【洋画】 キャビン・フィーバー

一応劇場公開されたみたいだし、DVDだって売られてるから大丈夫だったんだろうと思うけど、どこからも文句が出なかったのがちょっと意外な内容の映画でした。とりあえず一言で云うなら汚い映画。電車のつり革を持つのさえ躊躇うような潔癖症の人が観たら卒倒するかもしれません。ちなみにR-15指定の映画だったらしいです。

監督のイーライ・ロスはデヴィッド・リンチの元でリンチのショート・フィルムのプロデュースをしてたとか。この映画の音楽をリンチ映画の音楽をやってるアンジェロ・パダラメンティが担当していて、それがちょっと意外だったんだけど、おそらくリンチ繋がりだったんでしょう。
リンチの影が見えるからといってリンチ的な映画なのかというと、この映画、実は典型的なB級ホラームービーです。
映画はリンチよりもむしろサム・ライミの影響下にあるような感じです。
舞台となるキャビンの様子や外の風景など「死霊のはらわた」に出てくる小屋と雰囲気が酷使してました。

☆ ☆ ☆

ポール(ライダー・ストロング)とカレン(ジョーダン・ラッド)、ジェフ(ジョーイ・カーン)とマーシー(セリナ・ヴィンセント)の2組のカップルとバート(ジェームズ・デベロ)を合わせて5人の遊び仲間が、夏休みの1週間を森の中の一軒家のキャビンで過ごそうと計画した。
5人は車でキャビンに到着、その夜はキャンプファイヤーを囲んでマリファナをやったり、羽目を外して遊んだ。
その後部屋の中で寛いでいると、玄関を叩く音がする。誰だろうと開けてみれば玄関前には血だらけの男が立っていた。男は病院に連絡してくれというがバートが戸を閉めてしまう。締め出された男は5人の乗ってきた車に立てこもろうとするものの、たいまつを持ったポールに追い立てられて、争ううちに体に火をつけられたまま逃走してしまった。

男の皮膚は爛れ溶けたようになっていて、車に立てこもった時に大量に吐血した様子から見ると何かの感染症にかかってるようだった。
火がついたまま逃走した男の安否が気になったり、これからどうするか決めかねているうちに、カレンの様子がおかしくなり、程なく男と同じ感染症を発病してしまう。他の4人はカレンから感染するのを恐れ、カレンを納屋に隔離することにした。
他に感染したものがいないかお互いの体を調べあうが、発病のしるしが無いからといって感染してないとは云いきれず、お互いが疑心暗鬼になっていく。
感染症男の吐血で血みどろになった車を洗い、男と争って壊れた部分を修理して動く状態になったところでカレンを運び出そうとした時、今度は車を準備してたバートが発病する。自分が発病したことを知られたくないので、バートは一人で車を発進させ、助けを求めるために森の入り口にあった雑貨屋に向かった。
ところが雑貨屋では助けを求めるバートの血で汚れた姿を見て、バートやキャビンにいるほかの4人を助けるどころか、病気を伝染させる余所者を始末してしまおうという話に纏まっていくことになった。

☆ ☆ ☆

遊ぶことしか頭に無いバカ学生カップル2組とお調子者1人という、ホラー映画では典型的なキャラクター・タイプを揃えてるために、区別がつきやすかったということもあるけど、意外なほど人の捌きかたは上手かったという印象があります。人の出入りも観ていてほとんど混乱しなかった。
ただ、バートみたいなキャラクターはホラー映画では必ず出てくるタイプなんだけど、わたしはこういうタイプが出てくるといらいらするほうで、この映画も例外じゃなかったです。

いつもふざけていてそのふざけ具合が場の空気なんかちっとも読んでないというか、調子に乗りすぎというか、そんな行動にばかり走る人物。

たとえばこわごわ歩いてる主人公の背後に、画面のフレームの外からいきなり大音響と共に飛び出してきて吃驚させ、心臓が縮む思いをしてるに違いない主人公に、へらへら笑いながら「吃驚した?」とかほざくようなキャラクター。
バートはその典型だったんだけど、多少は控えめにしてあったり、最後は自分が感染してしまうので、ふざけてるどころじゃ無くなったりして、この映画の場合は、いらいら度はあまり高くは無かったです。
でも、わたしにはホラー映画で必ずこういう人物を配置する理由がよく分かりません。緩和させる役目なのかな?むしろこういうキャラクターはせっかく高まった物語の緊張感をぶつ切りにするだけだと思うんだけどなぁ。

