきた観客も一緒に浄化されたような気分になります。物語そのものは悲劇のままで終わってしまうのに、鑑賞後の感覚はそういうものを見た感じじゃなくて、意外と穏やかな気持ちになるというか、そういうところのある映画です。

☆ ☆ ☆

「ラダー」は劇中ではベトナムでジェイコブらの部隊に実験として使われた、新種の幻覚剤の名前として出てきますが、「ジェイコブス・ラダー」というのは聖書にある話だそうで、ちょっと調べてみたら、このタイトルだけで聖書を読んだ事がある人には十分ネタばれになるんじゃないかと思いました。そうでもないのかな。

1961年制作のロベール・アンリコの映画「ふくろうの河 (LA RIVIERE DU HIBOU)」が元ネタだと云われる事もあります。物語の仕組みというかどんでん返しのやり方がそっくりです。

Official Jacob's Ladder Movie Trailer



原題 Jacob's Ladder
監督 エイドリアン・ライン
公開 1990年


応援ポチッとして頂けると嬉しいです♪
にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 外国映画(洋画)へ

スポンサーサイト

コメント

真夜中の訪問者

(-_☆)わざわざコメントありがとうあるよ、しかもコアな記事へ 薄荷様のチョイスことごとく渋いですね、ティムは隣人はひそかに笑うとショーシャンクとショーンペンと出てたミなんとかの演技の印象がこれにも出てたんですね、監督はスタンドバイの 見直したくなりました。あてくしもちょくちょくお邪魔致します。お気軽にコメ不足してますので、米下さいまし、マイペースで頑張って下さい。米頂くとやる気も違ってきます。きもい文章すみません

メガ一休です さん、こんばんは。この前返信した時、やはりお名前勘違いしてましたね。申し訳なかったです。
仰る通りマイペースが一番。毎日更新は実際やってみるとちょっときつい。
わたしもコメントを貰えると励みになりますので、よろしくお願いします。
ところで穴の内側がらリタ・ヘイワースのポスターをどうやって貼りなおしたのか気になりませんでしたか。

No title

こんばんは。

この映画、訳分からん!と思いながら観ました。
ラストを観てやっと…です。

病院で運ばれて行くシーンはサイヒルの元ネタになっているとか。
ぶるぶる震える人、そういやサイヒル3に出ていましたね。

死の淵を彷徨っている時ってあんな感じなんでしょうか…
苦しいですね。
コロっと逝って花畑で楽しく過ごすか、
いきなり無になりたいです。

キノピピさんへ

こんばんは!

この映画、観てない人と話するのが無茶苦茶難しいですよね。
絶対にラストを明かすわけにはいかないんだけど、ラストを知ってなければ、映画の中身の話が全然伝わらない、物凄く変わった映画!
わたし、この記事書いたときにどう書けばいいのかかなり迷ってました。結果わけの分からない記事に(笑)

あの振動魔人(わたしはそう名づけました)は、仰るとおり「サイレントヒル」の元ネタです。
「サイレントヒル」も考えてみれば妙な成り行きで、映画をイメージソースにして作ったゲームなのに、それがまた映画になったんですよね。
さすがに振動魔人を出してしまうと、これと同じになってしまうのでそこは制御がかかってたようですけど。

この映画の振動魔人の不気味なイメージは物凄くユニークですよね。これを観るだけでもこの映画、価値があるかもしれません。

最後の時はどうなんでしょう。まぁ体験した人は誰も教えてくれない世界を描こうとしたこの映画の意欲は凄いとはいえると思いますけど。
この映画、最後に救いがあるのがいいですよね。

コメント有難うございました☆
非公開コメント