【洋画】 ストレンジャー・ザン・パラダイス

ミニシアター系のアートっぽい映画だと思って観ていたら、ラストの途方も無いすれ違いのコントに吃驚してしまった。
確かに、たとえば映画の中ほどで、湖を観に行こうという話になって出かけた後、真冬で凍ってしまった湖の柵の前に肩をすぼめながら並んで、雪でただ白くなってるだけの光景を「美しい!」だとかなんだとか云ってぎこちなく褒めてる、そんなどことなくとぼけたシーンは所々にあったけど、最後にここまで大ボケをかましてくる映画だとは予想もしてませんでした。
でもアート映画なのにふざけたシナリオだとかは少しも思わなかった。むしろこの馬鹿みたいなエンディングでこの映画が逆に好きになったくらいです。

☆ ☆ ☆

ハンガリー生まれでニューヨークに住んでるウィリー(ジョン・ルーリー)の元に、ブダペストからいとこのエヴァ(エスター・バリント)がやってきた。クリーブランドのおばさんのところへ行く予定だったがおばさんの体調が悪くなって10日ほどニューヨークに足止め、ウィリーの部屋で同居することになる。
最初は10日も預かることを嫌がっていたウィリーも一緒に生活するうちにぎこちないままでも親しみを感じていく。部屋にやってくるウィリーの友人エディー(リチャード・エドソン)とも馴染みになった。
10日後、エヴァはクリーブランドに出発したが、翌年博打で大金を掴んだウィリーとエディーはその金でニューヨークを飛び出そうと思い、思いついたのがエヴァに会うためにクリーブランドに行って見ること。そう決めるとさっそく車でクリーブランドに向かうことにした。

「ストレンジャー・ザン・パラダイス」というのは「天国よりも奇妙」というような意味だと思うんだけど、これがちょっと分からない。
奇妙な話どころか、映画は、どこに場所を変えても似たような事しかやってない若者3人の単調な風景を切り取ることに専心してます。
ウィリーらは映画の中で、ニューヨークからクリーブランド、そこでエヴァを加えてさらにフロリダへと車で移動していきます。でも行く先でやってることといえば博打ばかり。違う土地に行っても、ただ単純に背景が変わるくらいの変化しか無い。フロリダのシーンなんか、せっかくフロリダに来てるのに、大半のシーンで安っぽいモーテルの一室ばかりを画面に収めてます。映画ではフロリダで終了だったけど、この3人はこのさきどこへ行ったとしても、やはり安モーテルに泊まって博打に専心というパターンは全然変わらなかったでしょうね。

ひょっとしてフロリダのようなパラダイスに来ても、3人の状況、行動が全然変化しないというのが「奇妙」なんだろうかとさえ思ってしまいます。それと「天国」というのが「奇妙」さを比較する基準になるんだということも、ちょっと不思議。
ミュージカルのスタンダード曲に「ストレンジャー・イン・パラダイス」というのがあって、単純にそこから持ってきただけなのかなぁ。

☆ ☆ ☆

主役の3人はほとんどしろうとという感じ。一番演技がまともに見えるジョン・ルーリーも当時ニューヨークの音楽シーンで「ザ・ラウンジ・リザーズ」というフェイク・ジャズのバンドをやっていたミュージシャンで、この映画でも弦楽を使ったスコアを書いてる。正確なことは知らないけど、俳優は余技の部類だったんじゃないかと思います。
でも、この3人の素人臭いぎこちなさが、映画のテーマみたいなものによく合ってるんですよね。この映画、微妙なすれ違い、さりげない噛み合わなさというような感覚が多彩に盛り込まれてます。そういう映画の手触りにすごく上手く嵌ってる。
ウィリーがテーブルに陣取ってるエヴァの前に座って、会話の接ぎ穂にジョークを云おうとするシーンがあるんですが、オチを忘れたまま話し始めるものだから、結局なにを喋ってるのか直ぐに分からなくなって、言葉が途切れ途切れになってフェードアウトしていくあの感じ。ああいう感じにはぎこちない喋り方が結構違和感無くフィットしてました。

☆ ☆ ☆

「面白い」という領域と「退屈」という領域の境界線上に細い通路を作って、観客にその通路を渡らせるような作り方の映画。思わず足を踏み外してしまった方向がその時の評価になるみたいな。
映画自体は面白がらせようという意図があったとしても極力強調しないようにしてる感じだし、一方だらだらと続くメリハリの無い会話などは、メリハリの無さやぎこちなさを計算しているように見えます。使用フィルムがヴェンダースから貰った余りのフィルムで限りがあるために、リハーサルをしっかりとやってから撮影したというようなことを聞いたことがあるので、全体のメリハリの無さはかなり意図的だったんだろうと思います。

ワンシーン・ワンカットで押し通してる撮影とカットごとに黒く何も写らない繋ぎの部分を挿入してるのは面白い編集だと思いました。物語ることを最優先にカットをスムーズに繋いで、そういう編集をしていることを物語の背後に隠してしまうほうが物語の流れは良くなるはずなので、いちいち黒画面の繋ぎを挿入するという方法は、物語を語ること自体はあまり重要視してないような印象を作ります。
物語じゃなくて登場人物たちの生活の断片を見せられるような感じ、他人の生活を何かの拍子にふと垣間見てしまった気分とでもいうか、物語というよりもそういう感覚のほうが強調されていきます。

この映画はモノクロなんですが、普通モノクロ映画の場合、影の諧調と云うか、黒のほうの表現を豊かにする方向に画面作りがされると思うんだけど、この映画は光のほうにポイントを置いた撮影をしてます。モノクロで光の表情をフィルムに収めようとしてるのは観ていてすごく新鮮でした。

☆ ☆ ☆

ファッションも、今見ても結構かっこいいですよ。ウィリーとエディはいつも帽子を被ってるんですが、こういう帽子、今流行ってるし。
エヴァが10日間の居候の終わりにウィリーからプレゼントされたドレスは、ウィリーの目を離れたところでエヴァが捨ててしまうくらいダサい扱いでした。このドレスは今見てもダサい。映画内のダサさの感覚も、今でも十分通用してます。

ストレンジャー・ザン・パラダイスストレンジャー・ザン・パラダイス
(2006/11/22)
ジョン・ルーリーエスター・バリント

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ストレンジャー・ザン・パラダイス トレーラー


原題 Stranger Than Paradise
監督 ジム・ジャームッシュ
公開 1984年

☆ ☆ ☆

話題に出したので「Stranger In Paradise」という僅かに違うタイトルの曲も。
サラ・ブライトマンが歌ったもので、アルバム「ハレム」に収録されてます。
この曲はブロードウェイ・ミュージカル「キスメット」の中の「風の翼に乗って飛んでゆけ」というのが元なんですが、さらに大元はボロディンの「韃靼人の踊り」というのが原曲になってます。

Stranger In Paradise - Sarah Brightman


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コメント

アート系というと"観る者を選ぶ映画"という印象で、ずっと食わず嫌いでした。
ですがレビューを読むと面白そうですね。
本当に予告編を観ても映像が独特で、モノクロなのに明るさを感じます。
今度観てみようと思いました^^

Kさんへ

Kさん、こんばんは。
面白がらせようっていう映画じゃないですが、妙な映画を観たっていう感じは味わえるかもしれないです。
機会があれば、ぜひ観てくださいね。
あの予告編はそうとう画質が落ちて白の諧調が飛んでしまってるだけで、実際は白ももっと諧調がついた画面で観られますよ。
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