スプラッターものとしてみれば、特殊メイクはKNBエフェクツが担当したらしいんだけど、2,3のメイクを除いて全体的にはあまり予算をかけてないのが丸分かりでした。感染症で皮膚が爛れたようになる表現も赤黒くでこぼこになってる程度を超えるようなものでもなかったし。
ただ、そういう造形の甘さを補うためなのか、感染した後の吐血の表現は強烈で、まるで放水してるみたいに派手に飛び散ります。そのせいでたとえば男が立てこもった車は、車全体が赤く染まるくらいに血だらけに。
感染症の恐怖が中心とすれば、病原菌が周囲に撒き散らされてるのが見て分かるようなこういう表現のほうが相応しく、低予算で特殊メイクの粗を隠すための手段だったとしたら、周囲に撒き散らされる血しぶきというのは、結果的には大成功だったと思います。

この放水するように撒き散らされる、病原菌を一杯含んだ吐血といい、この映画には人体破壊みたいな直接的なグロというよりはむしろ生理的に嫌悪感をおこさせるような表現が目立ってました。
最初に発病するカレンの感染した原因は、汚染された水を飲んだことだったんですが、この水が何故汚染されたかというと、最初に火がついて逃げた男が貯水槽に飛び込んでそのまま死んでしまったからでした。カメラは焼け爛れた死体が浮かんでる貯水槽からパイプを通ってカレンのコップに水が入るまでの経緯を丁寧に描写したりします。

☆ ☆ ☆

何の病気なのか描写する気は全く無かったようなので、感染症にかかった人がどういう経過を辿るかを見せる映画とは全然違うし、村人は余所者を殺そうとはするけど、だからと云って感染が広がっていくのを食い止めようと努力するのを見せる映画でもない。

では何かと云えば、要するに、最初は感染してる男から、その後は感染してしまった仲間から、「うつるから寄って来るな!」とばかりにひたすら逃げることを描写した、云うならば一種の「穢れ」に似た感覚を表現しようとした映画じゃないかと。
わたしはアメリカ人に穢れなんか分からないだろうと前に書いたけど、イーライ・ロス監督はインタビューで日本のホラーをべた褒めしてるんですよね。だからロス監督は日本のホラー映画によく出てくるような、こういう感覚に馴染みがあるのかもしれません。

映画でそういう感覚を代表してたのがジェフで、カレンが発病してからは必ず口元にハンカチを当て、カレンが触ったかもしれない食器から絶対に食べようとはしません。洗ったから大丈夫と他の仲間に云われても絶対に納得しない感覚はまさにその食器が穢れてると思ってるからでしょう。もちろんカレン本人には絶対に近づかない。
ジェフはそういう態度を恋人のマーシーから薄情者となじられます。
社会的にはマーシーが正解でジェフの態度は褒められたものではないんだけど、こういう感情は誰にでもあるし、また当然の反応だと思う。

結局マーシーはカレンの看護をした結果感染してしまい、あらゆる穢れから遠ざかったジェフだけが感染からは免れる結果となります。まぁジェフにはその後とんでもない運命が待ってるのは別にして、ジェフのような感覚に多少の正当性を与えた監督は感覚に正直であろうとしたってことでしょうね。

☆ ☆ ☆

映画の中盤から後半にかけての展開は、破綻してるとしか云い様の無いものでした。血だらけの車を前にしても全然注意を払わずに夜にやるパーティの話に興じる警官とか、信じられないキャラクターが一杯出てきます。主人公のポールの性格もある時を境に激変してしまうし、後半の脚本に一体何があったんだろうと思わせるような出来になってました。
一番訳が分からなかったのが、雑貨屋の店先のベンチで座ってるパンケーキ少年。助けを求めにきたバートを見るや、「パンケーキ!パンケーキ!」と叫んで、カンフーのとび蹴りなんかをしながら近づいてきて、バートの掌に噛み付きます。
これ何のための行動なのか見終わった後でも本気でさっぱり分かりません。

☆ ☆ ☆

こういう映画ではあまり見ないほど意外に美形の女優さんが出演してます。ところがカレンは早々に感染して、顔の下半分が溶けて頭蓋骨丸出しのような様相になるし、マーシーは中頃に発病、せっかくの美形女優が中ほど過ぎで全員退場してしまいます。
あとは男と支離滅裂な行動をする村人ばかりが残って、華のないことおびただしい映画に。
もう一組カップルを登場させて1人くらいは最後まで残って、美形の俳優で画面を華やかにして欲しかったなぁと、そんなことを思いました。

この映画ちょっと調べてみれば、編集は「ブルース・プラザーズ」のジョージ・フォルシーが手がけてるんですね。音楽のパダラメンティといい、特殊メイクのKNBエフェクツのチームといい、スタップは妙に豪華です。イーライ・ロス監督、人脈は凄そうです。

☆ ☆ ☆

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ライダー・ストロングジョーダン・ラッド

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Cabin Fever - Trailer


パンケーキ少年のシーン

問題のシーン、映画ではこの謎の行動について、結局最後まで一切触れてくれません。

原題 Cabin Fever
監督 イーライ・ロス
公開 2002年


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コメント

すっごい面白い映画のレビューでした^^

参考になります!

また勉強しにまいります!

もじゃもじゃのっぽさんへ

もじゃもじゃのっぽさん、こんばんは。

楽しんでもらえたら、書いた甲斐があります(⌒-⌒)
勉強なんておっしゃらずに、これからも気軽に遊びに来てくださいね。

コメント有難う御座いました。

未見ですが、タイトルからして、「死霊のはらわた」のような設定ですね(笑)。よく、いろんなブロガーさんのレビューで登場する作品のように思いますが、ここまで詳細なのは初めてです。もじゃもじゃのっぽさん書かれている通りとっても面白かったです。

今回の質問、主旨が分からず当惑された方もいらっしゃると思いますが、あまり気にされてない方が多いのかな?と最近思い始め、同じような考え方をされている方が実際にいらっしゃるのか知りたかったのですが、薄荷グリーンも同じお考えのようでひとまず安心しました。こちらからの協力はいといません。今後ともよろしくお願いします。

紹介した本の著者、町山氏ですが、映画秘宝でもよく記事を書かれています。多分雑誌立ち上げの頃からだと思います。私のブログでも同氏の著書を2冊紹介しています(ブログ右側中央)が、抽象的な感想だけではない映画の見方なので、非常に面白いです。今回の本は直接映画とは関係のないものもありますが、いろいろ役に立つ事もあると思います。一度書店で立ち読みでもしてみてください。応援ポチポチです。

Whitedogさんへ

Whitedogさん、こんにちは。
コメント有難う御座います。
この映画云ってみれば「穢れた死霊のはらわた」ってところでしょうか。
面白いと云ってもらえると、記事にして良かったと思います。

Whitedogさんに協力してもらえると、とても心強いです。こちらこそ今後ともよろしくお願いします。

あの本の著者の方はやはり「映画秘宝」に書いておられる方だったんですね。「映画秘宝」のムック本っていうんでしょうか、そういうのを以前に読んだことあります。
今度本屋に行った時に実物を手にとって見ようと思ってます。

応援、有難う御座いました。

こんばんは!
いやあ”汚い映画”という言葉で吹いてしまい、もう一気に読ませて頂きました(笑)。
いつか観ようと思っていた作品ですが、もう観た気分に浸っています。特殊メイクが低予算ということですが、その後のホステルシリーズを観ても、あまりメイクにリアルさを追求していないように思えるのですが、イーライ監督としてはあまり拘っていないのでしょうかね。ホステルシリーズがちょっと残念だったので、逆にこのキャビン・フィーバーの方が楽しめるんじゃないかと思えてきました。後半の展開も気になりますしね。
ところで、パンケーキ少年ですが、イーライ監督によると、南部ロケ地の本物の住人だそうですよ。学校にも行かず1日中空手をやってるようで親は将来映画スターにさせたいそうです。なのでまんま姿を撮っただけのようです・・・ってなんで観もしない私がこんなこと書いてるんだ(笑;)。ちゃんと観なきゃ!!

しょぼい映画ネタですが、なんとか更新することができました~。ご心配頂きありがとうございましたm(_ _)m

ガツンと応援いきま~す♪凸

umetramanさんへ

umetramanさん、こんばんは。
いつもコメント有難う御座います。
umetramanさんにも楽しんでもらえたみたいで良かったです。
本当に「汚い」映画だったんですよ。
特殊メイクの出来も甘いところがあったりしたんですが、感染症の皮膚メイクが出てくる場面自体も意外と少なかったんですよね。だから予算あまり無かったんだろうなと思ってたんですが、umetramanさんのおっしゃるとおり、ロス監督、特殊メイクのリアルさにはあまり拘っていないかもしれませんね。もとからそういうことに予算を使わない人なのかな。

パンケーキ少年はあのままの形で本当に実在してたんですか。
でもそれを知っても映画の中での役割はさっぱり分からないです。監督がなぜあの少年に目をつけて映画のこのシーンに出そうとしたのかはやはり謎なんですよね。
あの少年、映画の中で本当に浮いてました。

umetramanさんのブログ、更新されたので安心しました。これからもよろしくお願いしますね。

応援有難う御座います。
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